おばあちゃんになってもフラダンスを続けたい…75歳母と同居する年収200万円の“夢見がち”な52歳パート従業員「おひとりさま女性」の厳しすぎる現実に絶句【FPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月23日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
ソロ活が支持されている若者世代にとって、“おひとりさま”は自分の時間を自由に楽しめるポジティブな印象をもつ言葉です。しかし、年齢を重ねるにつれて、親の介護や自身の老後のことなど、不安が現実味を帯びてきます。50代女性の事例をもとに、おひとりさまの「シビアな現実」とその改善策をみていきましょう。株式会社FAMOREの山原美起子CFPが解説します。
増え続ける50代の未婚者
50歳時点の未婚者は1990年代中ごろから急激に増えはじめ、2020(令和2)年の国税調査※1では、男性28.3%、女性17.8%となりました。2025年には女性の未婚者が18.4%まで増加すると予想されており、女性の約「5人に1人」はおひとりさまの状態で老後を迎える可能性があることを示しています※2。
※1 参考:令和2年国勢調査 人口等基本集計結果 結果の概要 ※2 参考:内閣府「令和2年度 少子化社会に関する国際意識調査報告書」
「親と同居する中高年」も増加
未婚者の増加に比例して、「親と同居する中高年」の数も増えています。2015年には、40代~50代未婚者の実に50%以上が親と同居しているという調査結果もあります※。 ※ 参考:みずほリサーチ&テクノロジーズ「親と同居する中年未婚者の増加と生活上のリスクへの対策」
同居することになる大きな理由としては「経済力」があげられます。同居女性の約60%が、生計維持者は「親」と答えており、介護などでフルタイムで働くことが難しく、親と同居せざるを得ないケースが多いようです。非正規雇用で厚生年金に加入していない場合、将来受け取れる年金も低くなり、子どもが高齢になっても貧困から抜け出せなくなることが問題視されています。
52歳おひとりさま女性の“夢見がち”な将来展望
聡子さんは、父親を早くに亡くし、長年母と2人で生活してきました。52歳になった現在も、母名義の実家で年金暮らしの75歳になる母親と2人暮らしです。
大学を卒業後、正社員として働いていたものの、30歳でアパレル会社を辞め、現在は知人がオーナーの飲食店でパートとして働いています。家には生活費として月6万円を入れていますが、家計は母に任せっきり。特に不自由な様子もないので、母に自分の家の資産状況について詳しく聞いたこともありません。
「婚活をしていたこともあるんですが、残念ながらご縁がなくって……」
そんな聡子さんの趣味は、ダイエット目的で始めたフラダンスです。楽しくて熱心に練習するうちにメキメキと上達し、市民教室の仲間とイベントや大会に出場するようになりました。年収200万円程度のパート代は、フラダンスのレッスンや衣装費、より美しくなるために通いだしたエステなどに消え、貯金する余裕はありません。
たまの母の小言には「財産を残す子どももいないし、なんとかなるわ」と“どこ吹く風”でやり過ごしていた聡子さんですが、ある日イベントの打ち上げで仲間が発した言葉に、ハッとさせられます。
「おばあちゃんになっても、ずっとこのメンバーでフラを続けようね!」
(おばあちゃんになっても? 私、いつまでこの生活を続けられるのかな。もし母がいなくなったら、どうやって生活するんだろう……)
聡子さんが筆者のFP事務所を訪ねたのは、こうしたきっかけからです。
いつか結婚…は捨てる!おひとりさま女性に“必要不可欠”な4つの視点
老後資金について考えるときに重要なのは、「収支のバランス」です。老後いくらあれば足りるのかについては、毎月どれだけ生活費がかかっているか「支出」を把握しなければ計算できません。
さらに、50代おひとりさま女性が老後の収支をシミュレーションする際には、特別な心構えや観点が必要になります。
1.“いつか結婚するかも”…の想定は捨てる
国立社会保障・人口問題研究所が2022年に発表したデータによると、50代女性の初婚率は1%以下となっています※。「いつか結婚するかも」という想定はいったん捨てて、おひとりさまとしての老後設計に振り切る必要があるでしょう。
※ 参考:国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」
2.女性は男性より6年長生きし、12年間介護される
また、平均余命の観点からみると、50歳時点で男性は約32年、女性は約38年あります※1から、女性は男性より6年分多く老後の生活費を見積もる必要があります。
さらに、女性の寿命と健康寿命には約12年の差があり、その間はなんらかの介護が必要になります※2。おひとりさまの聡子さんに介護をしてくれる身近な人がいないとなれば、介護費用も割増しで計算する必要があります。
※1 参考:厚生労働省「主な年齢の平均余命」 ※2 参考:内閣府「令和5年版高齢社会白書」
3.「夫婦世帯」のデータを参考にしてはいけない
老後の収入源の柱は年金になりますが、年金制度は夫婦世帯を基本に設計されているため、一般的な試算はおひとりさま女性の参考にならないことが多々あります。
たとえば、一時期メディアで話題となった「老後2,000万円問題」は、金融庁が提出した報告書から「年金をもらっても、老後は2,000万円不足する」という一部を切り取って報道したことで世間をざわつかせたものです。
しかし、これはそもそも「高齢夫婦無職世帯の家計収支」を根拠に試算された金額ですから、前提条件の異なるおひとりさまの聡子さんには当てはまりません。
おひとりさま女性がもらえる年金について知るには、まずは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で自分自身の見込額を確認しましょう。50歳以上であれば、年金事務所で試算してもらうこともできます。
4.「一生実家」の保証はどこにもない
将来的に、高齢の親に介護が必要となり、それまでに十分な介護費用を準備できていない場合、「自宅を売却して介護費用にあてる」ことがあります。また、介護でなくとも、親が亡くなり相続が発生した際、自宅をめぐった相続争いの結果、同居家族(聡子さん)が自宅に住めなくなるケースもあります。
聡子さんが老後も自宅に住み続けられるか否かによって、住居費として見積らなければならない金額は大きく変わります。十分な介護費用はあるか、相続トラブルのタネはないか……親が元気なうちに、家族で話しあっておきましょう。
厳しい現実に目をそむけたくなるが…50代女性は「改革」のタイミング
FPから一連の説明を受けた聡子さんは、絶句……。うつむいた様子で、少なからずショックを受けているようです。聡子さんにとって厳しい内容となり筆者も心苦しいですが、希望的観測で老後資金を計算しても、実際に必要な額とはかけ離れたものになってしまい、役に立ちません。
試算の結果、老後資金が不足する場合には、対策としてもっとも効果が高いのは「長く働き続けること」です。
聡子さんはいまの職場に不満がなく、できることなら働き続けたいと考えているようですので、早いうちにオーナーである知人に相談しておくといいでしょう。
正規雇用で収入アップを目指したい気持ちもあるけれどいまからでは難しそう……という場合、兼業や副業で複数の収入源を持つのも1つの手段です。いずれにしても、50代おひとりさま女性は自分の希望を明確にし、老後まで見据えた働き方改革に着手するタイミングです。
「こんなに考えないといけないことがあるとは思っていませんでした。すぐに母とオーナーに話してみます」
目を背けたくなる問題にも向き合い、1つひとつ検討・対策していくことが不安解消の第1歩です。
聡子さんの老後資金の準備計画は始まったばかり。「おばあちゃんになってもフラダンスを続けたい」という夢の実現に向けて、筆者のサポートは続きます。
山原 美起子 株式会社FAMORE ファイナンシャル・プランナー
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