ロヒンギャ側勢力による残虐行為描き激論・ヒンズー教徒虐殺を告発するドキュメンタリー 映画祭で上映
Global News Asia / 2019年10月15日 8時0分
2019年10月12日、ミャンマー西部ラカイン州を巡る紛争を描いたドキュメンタリー映画「トゥルノサイド」(バニャー監督)が、ヤンゴンの新しい映画祭「ワンステップ・フィルムフォーラム」で上映された。ラカイン州情勢は、国際社会ではミャンマー国軍などがイスラム系住民ロヒンギャを弾圧しているという構図で語られることが多いが、このドキュメンタリーは、ロヒンギャ側武装勢力「アラカンロヒンギャ救世軍」(ARSA)が行なったとされるヒンズー教徒の虐殺事件を描いた。通常とは異なる視点で観衆にショックを与え、上映後のトークは支持と批判の声で紛糾した。
この作品は、2017年8月にラカイン州北部マウンドーのヒンズー教徒の村で起きた虐殺事件の生き残りの女性らのインタビューをもとに構成。虐殺の様子やイスラム教への改宗の強要、その後の逃避行などの経験を赤裸々に描いている。一方で、ロヒンギャに対するミャンマー側の虐殺についてはほとんど触れられていない。
上映後には「一方的すぎる」「ミャンマー政府の主張と同じではないか」などと批判の声があがった。これに対して「一方的なのは、この事件について報じない海外マスコミだ」などと反論する意見が相次ぎ、観客同士のかんかんがくがくの大議論となった。制作者側は「ロヒンギャ側にも悲劇があったことは承知しているが、この作品では新たな視点を提供するのが目的だ」などと強調した。
題名の「トゥルノサイド」とは、紛争の中で虐殺されているのは真実であるというメッセージを込めたという。ミャンマーではもともと、「ロヒンギャのほとんどはバングラデシュからの不法移民」という認識が強いうえ、国際社会のミャンマー批判に対して不満の声が高まっている。ロヒンギャ側の行為を批判する独立系映画がつくられたことは、こうしたミャンマーの世論の発露とも解釈できる。トゥルノサイドの制作者らは、ミャンマー国外でこの映画を上映することを目指しており、広く国際社会に訴える方針という。
ラカイン州を巡っては2017年8月、ARSAなどが警察署などを攻撃したことの反撃として、ミャンマー国軍が掃討作戦を展開した。その過程でロヒンギャらが虐殺される事件が発生。70万人以上が難民として隣国のバングラデシュに逃れている。この混乱に乗じる形で、仏教系少数民族のラカイン族の武装勢力「アラカン軍」(AA)が攻勢を強めており、ミャンマー国軍との戦闘が激化、泥沼の展開となっている。一方で国連などはミャンマー国軍の行為を「教科書通りの民族浄化」などと激しく批判。アメリカ政府も、国軍関係者に制裁を科している。
【取材/執筆 : 北角裕樹】
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