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いざというときに身を守れる「見えないバリア」って可能なの? どうしたらできる?

GIZMODO / 2021年10月25日 22時0分

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Image: Angelica Alzona - Gizmodo US

どんな攻撃もはね返せるバリア、欲しい。

地球外生命体の襲来とか自然災害とか世界征服を狙う悪人の攻撃とか、人類を脅かすシナリオはいろいろありますが、そんなもしものときにわれわれはどう身を守ればいいでしょうか? SFの世界だと、何らかの結界というか「バリア」みたいなものを張るのが正解です。ミサイルを弾き飛ばすにしても、町を津波から守るにしても、はたまた単なる芸としても、強力なバリアを張れれば便利です。

でも、その方面の研究をちらっと見てみても、実際にバリア的なものを本気で開発している人はいないようです。これだけ科学が発達したように見える21世紀にあって、バリアは未だにフィクションの産物でしかありません。誰かがどうにかすべきじゃないでしょうか? そこでこの記事では、バリアって本当に存在し得るのか、専門家に聞いてみました。

グラフェンが使えるかも?

『The Physics of Superheroes and The Physics of Everyday Things(直訳:スーパーヒーローの物理学と、日常の物事の物理学)』の著者であり、ミネソタ大学の物理学教授であるJames Kakalios氏は、以下のように前向きに語ってくれました。

頑丈なシェルターの中にいれば、危険から身を守ることは可能です。でも、SF映画やコミックに出てくるような、人間を取り囲む目に見えないパーソナルな「場」、それには多少手間がかかります。

たとえば身の周りにグラフェンを張り巡らせてもいいでしょう。グラフェンとは、炭素原子を原子1個の厚さで六角形の格子状に並べたものです。光の97%を通すことができるのに、鉄より頑丈です。実際ライス大学の研究によれば、グラフェンは同じ重量で比較すると、防弾チョッキなどに使われるケブラー以上に防弾性が高いのです。見えないシールドを作る素材として有望かもしれません。

バリアに関しては、プラズマ物理学が参考になります。プラズマとは原子が高度にイオン化された気体であり、それぞれの原子の持つ電子の数が多すぎる、または少なすぎるため、電荷を帯びています。こうしたプラズマガスは、強い磁場に囲まれている必要があります(難題その1)。プラズマガスはあなたに向かってくるレーザービームを反射できるかもしれないし、どんな粒子ビームでも磁場のボトルかプラズマ自体によってはね返せると考えられます。2重の層、つまりプラスの粒子ビームを跳ね返すプラスの電荷を帯びたプラズマと、マイナスの粒子ビームから身を守るマイナスの電荷を帯びた層があるわけです。物体の動きが速ければ速いほど、磁気容器からの反射が強くなるので、スローで強烈な右フックなんかはまだ返しきれないかもしれません。

個人的には、SF作家シオドア・スタージョンの提案が良いと常々思っていました。スタージョンの『It Was Nothing - Really!』には、グラフェンシールドの先駆けとなるものが描かれています。その物語では、発明家が穴で切れ目の入った紙、たとえばペーパータオルやトイレットペーパーのようなものが、いつも切れ目でない部分で切れることに気が付きます。したがって、穴の切れ目がかえって素材を強くしているのだ、と彼は結論づけます。彼は物質をどんどん除去していき、強靭で目に見えないシールドを穴だけで作り出すことに成功するのです。

どんな力で成り立つのか?

一方サウスウェスタン・ルイジアナ大学の物理学准教授、Rhett Allain氏は、そんなに楽観的じゃありません。彼はバリアが成立する難しさをこんな風に説明してくれました。

まず言っておきたいんですが、私はSFに出てくるバリアが大好きです。プロットの道具として素晴らしいし、物語上クールなことをたくさん可能にしてくれます。それをなくそうと呼びかけるつもりはありません。でも、バリアが現実にどう機能するのか、私にはわからないのです。

