若手社員が立ち上げた温故知新のプロジェクト「ONE MAZDA RESTORE」の狙いとは(1)
&GP / 2017年7月1日 20時0分

若手社員が立ち上げた温故知新のプロジェクト「ONE MAZDA RESTORE」の狙いとは(1)
「ロードスター」や「デミオ」、「CX-5」といった日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞車をはじめ、魅力的な新型車のリリースが続くマツダ。近年では“もっともっと、人とひとつになるクルマを。”をスローガンに掲げ、単なる道具としてではなく、人とクルマのかけがえのない関係を目指した挑戦を続けています。
“人馬一体”の走りを実現するスカイアクティブテクノロジーに代表される、新技術の開発や導入にも積極的なマツダですが、一方で、2015年からユニークな試みにも挑戦しています。それは「ONE MAZDA RESTORE(ワン マツダ レストア)」と呼ばれる活動で、かつて自社で生産したクルマのレストア(復元)を行っています。
2015年は、ロータリーエンジン車の偉大なる源流「コスモスポーツ」を、そして2016年には、マツダの乗用車の原点である「R360クーペ」を見事に再生した本プロジェクトは、どのような経緯でスタートしたのでしょうか? その真相を探るべく、プロジェクトのガレージが置かれる広島のマツダ本社を訪ねました。
「ONE MAZDA RESTOREプロジェクトは、実は経営陣や上層部が発案したものではありません。若手社員がマツダブランドに愛着や誇りを持つためにはどうしたらいいのか、ということを真剣に考えた結果、我々の方からレストアプロジェクトを会社へと提案しました。
マツダは2013年から“お客さまに寄り添ったブランドに”という目標を掲げています。イベントなどでマツダファンの方々にお会いする機会も多いのですが、皆さんと時間を共有しているうちに『果たして自分たちは、どれだけマツダのことを知っているのだろう?』と考えたのがきっかけですね」
プロジェクトがスタートした経緯を語るのは、企画を担当した10名の若手社員のうちのリーダー、阿部瑞穂さん。
2015年のコスモスポーツ、2016年のR360クーペに続き、2017年は「ルーチェ ロータリークーペ」をレストア中の同プロジェクトですが、実はそこには、確固たる目的があるのだといいます。
「まずは、マツダの過去・現在・未来という視点で考えたのです。過去にフォーカスした時、現在や未来まで続くマツダの思想や価値観を自分たちで体感し、共感を深めようと思いました。そこで、歴代名車のレストアを通じ、直接体感するのが一番じゃないかと考えたのです。
図書館へ行って過去のクルマの資料を掘り下げることもできますが、クルマは走ってこそクルマ。実際に分解して今のクルマと構造を比べてみたり、完成した暁には、走らせて乗り味を体験したりしてみたいと思ったのです。まさに“温故知新”でマツダのDNAを発掘したいというのが、このプロジェクトの目的ですね。それと2017年は、コスモスポーツの誕生から50周年という節目の年。マツダ自体も2020年に創立100周年を迎えます。そこへ向かって、マツダの歴史を語る上で欠かせない5台をレストアしようという目的も掲げています」(阿部さん)
こうしてスタートした同プロジェクトの、ユニークであり、いかにもマツダらしい点が、レストア作業への参加メンバーを社内から募ったこと。自社の歴史を代表するクルマを復元、展示しているメーカーは少なくありませんが、他社の場合、レストア作業自体は、専門の部署やプロフェッショナルが受け持つというのが一般的なのです。
「コスモスポーツの際は、20名を目標に募集を開始しました。でも、通常業務をこなしながらの作業ですから、内心『5、6名集まればいいかな』と思っていたのです。ところが説明会を開いてみると、熱い思いを抱いた20名がすぐに集まりました。またメンバーも『開発や生産系の人間ばかりだろうな』と思っていたのですが、営業部門といった事務系の人間も多く手を挙げてくれたのには、正直、驚きましたね」(阿部さん)
年齢も、20歳代から50歳代までと幅広く、部署や世代を超えた交流という意味においても、理想的な布陣だったそうです。しかし、作業を進めていくに当たり、全く問題がなかったのかといわれば、実はそうでもなかったというのが実情のようです。
