勝どき、晴海フラッグ…タワマンに群がるのは世帯年収1,500万~2,000万円の小金持ち?〈真の富裕層〉がタワマンを選ばないワケ
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月25日 10時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
晴海フラッグ、パークタワー勝どきなど中央区エリアの物件値上がりにみるように、タワマン人気が収まる気配を見せない。再開発への期待による相場上昇や、外国人投資家の円安による参入も理由の一部だが、最も大きいのは、日本人の「プチ富裕層」のタワマン購入意欲の高まりだろう。しかし、目端の利く賢い人、本当の富裕層ほどタワマンを回避する傾向にあるようだ。なぜ彼らはタワマンを選ばないのか。そしてどこに住んでいるのだろうか。
ここ数年で値段が跳ね上がった、勝どきのタワマン
少し前、ニュースでも盛んに報じられていた「晴海フラッグ」の転売問題。法人が投資目的で多数の部屋を買い占め、高値で販売していたとのことで、NHKが確認したところ、元の値段の1.5倍から2倍超の価格で売買されていることが明らかになった。なかには約1億円で購入した物件が2億超の値段で売買されたという例もあるという。
なにより問題なのは、「晴海フラッグ」は東京都が事業を監督する元選手村を改修したマンション群であり、本来東京都が得るはずだったお金が、いわゆる「転売ヤー」にかすめ取られたということだ。
それにしても、なぜこれほどまでの金額が上乗せされても売れるのか?
晴海フラッグに限らず、中央区エリア、そのなかでもとくに勝どきのタワマンは次々と高値で成約しており、ここ数年で値段が跳ね上がっている。まだまだ円安で割安感を感じる海外投資家の影響もあるが、パワーカップルを中心とした多くの日本人が買い漁っていることが主要因である。
勝どきのタワマン、まさかの「バブル状態」?
勝どきエリアのタワマンの動きは、とくに凄まじい。人気のタワマンである駅直結の「パークタワー勝どき」は、2020年の一次販売では坪400万円程度だったが、2024年9月現在、なかには坪1,000万円台で不動産サイトに掲載されているものもある。70m2換算で単純計算すると、8,468万円(400万円/坪)→2億1,170万円(1,000万円/坪)だ。100m2超は3億円を超えている物件もある。
価格だけを見るとバブルのようにも見えるが、実は勝どきを中心とした湾岸エリアはまだまだ再開発を控えており、ポジティブな要素が盛りだくさんだ。
一般的に、再開発されると周辺エリアの相場は押し上げられる。再開発の期待で上がり、完成してもなお上がることが多い。もちろん、リセールバリューを意識しているパワーカップルの購入や、海外投資家からの参入も価格上昇の要因として考えられている。
コンクリ強度不足の問題をかき消す、すさまじい人気ぶり
パークタワー勝どきの登場で周辺相場は爆発的に上がったが、世間の目はすでに、「ポスト・パークタワー勝どき」探しに入っている。次に勝どきエリアで注目されているのは、ラグジュアリーな外観で評判が集まる「ザ豊海タワーマリン&スカイ」だ。コンクリート強度に不足があったとして、今年の上半期に予定していた販売が後ろ倒しになっている。
地震のリスクが大きいタワマンにとって、強度の問題は致命的と思われるが、いざ実際に販売が始まると、世間はどう反応するのだろうか? 海外投資家に好まれそうな外観なので、人気が殺到しそうだとの声もあり、好条件の部屋はかなり高い倍率になるのではないかとの予想もある。
実際のところ、「ザ豊海タワーマリン&スカイ」のモデルルーム見学予約のホームページはアクセス殺到によって、サーバーダウンという、前代未聞のアクシデントがあったほどなので、人気の部屋は数十倍から、下手すると100倍以上の部屋があっても不思議ではない。
これだけ価格が上がり続けているのは、資産価値が認められている証拠ともいえるが、実際のところはどうなのだろうか。
なぜ多くの人はタワマンに憧れるのか
「地震でエレベーターが止まったら、高層階まで階段で歩かないといけない」「災害で電源が落ちたら、トイレの水も流せない」「エレベーター渋滞で部屋からエントランスまで5分かかる」こんなデメリットが広く知られているなか、なぜタワマンにみんなは住みたがるのか。
ひとり暮らしなら自分が我慢すればいいだけだが、パートナーや子どもにこのデメリットを受容させるのはどうなのかという声もある。
購入する人の多くは「リセールバリュー」を理由に、資産性の高さを強調するが、いちばん大きいのは「タワマン住み」というステータス欲しさなのかもしれない。
「年収1,500万円」「資産1億円」をそのまま口に出して自慢することはできないが、タワマンに住んでいるという事実を伝えるだけで、優越感に酔いしれることができる。圧倒的な存在感のある外観、超高級ホテルのようなエントランス、ジムやパーティルームのような豪華な共用施設。
まるでこれらが全部自分のものであるように感じられ、麻布に豪華な門を構える大豪邸の主のような気分で、毎日家を出入りできるのだ。
しかし残念ながら、外観やエントランスは所詮「共用部」。自分の所有物でもなければ、自由にできるわけでもない。部屋から一望できる大パノラマに酔いしれるのも、せいぜい数ヵ月といったところか。
実際にタワマンに飽きてしまって、低層マンションに移住する富裕層も多いと聞く。東京タワーや綺麗な夜景も、見慣れてしまうと感動もしなくなってしまうのだとか。そうなってしまうと、忘れ物したときに戻る時間など、デメリットのほうが大きく感じてしまうのだろう。
タワマンはコスパが悪い?