まずわれわれが理解している基本相互作用から考えましょう。世界には重力があり、これは質量を持つ物体の間での相互作用です。それから電気力、これは電荷を持つ物体間の相互作用です。そして磁力、つまり電荷を持って動いている物体の間の相互作用があり、さらに強い核力、弱い核力があります。われわれが知っている、または理解していることのすべては、これらの相互作用のひとつの形をしています。

バリアを作りたいなら、まず自問する必要があります。バリアとは、これらの力のどれで作られるのだろうか?と。それはおそらく質量ではありません。質量は引きつけるだけで、跳ね返す性質はないからです。だから何らかの種類の電気力だろうとなります。でも強い磁場を作り出すことはできるものの、それがすぐさまものを跳ね返せるとは限りません。特定の場所が爆発の影響を受けないように力場を作る実験が行われたことがありますが、その際には爆発の衝撃を減らすために空気の密度を変えたり、何らかの壁を作ったり、といったことが行われました。

強い磁場を作り出すには、光を使う方法もあります。光が物質と相互作用するとき、物質を押すこともあるのです。それはどちらかというと、バリアというよりは閃光に近いです。光とは電磁波、つまり電場と磁場の振動です。すべての物質は、陽子でも電子でもとにかく荷電粒子でできているため、これら陽子や電子はそれを押す光の磁的または電気的な力の影響を受けるのです。そのため宇宙の彗星を見ると、彗星から出る塵は太陽から遠くへと押しやられていて、つまり太陽の光が彗星の塵を押しているのです。太陽帆の付いた宇宙船もありますが、太陽帆とは基本的に反射シートです。光がシートに作用して、風が帆を押すように宇宙船を押すのです。でも、本当にこれらはファンが物体を押すように機能するのであって、バリアのような壁を作るものではありません。

やはり何らかの電磁気力、はたまた…?

コーネル大学物理学教授のThomas Hartman氏も、自然界の4つの力を解説して電磁気力に注目しつつ、さらにまったく新しい力があり得るかも、と示唆しています。

まずどんな選択肢があるか見てみましょう。既知の物理法則によれば、世界には4つの基本相互作用があります。第一が重力、第二が電磁気力。これは電気力と磁気力両方を含みますが、ひとつと数えているのは、どちらも電子や陽子といった電荷を帯びた粒子でできているからです。電磁気力は光子が運び、重力は重力子が運ぶのだと考えられています。重力子は理論上の粒子で、高速で動き、個々に検知するのはほぼ不可能だとされています。

残るふたつの基本相互作用は「強い力」と「弱い力」と呼ばれます。強い力、または量子色力学は、原子核の中の陽子と中性子をひとつにまとめます。陽子はプラスの電荷を帯びているので、電磁気がそれらをお互いに反発させ合いますが、強い力の方が強いのです。弱い力は普通の意味の「力」ではありません。それは何かを引き離したり、くっつけたりするものではないからです。そうではなくて、弱い力は何かの粒子を別のものに変換させ、放射性崩壊などを引き起こします。強い力や弱い力を担う粒子が、光子や重力子と似たような感じでありますが、それらは非常に短い距離しか移動できないので、日常生活で存在に気づくことはありません。

既知の基本相互作用の中で、SFに出てくるバリアに一番近いのは電磁気力です。重力は引きつけるだけなので、未来のトラクタービームを設計するには便利かもしれませんが、バリアになることはないでしょう。強い力と弱い力は、原子核より遠くへは届きません。

とはいえ、この4つ以外にも基本相互作用があり得るでしょうか? それが、あり得るのです! 実際、われわれが粒子加速器を作った主な理由は、新しい力を発見するためです。そしてダークマター、宇宙に満ちていながら重力によってしか検知できない謎の物質には、電磁気と混じり合う特有の力があるかもしれません。変わった特性を持つ物質を実験室でデザインして、新しい力を発明することもできます。たとえば超電導は、人工の力で電子のペアを作ることで起きているのです。

そんなわけで、われわれが本当に「バリア!」って叫んで身を守れるまでにはもう少し時間がかかりそうです。でも少なくとも、専門家も絶対ムリとは言ってないことがわかって、ちょっと希望が持てた気がしますね。

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