えっ、そんなの聞いてない!寺との話し合いで完結じゃないんですか?「墓参りがしんどい」60歳女性、危うく「墓じまい」をしそびれたワケ【専門家の助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月27日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
毎年お盆やお正月に帰省して、「お墓参り」をするという人もいるでしょう。しかしながら、そうしたお墓参りを負担に感じて「墓じまい」を選択するというケースも増えているようです。墓じまいをするには、どのような手順を踏む必要があるのでしょうか。そこで本記事では、CFPなどの資格を持つトータルマネーコンサルタントの新井智美さんが、墓じまいの方法や、注意すべきポイントについて解説します。
毎年のお墓参りが負担に…
毎年お盆やお正月には田舎に帰ってお墓参りをしていた60歳の女性・Aさん。しかし、子どもも大きくなり、お墓参りをする機会も少なくなってきたため、墓じまいを考えるようになりました。
Aさんの子どもは結婚して別の姓になっており、今後お墓を継ぐ人もいないとのこと。Aさん自身も今後田舎に帰る予定はなく、田舎にはお墓があるだけなので、逆にお墓の管理を負担に感じています。
また、自分たちが亡くなった際の供養方法として、最近ではお墓だけでなくさまざまな埋葬方法があると聞き、自分たちの意思を尊重しようとエンディングノートの活用も考えているそう。
最近、お墓を管理する後継者が少なくなってきたことや、田舎が遠いといった理由で墓じまいを考える人が増えています。
そこで今回は、墓じまいの方法や注意すべき点について紹介するとともに、亡くなった際の埋葬にはどのようなものがあるのかについても解説します。
具体的な墓じまいの流れは?
墓じまいとは、今あるお墓を解体して、管理者であるお寺に返還し、新しいお墓に移すことです。新しいお墓に移すことを改葬ともいい、どこに移すかを考えなければなりません。
もちろん新しいお墓を建てて移してもいいですし、お寺に永代供養してもらう方法もあります。またお寺によっては納骨堂に納めるほか、合祀(ごうし)と呼ばれるお寺内の共同のお墓を利用する方法もあります。
墓じまいは以下の流れで行われます。
1.お墓があるお寺に墓じまいの相談をする2.お墓の移動先(改葬先)を決める
3.お墓がある自治体に改葬許可申請書を発行してもらう
4.開眼供養(魂抜きともいう)を行い、お骨をお墓から出し、改葬先に納める
5.お墓を解体する石材店を決める
6.お墓の解体工事を行い、お墓の土地をお寺に返す
墓じまいにあたって多くの人が戸惑うのが、行政への手続きが必要だということです。墓じまいはお寺との話し合いだけで完結するものだと思っている人が多く、慌てて書類を準備するケースも多く見られますので、注意しておきましょう。
Aさんもお寺との話し合いで完結すると思っていたそうで、行政の手続きが必要とわかり、慌てて地元の市役所に駆け込んだそうです。
墓じまい、つまり改葬にはお墓がある場所の自治体に「改葬許可申請書」を発行してもらう必要があります。また、改葬許可申請書はお骨1体につき1つ必要になるため、現在のお墓にいくつのお骨が入っているかの確認も必要です。ただ、お骨の数についてはお寺が把握しているはずですので、分からない場合は問い合せてみましょう。
また、今のお寺以外の場所にお骨を移す場合は、改葬先のお寺や霊園などに提出するための「埋葬証明書」も必要です。これは改装先のお寺や霊園の管理者に発行してもらいましょう。また場所によっては「受入証明書」などが必要になるケースもありますが、自治体によって不要なケースもありますので、自治体もしくはお寺に確認しておきましょう。そして改葬後にお骨を納めた場所の自治体から、改葬許可証を受け取る流れです。
ただ、同じお寺の中で永代供養や納骨堂、または合祀を選ぶ場合は、改葬許可申請書が不要なケースもありますので、お寺に確認しておきましょう。
墓じまいにかかる費用
用意する書類と同時に気になるのが墓じまいにかかる費用ではないでしょうか。
墓じまいは改葬先をどうするかによって費用が異なりますが、一般的な費用相場は以下のとおりです。
墓じまいについて、開眼供養にかかるお布施と離壇料、お墓の解体費用は必ず発生します。そして改葬先をどうするかによって最終的な費用は異なります。
正確な費用はお寺や改葬先、そしてお墓を解体する工事業者によって異なりますので、事前に確認しておくことをおすすめします。
また、改葬許可申請書の発行にも費用がかかります。さらに申請先はお墓のある自治体になりますので、田舎など遠い場合は郵送で対応してもらうことも考えましょう。
自分に合った埋葬方法を
最近では改葬先もしくは自分が亡くなったときの埋葬方法として、お墓を建てるのではなく、樹木葬や散骨なども選ばれています。
樹木葬の特徴は墓石を立てるのではなく、樹木の下にお骨を納めることで、どこに納めたか分かるようネームプレートが設置されるケースが一般的です。また埋葬後15年経ったらお寺の合祀のように、決められた場所にお骨が移されるなどのルールを設けているところもあります。
散骨はお骨を細かく砕き、海や山などに撒く埋葬方法です。散骨は法律にも違反していませんので、残った人に管理の負担をかけないようにと散骨を選ぶケースも多くみられます。
埋葬後の費用がかからず、管理の手間がなくなる点はメリットですが、自治体によっては散骨が禁止されている区域もありますので注意が必要です。
従来、人が亡くなったときには四十九日にお墓にお骨を納める方法が一般的でしたが、最近はお墓に入れるという考え方が薄れてきています。
ただ、残された人の中には散骨以外の方法で、お骨を残しておきたいと考える人もいるでしょう。そのため、自分が亡くなった後にはどのように埋葬して欲しいのかを考え、家族と話し合っておくことが大切です。火葬した際にお骨をお守りとしてペンダントに入れて保管する方法もあります。
自分の意思だけでなく残される家族の希望も尊重しながら、できるだけみんなの希望が叶うような埋葬方法を考えてみましょう。
新井智美
トータルマネーコンサルタント
CFP
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