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すさまじい建設不況…「公共工事頼みのビジネスモデル」で絶命の中小企業、続出

幻冬舎ゴールドオンライン / 2022年7月1日 5時0分

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バブル崩壊後、しばらくは活気の残っていた建設業界もいよいよ状況が厳しくなり、中小企業はダンピングに次ぐダンピングにあえぎ続け、体力のないところからバタバタと倒れていきました。山陰地方のある建設会社の責任者は打開策として、景気に左右される大口工事への偏重から、一定の需要が見込める小口工事へのシフトを提案しましたが…。

巨大な恐竜は滅び、環境に適応したネズミは生きた

「大型案件一本槍では、公共工事の量や景気に左右され、それが悪くなれば会社の屋台骨が揺るぎかねません。これからは小口工事を増やしていきたいと思っていますが、どうでしょう」

私が会議でそう提案しても、良い反応は返ってきませんでした。

それは当然であり、予期していたことでした。

一つの案件で何億円という単位で仕事をしてきた人々にとって、数千円、数万円の小口工事などまったく眼中に入りません。たまに受けるにしても「大型案件の合間や、得意先からの依頼でどうしても断れないとき」といった感覚で、それを主軸にするなど誰に言っても理解してもらえませんでした。

「そんなちまちましたやり方で、うちの会社が食っていけるわけないだろ」

多くの社員から冷たい目で見られ、馬鹿にされていました。

そもそも今後大型工事が減っていくであろうことに対して、危機感をもっている人がほとんどいませんでした。「うちは大きな会社だから、多少不景気になっても大丈夫」という根拠のない楽観主義が幅を利かせていました。

確かに私たちは中小企業としてはそれなりの規模をもち、県下トップの業績を誇っていました。しかしだからといって、つぶれないという保証はまったくありません。

太古の昔、地球上の支配者であった恐竜たちは、巨大でどの生き物よりも強い存在でしたが、それでも環境の変化に適応できず、絶滅へと追い込まれました。そこで環境変化にうまく付き合っていったのが、ネズミのような姿をした体重600gに満たない小型種、すなわち哺乳類であり、私たちの先祖でした。

身体の大きさや強さは関係ありません。ただ環境に適応できるものだけが生き残っていく。それが進化であり、企業の生存にも同じことが当てはまると私は考えています。世の中が変化しているのに過去の成功体験にとらわれていては、恐竜と同じように絶滅の道をたどるしかありません。

たとえ孤立無援でも、やり遂げねばならない。私は強い決意を抱きました。

「大型案件1本で済む話。もう止めたらどうだ?」

とはいえ社内からの賛同はほぼ得られぬままだったため、全社的に小口工事に注力することはできません。そこで私はまず、自分の力の及ぶ範囲から始めることにしました。

営業を統括する立場であるのを活用し、大型工事の受注を主業とする営業部隊とは別に、一般顧客に向けて小口工事の営業を行う専門部隊をつくり、新規顧客の獲得を進めました。そうして少しずつ工事の件数を増やしていったのですが、その歩みは遅々たるものでした。

これら一連の動きは私個人の裁量により、いわば水面下で行っていたのですが、小口工事専門の営業部隊をつくって半年でついに当時の社長の目に留まりました。

「なんだか最近、変わったことをやっているそうじゃないか」

「はい……」

「小口工事だってな。それで、今の売上はいくらあるんだ」

「半年で、1億6000万円ほどでしょうか」

「それだけか。大型の案件を1本取れば済む話じゃないか。もう止めておいたらどうだ」

そんなふうに諭されましたが、私は「はい、はい」と返事をしつつも、止めることなく受注をこつこつと積み上げていきました。

社内の風向きが変わったのは、2001年のことです。

まず、当時誕生した小泉内閣が財政再建を掲げて歳出削減を断行し、公共事業費も一気に10%カットしました。その後も削減が続き、私が危惧していたとおり、公共工事の数は縮小の一途をたどりました。結果として、1995年には35兆円あった公共事業関係費が、2011年には17兆円と半分にまで減っていきます。

その影響はダンピング受注という形になって現れ、地方の建設業にも暗い影を落としました。そうした背景から、社内でも公共工事ばかりに頼ってはいけないという風潮が出てきました。

加えて、私の事業改革を支持してくれていた数少ない理解者がトップの座に就いたことで、私もそれまでよりはるかに動きやすくなりました。

こうしてわが社は、小口工事を積極的に受注するという方針へと移り変わっていくことになります。

「大型工事受注重視」の社内風土が壁に

小口工事の受注に力を入れるにあたり、大きな壁となったのが、社内風土でした。

島根電工は数々の華々しい大型工事を受注し、県下トップとなった会社です。したがって、社内には「大型の工事の契約を取ってくる人が偉い」という風土がありました。

営業部では、1億円、2億円という案件を受注した営業パーソンがヒーローでした。仮にそれの利益が少ないものであっても、とにかく「大型工事こそ営業の花形」として、彼らは必死に大型案件の受注を目指していました。

私が小口工事を動かし始めたときにも、その風土は変わりませんでした。

「所長、1億の案件が決まりました!」

「おお! やったな! おめでとう、みんな拍手だ!」

そんな雰囲気のなかで、2万円の小口工事を取ってきた営業パーソンは、恥ずかしくてとても自分の功績を伝えることなどできません。彼らとしては、どうしても大型の工事の受注に力を注ぎたくなります。

公共工事の入札やゼネコンへの御用聞きといった、大型の工事に関わるルート営業を担うのは実績のある中堅営業パーソンたちばかりで、実績のない若手社員は必然的に小口工事の営業ばかり任されていました。結果として、若手営業パーソンが一生懸命仕事をして受注を重ねても、社内的には一向に評価が上がらず、そこに不満を抱える社員が出てきました。

しかし、大型工事は、その受注につながるルート営業のラインにさえ乗っていれば、極論タイミング次第で誰でも取れるものです。一方の小口工事は、一般家庭やエンドユーザーというこれまでにないお客さまを対象とした新規開拓営業であり、新たな市場を切り拓くという点においては、既存ルートからの大型工事の受注よりもはるかに価値があるものです。

社内風土を変えるには、社員たちの価値観の大転換が必要でした。

荒木 恭司 島根電工株式会社 代表取締役社長

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