タイの高齢化に日本のNPOが挑戦!
Global News Asia / 2018年6月13日 9時15分
2018年5月21日、タイ・ラーチャブリー県ポータラーム郡で、日本のNPO法人とポータラーム郡などがMOU(了解覚書)を結んだ。このMOUは、地域の高齢者福祉プロジェクトを日本の団体と協働して進めるためのものだ。タイ行政と日本のNPOとのMOU締結は異例であること、プロジェクトテーマが高齢者福祉であることからも注目が集まっている。
● 日本の経験を活かして作ったデイケア
ポータラーム郡は65歳以上人口の高齢化率13.8%とタイ国内においても高齢化が進む地域だ。ポータラームに限らずタイでは医療保険による入院は約1週間と短く、退院後の介護サービスはほとんどない。そこで顕在化した問題が「寝たきり高齢者」の増加である。ポータラーム郡では、高齢者福祉を重要政策に掲げ、デイケア(いわゆるデイサービス)の設立など、福祉の充実を図っている。タイ古式マッサージなどのタイ伝統医療も盛り込まれているところはタイならではである。
このデイケア設立に貢献したのが、NPO法人Rehab-Care for ASIA(ReCA)代表の國谷昇平さんだ。國谷さんはJICA隊員としてポータラームで活動中に地域の課題を見つけ、行政と協働してデイケア設立を実現させた。またJICA終了後にReCAを立ち上げ、日本とタイを行き来しながら現地での活動を続けている。
● 私たちの目で見たタイは、驚くほど寝たきり高齢者が多かった
「タイでは寝たきり状態になりやすいだけでなく、寝たきり状態から脱却しづらい特徴があります。それは単に介護やリハビリが少ないというだけでなく、リハビリのその先がないことが問題です。つまり元気になっても行くところや目的がないので、引きこもる、寝たきりになる悪循環です。デイケアはその解決策の一つです」と國谷さんは語る。
このことを実感する出来事があった。高齢者宅への訪問に同行したときのことだ。自宅のベッドで横になっていた高齢者はもう1年以上歩いていないという。國谷さんたちが現地の看護師と共に状態を確認すると、何とスラサックさん(仮名)は歩けることがわかった。そしてその場で看護師が指導し歩かせてしまったのだ。歩けないのではなく、どうしたらいいか誰も分からなかったということが原因だった。「スラサックさんは適切な介護とリハビリで歩けるようになります。しかし問題は元気になったその先を見据えた環境作りです」と國谷さんは言う。久々に玄関の椅子に座ったスラサックさんの笑顔がとても印象的だった。
● 公的機関でも企業でもない、NPO法人だからこそできる新たな関わり方
タイの行政が海外の法人と正式にMOUを結ぶことは異例のことだ。しかも日本のNPO法人となれば尚更だ。それだけReCAに期待を寄せているということなのだろう。実際、MOUは、ReCAとポータラーム郡、ポータラーム自治体、ポータラーム郡保健省、ポータラーム病院、ポータラームボランティア団体の6団体による大規模なものとなっている。
「日本の良いものを押し付けるのでなく、地域に深く関わり、行政から地域の現場まで様々な形で貢献できる土壌ができた」と國谷さんは言う。
世界で進む高齢化社会に対して、日本ができる新たな活動の形になるかもしれない。
【取材 : 宮原由佳(MPH)】
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