ベクターとラスター、どちらも使える新ツール「Adobe Fresco」先行ハンズオン:Photoshopの立場が危ういかも

GIZMODO / 2019年8月12日 22時1分

190812_adobe_fresco_0-1 Photo: ギズモード・ジャパン

次のツールのイノベーションは、PCではなくタブレットで。

iPadで使える描画ツールといえば、プロのあいだでは「Procreate」や「CLIP STUDIO」がよく使われています。2019年後半にリリースされる予定のAdobe Fresco(アドビ フレスコ)は、そういったプロ向けスケッチアプリに対するAdobeの答え。ついに「プロが使える」スケッチアプリをAdobeが作りました。

ほかのスケッチアプリと違うところは、Adobeの2大デスクトップアプリである、PhotoshopとIllustratorの両方の特性を持ち合わせているという点。つまり、ラスター(Photoshop)と、ベクター(Illustrator)が同時に扱えるのです。

190812_adobe_fresco_3 Image: ギズモード・ジャパン Adobe Frescoで描画 190812_adobe_fresco_4 Image: ギズモード・ジャパン ラスターは線がピクセルが表現される/ベクターは線が線で表現される

ベクター(ベクトル)とラスター(ビットマップ)の違いは、ピクセルの情報で記録されるか、線の情報で記録されるかということ。Adobe Frescoではこれらが同時に扱えます。ProcreateやCLIP STUDIOでも採用されているラスター情報は、繊細な筆のタッチを再現するのが得意ですが、ベクター情報は拡大しても劣化しない利点があります。

Adobe Frescoで描いた作品

190812_adobe_fresco_hands_on_1 Image: 福田愛子 イラストレーター Adobe Creative Residency 福田愛子さんの作品

Adobe Frescoで描いた作品

190812_adobe_fresco_hands_on_2 Image: Allison McGrath

Adobe Frescoで描いた作品

190812_adobe_fresco_hands_on_3 Image: Ana Mesas

Adobe Frescoで描いた作品

190812_adobe_fresco_hands_on_4 Image: Diachi Ito

Adobe Frescoで描いた作品

190812_adobe_fresco_hands_on_7 Image: Jinjin Sun

Adobe Frescoで描いた作品

190812_adobe_fresco_hands_on_6 Image: Jessica Wong

Adobe Frescoで描いた作品

Cacti-VanessaGutierrez Image: Vanessa Gutierrez

Adobe Frescoで描いた作品

Astronaut(1) Image: Olivia Bromell

今回はリリースに先駆けて触ってきたのですが、プロのイラストレーターさんでも完成の近いところまで作りこめるのでは?という印象です。PhotoshopのブラシがAdobe Frescoでそのまま使えるので、デスクトップ版のPhotoshopと液タブを使って描いている人なら、丸っとコレに変えてもあまり支障はないはず。Photoshopの立場が危ういかもね。あとは今使っているツールから離れるのを恐れず、使うか使わないか、そういうレベルまで落ちてきたような気がします。

とはいえ、僕が描いていた想像とは違う部分もあったので、それを含めて感想を綴りたいと思います。今回、先行ハンズオンする機会を得ましたが、リリース時期については、先日のプレスリリースに書いてあった「本年後半」からアップデートはなし。無料でも使えますが、一部制限があるようです。まずはiPad+Apple Pencil向けにリリースされ、WindowsやAndroid向けにも展開されます。今回はiPadで試しました。

おもいのほかブラッシーな出来

190812_adobe_fresco_2 Image: ギズモード・ジャパン

こちらがメインの作業ウィンドウ。自分でも軽くスケッチをしてみましたが、左のツールバーがPhotoshopやIllustratorに似たUIなので、Adobeソフトに慣れているなら初見で軽く操作できる印象。下がAdobe Frescoのツール一覧です。

190812_adobe_fresco_1-3 Image: ギズモード・ジャパン

通常、描画ツールといえば、ほとんどはラスターで描き込んでいくものが多く、ProcreateやCLIP STUDIOもその例。しかしAdobe Frescoでは「ベクターブラシ」というツールが用意されており、これがいわばベクター対応の所以。あらかじめプリセットのブラシが用意されていて、無劣化の線を描画できます。

