大気汚染がうつ病と双極性障害のリスクを高めるかもしれない

GIZMODO / 2019年9月2日 8時10分

190826dirtyair Image: Drew Angerer / ゲッティイメージズ ニューヨークの汚れた空気

呼吸をするたびに体内に吸い込まれていくのは酸素だけではありません。

粒子状物質、二酸化硫黄とオゾンはどれも心臓と肺を傷つける汚染物質で、たいていはそれらも体内に侵入してきます。

ある最新の研究は、汚染物質は心臓と呼吸器系以外にもダメージをもたらしているかもしれないと示唆しています。ひどい大気汚染は人間の脳に悪影響を及ぼしているかもしれず、うつ病、双極性障害あるいは統合失調症のリスクを高める原因となり得えます。

PLOS Biologyに発表された論文は、米国とデンマーク、双方の集団に目を向けました。著者らはどちらのグループにおいても、ひどい大気汚染は双極性障害の疾患率がおよそ29%増加したことを発見。しかし、うつ病と統合失調症の割合は国ごとに異なっており、異なるデータセットのせいだと彼らは考えています。

デンマークでは大気環境と精神衛生の間にぞっとするような相関関係が見られたものの、アメリカのデータほど強烈ではありませんでした。相関関係がもっとも強かった人格障害においては、大気がひどく汚染された地域に住んでいる人は、空気のきれいな地域に住んでいる人と比べて、有病率が162%も高かったのです。統合失調症においては空気のきれいな地域に住んでいる人と比べて、国内でも大気の汚染がひどい地域に住んでいる人たちは有病率が148%増加。うつ病の増加率がもっとも低かったものの、それでも50%と劇的な増加率でした。

主著者でシカゴ大学の医学と遺伝学の教授であるAndrey Rzhetsky氏は「もっとも重要な点は、環境が問題だということ」と語ってくれました。「そして精神疾患に関係しているということ」とも。

脳はあらゆる経路から汚染物質にさらされる

さらなる分析が求められますが、脳はあらゆる経路から汚染物質にさらされると著者らは考えています。鼻からまっすぐ脳に届く直接的な吸入か、それとも汚染物質が肺に入った際に間接的にさらされるのか。どちらにせよ、全身性炎症をもたらすかもしれないと書いています。決して良いことではありません。

「汚染物質はいくつかの経路から脳に侵入する」とRzhetsky氏。「ひとたび脳に入ったら、炎症のような異常な作用を引き起こす」と語っています。

大気汚染がこういった疾患を引き起こすという仮説を掘り下げるために、科学者らのチームは実際に人間の脳や被験者を研究したわけではありません。じっくりと調べられたら理想的ですが、倫理的かつ技術的な理由により難しいですからね。その代わり、同チームは2つのデータセットに注目することに。米国のセットは2003年から2013年にかけての1億5000万人以上の診療報酬明細書で構成されていたもの。これには各個人の健康状態の断片が含まれていますが、個人の健康データは環境保護庁(EPA)の同時期の全国的な環境データ(大気環境と自動車交通のレベルを含む)と結びつけられました。

一方デンマーク分は1979年から2003年にかけて生まれた140万人以上の各個人の健康データで、大気汚染への曝露も含まれていました。とはいえ、そのデータは10歳までの曝露しか記録していなかったのです。つまり、幼少期に汚染物質にさらされるだけで、成人として精神医学的な影響を受けるということになります。

今後も環境と精神疾患の関係に注目しなければならない

世界で温暖化が進めば、オゾンとスモッグの形成に完璧な環境ができ、大気汚染は悪くなるばかりです。そして、汚染源の近くに住む傾向にある有色人種かつ低所得世帯のコミュニティ(少なくともアメリカでは)はすでに医療へのアクセス悪化と過度の健康問題に直面しています。

Rzhetsky氏は、この研究結果によって科学者らが精神疾患の環境的な要因にもっと関心を集中してくれるようになればと願っています。彼いわく、これまで主な焦点となっていたのは遺伝的な性質であって、要因にはなっても予防はできない。その代わり、私たちが修復できるものを調べることで、科学を通じてこういった疾患を抱えている人たちを治療するよりよい方法をみつけられるかもしれません。

大気汚染削減にさらなる理由なんて要りません。汚染された空気で息をすることの悪影響は肺だけに留まらないのですから、この問題にもっと真剣に取り組む必要があります。

Source: PLOS Biology, University of Washington,

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング