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信用格付け機関「トランプ次期米国大統領就任」に警報…フィリピン経済「成長鈍化」を懸念

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月2日 7時15分

信用格付け機関「トランプ次期米国大統領就任」に警報…フィリピン経済「成長鈍化」を懸念

写真:PIXTA

一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週は米国次期大統領・ドナルド・トランプ氏の就任によるフィリピン経済への影響を中心に見ていきます。

関税引き上げ、移民政策…フィリピン経済にマイナスの影響か

信用格付け機関は、米国次期大統領ドナルド・トランプ氏の経済政策がフィリピン経済に与える影響について警鐘を鳴らしています。

Fitch Ratingsは、トランプ氏の政策がフィリピン経済に及ぼす影響について、「貿易保護主義がフィリピンの輸出や世界的な成長の鈍化を通じて影響を及ぼす可能性がある」としています。また、同社は以前フィリピンの信用格付けを「安定的」と評価した際に、いくつかの格下げ要因を挙げていました。それは、経済成長の安定性への信頼の喪失、政府債務対GDP比率の維持失敗、外貨準備の大幅な悪化などです。

トランプ政権の政策がこれらの要因に影響を与える可能性がある一方、それに対するフィリピン政府の政策対応も重要な要素となります。同社は、安定的な見通しは通常、1~2年以内の格付け変更を予想しないことを意味しますが、状況に応じて再評価を行う可能性があるとしています。

トランプ氏の政策による直接的な影響として、アジア経済への輸入関税の引き上げや移民政策の強化が挙げられます。特に、トランプ氏は中国からの輸入に60%の関税を課すことや、その他の国からの輸入に10~20%の関税を課すことを提案しています。これにより、フィリピンの主要輸出品である電子機器や部品などの需要が減少し、経済成長が阻害される可能性があります。実際、2023年9月時点で米国はフィリピン製品の最大の輸出先であり、全輸出の17.3%を占めています。

一方で、中国に対する関税の引き上げが、中国メーカーによる生産地の多様化を促進し、フィリピンへの外国直接投資(FDI)を増加させる可能性も指摘されています。しかし、フィリピンと中国の間の領土問題(南シナ海問題)がこれらの恩恵を制限する可能性もあります。

また、移民政策の影響で、フィリピン経済の重要な収入源である海外フィリピン人労働者(OFW)の送金が減少する可能性が指摘されています。トランプ氏が提案する移民政策は、厳格な移民規制や不法移民の大量帰還を含んでおり、これがフィリピンの労働市場やOFWからの送金額に悪影響を及ぼす可能性があります。フィリピン中央銀行の最新データによると、2023年9月末時点で、OFWの送金の41.3%が米国からのものでした。

さらに、トランプ氏の政策は、アジア太平洋地域の通貨や金利動向にも影響を及ぼすとされています。S&P Global Ratingsは、トランプ氏の政策が米国のインフレや政策金利に影響を及ぼし、新興国通貨に下押し圧力をかけています。最近、フィリピンペソが米ドルに対して過去最安値を記録しています。フィリピン中央銀行は、ペソの減価は地域通貨全体の動きに沿ったものであり、米ドルの強さが原因であると説明しました。

1兆ドル経済を目指すフィリピン経済の動向

フィリピンは、2033年までに1兆ドル経済を実現するという野心的な目標を掲げています。これを達成するには、国内外の課題を乗り越えつつ、持続的な経済成長を確保し、戦略的な投資を進める必要があります。

世界銀行は、競争力のあるグローバル経済に適応するための能力を強化する投資が不可欠であると指摘し、年平均6%以上の成長率が求められるとしています。また、目標年数にこだわるよりも、持続可能な成長を追求することが重要だと強調しています。

2023年1~9月期のフィリピンの国内総生産(GDP)は5.8%増加しましたが、政府目標の6~7%には届いていません。成長を持続させるためには、投資環境の整備、気候変動への対策、外部リスクへの対応が必要とされます。特に、建設業や製造業などの生産性の高い分野で雇用を創出することが求められています。また、人的資本への投資や市場の競争力強化、デジタル化の推進が、1兆ドル経済への鍵となるとされています。

アジア開発銀行(ADB)は、フィリピン経済の成長見通しを「非常に有望」と評価していますが、主要経済圏の減速や地政学的緊張、サプライチェーンの混乱といったリスクも指摘しています。ADBは、2023年の成長率を6%、2025年を6.2%と予測しており、国内需要の強さやインフラ投資が成長を後押しすると見ています。ただし、世界的な投資パターンや貿易政策の変化が、投資家の信頼や消費者心理に影響を与える可能性も懸念されています。

政府は、財政の健全化を進めながら、優先分野への投資を増やす取り組みを強化しています。2025年には「上位中所得国」への昇格を目指し、財政赤字と債務を削減しつつ、長期的な経済成長を支える仕組みを構築しています。また、外国直接投資(FDI)の増加を目指して株式取引税の引き下げを検討するなど、資本市場の活性化に向けた改革も進めています。

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