190812_adobe_fresco_9 Image: ギズモード・ジャパン

ただ、逆に言えば、ベクターが扱えるのはこの「ベクターブラシ」ツールのみ。四角や丸といった図形や、文字データなどは扱えません。

190812_adobe_fresco_5 Image: ギズモード・ジャパン Illustratorの画面。Illustratorでは図形やフォントも含めてベクターで表現できる

ベクター中心のツールであるIllustratorを使っている僕としては、図形やフォントを組んだグラフィカルな表現ができるツールが欲しいと思っていました。なので、ベクター部分が思っていた以上にブラシ中心のツールという印象。ベクター対応だからといってIllustratorの代替になるかといえば現時点ではそうではありません。

残念ながらベジェ曲線も使えません。Adobeによると、まずはシンプルで使いやすいプロダクトとして提供するため、リリースの段階では実装されないそう。

レンブラントやゴッホも喜ぶ「ライブブラシ」

190812_adobe_fresco_7 Image: ギズモード・ジャパン 190812_adobe_fresco_8 Image: ギズモード・ジャパン

Adobe Frescoのもう一つの特徴は、ブラシの描き味だけでなく、キャンバス側、つまり紙に描いたときの質感にもこだわっていること。本物の紙の上で筆を運んだとき、水彩であれば絵の具が紙にジワっと染み込み、油絵であればインクが重なったところは立体感が生まれますが、Adobe Frescoではそういった表現も忠実に再現しているのです。

190812_adobe_fresco_11 Image: Adobe インクが混ざり合うところも再現される 190812_adobe_fresco_5 Image: ギズモード・ジャパン 上が油絵ライブブラシ、下が水彩画ライブブラシで描画

このブラシを使うには、ツールバーの上から2つ目にある「ライブブラシ」を使います。デフォルトでは油絵と水彩画のライブブラシが入っており、レンブラントやゴッホのような、絵の具を厚塗りして重厚感を持たせる表現もディスプレイのなかで行なえるわけです。ブラシはライブブラシや他のブラシ問わず、オプションで追加することもできます。

ライブブラシの表現には、Adobeの人工知能「Adobe Sensei」が使われており、アプトプットされる質感はプリセットではなく、自分の筆運びに合わせてその度に計算されています。

ハードウェアの荒波に乗ろうとしてきたAdobe

P1071400 Photo: ギズモード・ジャパン

Adobeは創業以来、進化を続けるデジタルデバイスに対して、常にチャンスがないか模索してきたと言います。Adobeのプライドとしては当然のことでしょう。PCでのデスクトップパブリッシングから始まり、今はモバイルでのタッチ&ペン描画環境に移りつつあります。そこでAdobeが出した答えがこのFrescoというわけ。

実は、2014年にAdobeはモバイルアプリの「Photoshop Sketch」や「Illustrator Draw」といったスケッチアプリをリリースしています。しかしこれらのアプリは、Adobe自身がプロの方に使ってもらうには足りなかったと認識しているようで、つまり今までのスケッチアプリとAdobe Frescoとの違いは「プロが使える」というのが大きなテーマになっていること。事実、世界のクリエイターに開発段階からフィードバックを受けて作られたそうです。

ベクターとラスターが同時に扱えるという謳い文句で登場したAdobe Frescoですが、実際に使ってみると、キャッチーな謳い文句とは裏腹にプロに誠実に作られたスケッチアプリという印象でした。もはやAdobeの最先端のスケッチアプリはデスクトップではなく、タブレットで出しまう点には時代を感じますが、30年前は自分の手で書くのがあたり前だったわけですし、そこに還っていくのは自然な流れなのかなと感じました。

2019年8月15日 10:40追記:初出時「価格は無料の予定です」と掲載しておりましたが、Adobeからの追加情報で、Adobe Frescoは完全無料ではないことがわかりました。無料で使える部分もあるようですが、一部に制限があるようです。

Source: Adobe

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