ばいばいアップル税。史上最大の金づる『フォートナイト』のエピックバトルが今はじまる

GIZMODO / 2020年8月17日 13時30分

20200815fortnite-spending モバイル版の世界全体の売上高の推移。めちゃ儲かってる(単位は100万ドル=1億円強) SensorTower

SONYが267億円の戦略出資をした翌月、384億円の山がゴゴゴ…。

モバイル版リリースからわずか2年で10億ドル(約1066億円)を売り上げた『フォートナイト』(登録利用者3億5000万人)が、直接決済の規約違反をやらかして各モバイルアプリストアから削除され、開発元のEpic Gamesが待ってましたとばかりにストア運営会社のAppleとGoogleを独禁法違反で訴える大胆な行動に出て、伝説のApple CM『1984』のIBMをりんごに置き換えたパロディをじゃんじゃん流して胸熱と胸糞の賛否を呼んでいます。

「規約違反するほうが悪い」という一般の反応とは裏腹に反トラスト法をよく知る法曹界からは「Epicが仕掛けたトロイの木馬(術中)にまんまとはまったなあ」、「AppleとGoogleもしかしてやばいかも」という声も多い今回の乱。ここに至るまでの流れを少し整理してみましょう。

384億円をAppleに払った一番の高額上納者

まずEpic GamesがAppleに収めている手数料ですが、フォートナイトだけで3.6億ドル(約384億円)です。少し前の予想額なので今はもっとかもしれません。

無料アプリですが、購入後のアプリ内課金もApple App Storeの決済を通さなきゃならないので、その手数料だけでこれだけの金額になっちゃうんですね。もうたいがいにしてくれよと思ったのか、Epic Gamesは今回こんな風に直接決済(アプリ内課金ではなくクレカやPayPalで普通に払える)のボタンを並べて表示。Apple通さないとこんなに安くなる!ということを目にみえるかたちで示し、「決済はApple通さないとメッ!規約違反!」とお叱りを受けてゲームごとストアから削除されてしまったというわけです。

20200814fortnitepayment_yamadayousu 上)規約違反の直接決済、下)Apple税込みプライス Screenshot: ヤマダユウス型

「そうだそうだ!規約違反するほうが悪い!」と言ってる人もこうしてボタンが2個並んでると指がぷるぷると上のボタンに向かって、もう片方の手で「おいこら…そっちはあかんやつや!規約違反!」と抑えないとだめなんじゃ…。意地悪な踏み絵ですよね。でもまあ、こういうことでもないと1回1回のアプリ課金でこれだけのお金がAppleに流れているのだということはわからないので、このスクリーンショットを見れただけでも謀反の成果はあったかも。

コロナで落ち目のAirbnbとClassPassにはいきなり手数料30%警告

「30%も払えない」とApple税を回避した大手企業はSpotify、Netflixが先ですが、新型コロナウイルスのロックダウンで対面ビジネスが難しくなってバーチャルに生き残りを賭ける企業の肩にもApple税は重くのしかかっています…。

宿泊施設のシェアリングサービス「Airbnb」や、複数のジムのフィットネスクラスが月額で受けられる「ClassPass」もそんな渦中にある企業。コロナで困窮するホストやインストラクターのために手数料をギリギリ切り詰めて(ClassPassは100%講師に支払われるかたちにして)オンラインでのフィットネスクラスや体験をスタート。ところがいきなりAppleから「対面じゃないバーチャルのサービスなので規約通り売上の30%を払ってください」と言われて悶絶って話がこないだNY Timesに載ってました。AirbnbはまだAppleと交渉中、ClassPassはオンラインクラス機能そのものをiPhoneアプリから消してしまったみたい。そりゃそうだ…もともと中取り0%だったのにAppleに払ってたら30%のマイナスだもんね…。

うちも家族が公民館の剣道クラスができなくなってZoomで細々とやってますけど、30%取られたらなんにも残んない! まじキツイ! Apple汗水1滴も垂らしてないのに!ってなりますよ。やっぱり2兆ドル(約213兆円)企業のAppleには対面ビジネスできない企業や個人、スポーツ&イベント&音楽業界人が今どれだけの思いをして1日1日しのいでいるのかまったくわかってないんだな…と怒りを通り越して悲しくさえなりました。

