【ランドローバー ディスカバリー試乗】伝統を継承しつつ大幅進化!高級SUVの新たな指標
&GP / 2017年9月3日 20時0分
【ランドローバー ディスカバリー試乗】伝統を継承しつつ大幅進化!高級SUVの新たな指標
ランドローバーの7名乗りSUV「ディスカバリー」がフルモデルチェンジ。5世代目へと進化を遂げました。
1989年登場の初代モデル以来受け継がれてきた、比類なき悪路走破性にさらに磨きを掛けてきたのはもちろん、新型では快適性や実用性、そして、高級感もさらに向上。屈指の高級SUVである同社の「レンジローバー」に迫るプレステージ性も手に入れたようです。
…と冷静さを保とうとする筆者ですが、実はディスカバリーにはちょっとした思い入れがあり、新型の成長ぶりが気になっていたのです。ディスカバリーといえばオフロードでこそその本領が…というご意見もあるかと思いますが、今回は市街地と高速道路でのテストドライブが叶いましたので、その印象をレポートいたします。
都内の駐車場で初対面となった5世代目の“ディスカバリー5”ですが、第一印象は「あか抜けて二枚目になったな」と、もうひとつ「ずいぶん大きくなったな」でした。新型ディスカバリーのボディサイズは、全長4970mm、全幅2000mm、全高1895mm。初代モデルはというと、全長4535mm、全幅1800mm、全高1950mmでしたから、高さを除いてふた回りほど大きくなった、といった感じでしょうか。
実は、かつて筆者の自宅には初代モデルがありました。当時も「大きいな」と思っていましたが、都市部でも取り回しに困るということはありませんでした。新型も、数値だけ見るとやや不安を覚えますが、果たしてドライバーズシートに収まると、なるほどやっぱり大丈夫。高いヒップポイントに対し、フロントとサイドのウインドウ下端が低く設定されており、見晴らしの良さとボディの見切りの良さから、切り返しを要するようなパーキングや狭い路地を抜けるような時でも、思いのほか扱いやすいのです。これらはもちろん、オフロードでの視界確保が目的ですが、ディスカバリー5にもそんな伝統がしっかりと継承されていることが分かり、まずはホッとひと安心です。
とはいえ、インテリアの質感については、現代のランドローバー流。ダッシュボードやインパネまわりの意匠は、モダンかつクリーンにまとめられています。もちろん、レンジローバーと比べると、素材やディテールの仕立てなどは一歩譲りますが、ウッドパネルやレザーもなかなか上質で、ラグジュアリーブランドのサルーンと比較しても、劣って見えるようなことはありません。
さて、すぐにでもドライブへと繰り出したいところですが、まずは日本仕様の現行ラインナップについてご紹介しましょう。
●HSE
日本向けモデルのベースグレード(イギリス本国のトリムラインにはS、SEという下位グレードも設定されている)。エンジンは、340馬力を発生するスーパーチャージャー付き3リッターV6ガソリンと、258馬力を発生するターボ付きの3リッターV6ディーゼル。価格は前者が779万円、後者が799万円。
●HSE Luxury
HSEの装備をさらに充実させた最上級グレード。開口部の大きなグラスルーフ“パノラミックルーフ”が標準装備されるほか、“ハンズフリーパワーテールゲート”や14スピーカーを搭載するMERIDIAN(メリディアン)製サラウンドシステムなどが備わる。エンジンラインナップはHSEと同じで、価格はガソリン車が881万円、ディーゼル車が901万円。
このほか、日本導入初期には特別仕様車の「ファーストエディション」が30台限定で販売されていました(完売)。
今回、ドライブへと連れ出したのはHSEのディーゼルモデルでしたが、まず驚いたのはその静粛性でした。エンジンが発する音のボリュームが小さく、さらに、車体の遮音もしっかりしており、アイドリング状態ではガソリン車なのかディーゼル車なのか、正直いって区別もつかないほど…、といえば、その静かさを想像できるかと思います。
しかし、アクセルを深く踏み込めば、かすかに軽快なビートを響かせながら、61.2kg-mという強大なトルクにより、2380kgのボディはあっという間に法定速度の上限に達します。変速ショックの少ない8速ATのサポートもあり、市街地でも高速道路でもその走りは実にスムーズ。その振る舞いは、さながら高級サルーンのよう、といっても過言ではないほどです。
そのパフォーマンスを短時間でも味わってしまえば「かつてのカジュアルさが懐かしい」と嘆く人も少なくなると思いますが、ドライビングポジションだけでなく、ディスカバリーらしさが残る部分もしっかりありました。
そのひとつが、新型ではオプション設定となるサードシートの存在でしょう。ボディサイズの大きさに比例し、室内空間はミニバンにも迫ろうとする余裕があり、2列目シートのレッグルームは954mm、3列目シートでも851mmというスペースが確保されています。SUVのサードシートというと“穴蔵のような空間”を想像されるかもしれませんが、それは間違い。身長180cmの筆者が座っても、前後左右だけでなく、天地方向にもゆとりがあり、息苦しさを感じることはありませんでした。シートアレンジを楽しめる3列シート車は「みんなでどこへ行こうかな」とワクワクしますし、もちろん実用性も高いので、お勧めオプションとして挙げておきたいと思います。
また、ラゲッジスペースもしっかりと確保されており、7名乗車時で258リッター、3列目シートを格納した5名乗車時で1137リッター、そして、後席をすべて畳むと2406リッターという容量を誇ります。
よくこれだけの空間を確保できたな、と思いますが、従来型がビルトインラダーフレーム式のシャーシであったのに対し、新型はアルミモノコック式を採用しており、スペース効率が向上したのもその理由のひとつといえるでしょう。また、アルミモノコック化により、大幅な軽量化も実現されています。
とはいえ、車重2380kgのヘビー級ですから、街中やワインディングでも“軽快な身のこなし”というわけにはいきませんが、電子制御エアサスペンションのスムーズな足さばきにより、ハンドリングや乗り心地でその重さを感じさせるシーンはそうそうありません。
ちなみに電子制御エアサスペンションは、轍(わだち)のある荒地を50~80km/hで走行する場合は車高を40mm上昇、50km/h以下でオフロードなどを走る際は最大115mmまで上昇させることができます。また、105km/h以下でオンロードを走る場合、自動的に13mm低下する仕組みとなっています。
その他、新型では路面や走行状況によってドライビングモードを切り替える“テレイン・レスポンス”の機能が強化された“テレイン・レスポンス2オート”も用意。「オート」モードでは走行状況を毎秒100回センシングし、エンジンやトランスミッション、サスペンションなどの設定が、自動で最適化されるようになりました。標準状態とオプションとを合わせれば、まさに思いつく限りの電子デバイスが用意されている、といっても過言ではありません。
新型ディスカバリーは個性的で高性能、そして、ライバルを引き離す高級感を兼備したSUVです。プレミアムブランドからも続々とニューモデルのリリースが続くSUVカテゴリーですが、「次はSUVにしようかな」という方は、愛車選びのベンチマークとして、ぜひ一度ディスカバリー5を試乗されることをお勧めします。
<SPECIFICATIONS>
☆HSE ディーゼル
ボディサイズ:L4970×W2000×H1895mm
車重:2380kg
駆動方式:4WD
エンジン:2992cc V型6気筒 ディーゼル ターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:258馬力/3750回転
最大トルク:61.2kg-m/1750~2250回転
価格:799万円
(文&写真/村田尚之)
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