一見、夢のような暮らしを想起させるタワマンだが、現実に住むとなるとそう簡単ではない。
●億単位の資産が必要
まず、経済的な観点から考えてみよう。ファミリーで住むなら、億単位の資産が必要だ。それも、同じ間取り・広さでも、上層階になるほど価格が上がっていく。見下ろす景色が少し遠くなるだけで、1,000万円以上も多く支払うのは合理的な選択なのだろうか。
そのうえ、年々あがっていく管理費や修繕積立金の負担は重たい。そこに駐車場等を借りたら、さらに支出は積み上がっていく。「ファミリータイプの部屋+車」なら、物件のローン返済とは別に、月額10万円超が固定の生活コストとしてのしかかる。仮に10万円だとしても、年間で120万円。
もしそれだけの金額を、物件価格と別に固定コストとして支払うなら、他の投資資金に充てるなど、別の有用な使い方をしたいという人がいても驚きはない。特に本当の富裕層こそ、お金の使い方に細かいとよく聞く。
●待ち時間、騒音、災害時の脆弱性
次に生活の質という観点からいえば、エレベーター待ちのイライラ、上下左右からの騒音、そして何より気になるのが災害時の脆弱性……。もし大震災が起きて、電源が落ちてエレベーターが止まったら、飲み物や食べ物を確保するのも困難だ。
非常食を常備するパントリーを取れるほどの広さがあるのは、最上階に近い100m2超の部屋を確保している数世帯だけで、それ以外は階段を使って食料を調達しなければならない。
もし高層階だったら……階段の往復だけで次の日にはひどい筋肉痛になってしまうだろう。真夏に電源が落ちて、クーラーが止まったら、サウナ状態でとても生活できる状態ではなくなる。
こうしたリスクとリターンを冷静に分析し、ある程度の富裕層の人は、立地のよい低層マンションや、庭付きの一戸建てを選ぶ傾向にある。彼らは見栄といった他の人からの評価よりも、地に足をつけた生活の質を重視するからだ。
超富裕層はタワマンに住まない
実際に本物の超富裕層が好むのは、落ち着いた住宅地だ。世間がタワマンを富の象徴と見るなか、実は超富裕層の多くはタワマンにあまり興味を示さない。リスクとリターンが割に合わないのに加え、タワマン周辺の密集した環境や、他人と何度も顔を合わせるエレベーターや廊下は、彼らにとって耐え難い居心地の悪さを感じるのだという。
場所にもよるものの、実際に家賃が数百万円以上の部屋に絞って検索すると、話題にあがるようなタワマンより、低層マンションの数が多いエリアもある。超富裕層が住まいに求めるのは、広い庭付きの一戸建てや、昔ながらの高級住宅街にある低層マンションのような、プライバシーに配慮されつつ、快適に過ごせる場所。
自由にカスタマイズできる空間と、他人の目を気にせず過ごせる空間を大事にする。彼らにとって、住まいは単なる寝床ではなく、至福の日々を過ごすために最もこだわりたいポイントでもある。
タワマンに住むのは、世帯年収1,500万~2,000万円程度の小金持ちが多い。彼らは一般層よりは豊かかもしれないが、落ち着いた低層マンションに住むような、本当の富裕層には遠く及ばない。
タワマンは、彼らにとって手の届く「贅沢」であり、本人や一般人から見ると富の象徴のように見えるのだろう。超富裕層から見れば「みせかけの贅沢」なのかもしれないが、ほかの人にタワマン住みをアピールできて、夢だった富裕層の生活を体現できていると本人たちが思うなら、それはそれで幸せなのかもしれない。
七海 碧
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