それにしてもなんで急にこんな強硬姿勢になったんだろう…といぶかしく思ってたら、10月スタートのApple純正サービスバンドル購読プラン「Apple Oneにフィットネスアプリもバンドルされるって新情報が…。このタイミングでそれするかな。まるで競合はApple税で沈めて、自社アプリはバンドルでもち上げてるみたいって思っちゃうじゃないですかね。

コロナが追い風のAmazonには手数料半額×直接決済OKのダブルスタンダード

出店ブランドの完コピを自社ブランドでつくって潰すAmazonを彷彿とさせる動きですが、なんか、Apple Oneは「なんでAmazonプライムの真似っこしないの?」という株主の突き上げを食らってスタートするらしい…。

そういえばこないだAmazonプライムの動画配信については手数料を半額にしてるって話がありましたよね(アメリカではiPhoneやApple TVのAmazon Prime Videoアプリ内で映画が買える)。

先月29日にFacebook、Amazon、GoogleのCEOと一緒に米下院司法委員会の反トラスト(独占禁止法)違反の公聴会に出たときティム・クックCEOはこうさわやかに発言していました。

Hank Johnson議員:アプリ審査規則はデベロッパーに公開されておらず、都合のいいように解釈されて報復に利用され、Appleの意のままに変更され、デベロッパーは逆らえず、従えない場合はAppStoreを去るしかないと聞いた。かなりの強権発動に思えるが。

クックCEO:規則はオープン&透明な伝達を心がけています。プライバシーとセキュリティ、クオリティ保持の必要上、アプリは事前に厳格な審査を行なってから公開していますが、規則については全員平等に適用されます。

議員:零細企業を冷遇していると聞いたが、それは事実か?

CEO:滅相もございません。デベロッパーは全員平等に扱っています。

議員:アプリ内課金はAppleの決済を通すよう全デベロッパーに義務付けているという話は本当か?

CEO:はい。Appleが申し受ける手数料は30%と15%です。Amazon Primeは交渉で15%としました。2年目から30%から15%になることもあります。

CEOの言葉を鵜呑みにして、30%と15%は1年目か2年目以降かの区別だけだと思っていたので、Netflixがイチ抜けしたとき売上チャートNo.1のフォートナイトを見て、てっきり15%の優遇組かと思ってたら…2年目になっても30%のままだったとは意外。あんなに納めているのに…なぜなんでしょうね…。

Epicストアは手数料12%

フォートナイトはAppStoreとGooglePlay合わせてダウンロード1億2900万回。うち96.7%はAppStore(Sensor Towerの5月段階の推計)です。Android版はずっと直接決済で手数料を迂回してましたが、圧力がかかって4月にはGoogle Playに渋々出品し、直販の「Epic Games Store」もローンチしました。こちらは手数料12%。Apple、Google、Steamの30%よりずっと安く抑えているけど「十分採算は合っていて、5~7%の粗利が残っている」とEpicのTim Sweeney CEOは発言していますよ。

欲しいものは金より自由

フォートナイトはアプリ内課金で1日1億円以上のお金が動いているとされます。Appleだってこれだけのミルクカウ(乳牛=利益を絞り取れる会社)をそう簡単には手放せないだろうし、交渉に応じる構えも見せています。

ただ、EpicのTim Sweeney CEOは「自社だけ有利な条件を引き出して抜け駆けしようとしているのではない」とし、「お金が目的ではない。これはすべてのデベロッパーと消費者に自由を取り戻す戦いだ」とツイートし、ずっとこのバトルのためにコツコツと準備を積み重ねてきたことを明らかにしています。齢50、資産85億ドル(約9060億円)。やる気です。Apple、Googleの不正を現行の法律に照らして正すのが目的なので、取引きに応じるつもりもない様子。弁護団には、Amex裁判で勝訴し、Qualcomm裁判でAppleに地獄を見舞った事務所を筆頭に大物を揃えました。

夢はオープンなメタバース

上のグラフを見て「4月がやけに突出してるな~」と思った方も多いと思います。これはもちろん、トラヴィス・スコットのフォートナイトライブ。その衝撃はココで余すところなくレポートされています。

このメタバースを駆動するエンジンがEpic製Unreal Engineであり、そのテストケースのSONY Play Station 5の最適化にもSweeney CEOは大きく関わっています。インターネットの「次」にくる世界を既存勢力に囲い込まれないうちに自由な天地をつくりたいというのがSweeney CEOの夢。あらゆる表現者に力をくれるエピックバトル(壮大な戦い)の訪れを感じます。

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