「マツダという自動車会社に勤めているため、全員がクルマのプロではあるのですが、実際、クルマの整備を経験した人間は、ごくひと握りしかいませんでした。ボディを分解するのは誰にも負けないけれど、組み立てるのはちょっと…という人もいましたね(苦笑)。そこで、上層部の人間に、アドバイザーとして適任の方はいないか、相談したのです。すると、車両開発本部の木下さんを紹介いただきました。レストアには特殊な作業もありますし、知識やスキルも必要なので、木下さんには大いに助けられています」(阿部さん)
昭和24年生まれの木下新朗さんは、社歴50年という大ベテラン。現在も嘱託社員として車両開発本部に籍を置く現役のエンジニアで、マツダの歴史のほとんどを自らの目で見てきた、まさにマツダの生き字引。車両の開発はもちろん、メカニズムにも精通しており、さらに趣味は愛車のレストアという、本プロジェクトにはまさにうってつけの人だったのです。
「本プロジェクトへの参加依頼が来た時は、まさに即答でした。ウエルカムですよ! 実際の作業は、クルマの分解や組み立ては未経験というメンバーが多かったので、まずは工具の使い方を学ぶという地味なところからのスタートでした。それでも、作業がある日は、メンバー全員が目を輝かせて集まって来る。そして、マツダの歴史や過去の製品に興味を持ち、面倒な細かい作業でも懸命に行う…。こんな素晴らしいプロジェクトに参加させてもらえて、本当にうれしく思います」(木下さん)
ONE MAZDA RESTOREプロジェクトの作業実施日は、毎週木曜日と決められており、当日は各メンバーが、自身の本来の業務を離れ、朝から本社内のファクトリーに集まって作業を行います。つまり、1年に1台レストアするためには、最大50回の作業で完成させなければならないわけです。
「業務として会社に認められてはいるものの、だからといって、本来の業務の負担が軽減されるわけではありません。なので、作業のない4日間で週5日分の仕事を効率よくこなし、木曜日はレストア作業に専念するのです。ハードに感じるかもしれませんが、いざ始めてみると皆、楽しかったようで、必死になって本来の業務を進めていたようですよ(笑)」(阿部さん)
スタッフの皆さんが情熱を持ってスタートしたONE MAZDA RESTOREプロジェクト。その第1弾として選ばれたクルマは、世界初の2ローター・ロータリーエンジン車を市販したマツダらしいセレクトでした。
「プロジェクトがスタートする前に、レストアの素材はどのクルマがいいか、マツダミュージアムの人間に相談したのです。その際、ミュージアムに20〜30年前から展示されているコスモスポーツが、実は動かない不動車であるという事実を知らされたのです。話を聞いているうちに『実際に動いたらどんな音がするのだろう?』と興味が湧いてきたので、第1弾の素材にコスモスポーツを選んだのです」(阿部さん)
「実はこのクルマは、正確にいうとコスモスポーツではなく、輸出用のマツダ『110S』なのです。車体番号は分かるのですが、当時の書類が見つからないため、どういう経緯で日本に戻ってきたのか、そして、どのようにしてマツダミュージアムで展示されるようになったのか全く分かりません。分かるのは、スピードメーターがマイル表示であること、そして、右ハンドル車であることから、イギリス仕様であるということだけでした」(木下さん)
「シャーシナンバーが“10110”と車名に合わせた番号なので、お客さまに納車したクルマではなく、プロモーションなどでヨーロッパを巡った1台なのではないか? という想像は膨らみますが、結局のところ真相は分かりません。おまけに、外装は一見するとキレイでしたが、下まわりは海外の荒れた道を走ったからなのか、サビで穴が開くほどひどい状況でした」(阿部さん)
こうして2015年4月、コスモスポーツのレストアが始まりました。しかし、メーカーのオフィシャルプロジェクトとはいえ、すべての作業は順風満帆とはいかなかったと阿部さんは振り返ります。果たして、その理由とは?(Part.2へ続く)
(文/村田尚之 写真/村田尚之、マツダZoom-Zoomブログ)
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