【レンジローバー ヴェラール試乗】クールなルックスに秘めた、ファミリー譲りのタフな走破力
&GP / 2017年9月25日 21時0分
【レンジローバー ヴェラール試乗】クールなルックスに秘めた、ファミリー譲りのタフな走破力
Cool、cooler、coolest、さて、その次は…!?
ランドローバー「レンジローバー」シリーズに、モダンアートのようなスタイリッシュなデザインが自慢の、4番目のモデルが加わりました。その名も「ヴェラール」。ラテン語で「隠す」を意味する、初代レンジローバー開発時のコードネームを受け継ぎました。これまで「イヴォーク」に惹かれていたけれど「もう少し荷物が積めればなぁ…」と躊躇していた方々、注目ですよ!
ちょっと古いクルマ好きの中には、ランドローバー・レンジローバーというフレーズに違和感を覚える人がいるかもしれませんが、ランドローバーは今や、ジャガーとともに、インドはタタ社の傘下に入っています。レンジローバーは、ランドローバーというブランド内の、ひとつのファミリーと定義されているのです。
ランドローバーのモデルラインナップには、3つのファミリーがあって、タフでいかつい武闘派「ディフェンダー」(まもなく新型がリリースされるとささやかれています)、レジャーの足として活躍する実用的なSUV「ディスカバリー」、そして、豪華で贅沢な「レンジローバー」で構成されています。今回のヴェラールは、レンジローバーファミリーの一員にして、やや大きな「レンジローバー スポーツ」と、コンパクトなイヴォークの間に位置する、ミディアムSUVというわけです。
マーケティング的には、友邦ジャガーの「F-PACE」とかぶることになりますが…というか、ちょっと意地の悪いいい方をすると、ヴェラールはランドローバー版のF-PACEなんです。
具体的には、ジャガーの「XE」、「XF」、さらにF-PACEで使われた“D7Aプラットフォーム”が、ヴェラールでも活用されました。クルマの基礎部分が共通なんですね。加えて、ボディの80%以上にアルミニウムを用いたヴェラールのモノコックボディも、一連のジャガー車の技術を応用したもの…といった蘊蓄は、一般ユーザーには、あまり関係ないかもしれませんね!
ヴェラールのホイールベースは2875mm。実はコレ、F-PACEと同寸なのですが、スポーティで躍動的なジャガーと、“Reductionism(還元主義)”を謳う、つまり引き算の美学を体現したレンジローバーを並べ、“姉妹車”と見なす人はあまりいないのではないでしょうか。かつては“バッヂエンジニアリング”(バッヂ=エンブレムだけブランドごとに変えて別モデルとする)で悪名高かった英国メーカーですが、うーん、時代は変わったものです。技術の進歩は素晴らしい!?
さらに先走って、F-PACEとヴェラールの違いを説明しますと…。両車のホイールベースは同じですが、全長はヴェラールの方が80mmほど長い。その延長分は、ほぼラゲッジスペースの拡大に充てられていて、ヴェラールのラゲッジ容量は673L。F-PACEのそれより23Lも大きく、クラス最大級です(ちなみにイヴォークのそれは575L)。
また、いずれも4WDモデルですが、駆動力の基本的な前後配分が異なります。F-PACEはFR(後輪駆動)のスポーティなフィールを重視。ヴェラールは前:後=50:50をベースとし、4輪駆動らしい安定した走りを目指しています。さらに! オプションで、リアデフに電子制御式クラッチを装備できるのも、ヴェラールだけの強み。後輪左右に駆動力を能動的に振り分ける仕組みです。雪道や泥濘地など、路面が悪い場所で、ありがたみを感じるに違いありません。
ヴェラールのボディサイズは、全長4820×全幅1930×全高1685mm。この大きさは、ポルシェ「マカン」といい勝負で、また、クルマのキャラクターから、個性派SUVたるBMW「X4」と購入を迷う人が出るかもしれません。
ヴェラールの外観には、シンプルなスタンダードモデルの「Core」と、ボンネットにエアアウトレットを設け、バンパー下部にフィン状のアクセントパーツを配した「R-Dynamic」の2種類が提供されます。ややアグレッシブなルックスになる後者は、価格が50万円ほどお高くなります。
エンジンは3種類。2リッター直4ターボ、3リッターV6スーパーチャージド、さらに、2リッターディーゼルターボが用意されます。
目玉は、ランドローバー初搭載となる2リッター直4“INGENIUM”ターボで、吸気側に連続可変バルブリフト機構(CVVL)を備えた、最新のガソリンエンジンです。ヴェラールには、2種類のチューン(250馬力/300馬力)がカタログに載ります。
価格は、2リッターのガソリン車が、715万円〜1069万円(250馬力)と、778万円〜1132万円(300馬力)。V6モデルが、908万円〜1262万円(ファーストエディションは1526万円)。ディーゼル仕様は、699万円〜1053万円となります。
今回は、V6のヴィラールが用意された試乗会に参加できたので、報告します。試乗車は、R-Dynamic SE。車両本体価格は1129万円です。
フラッシュサーフェス化された…つまり、ボディのサイドパネルと“ツライチ”になったドアハンドルをプッシュして引き出し、ドアを開けます。ちなみに前後ドアはアルミ化“されていない”パーツで、スチール製。リアゲートにはコンポジット素材が使われます。
インパネまわりは、レンジローバーファミリーに共通する、モダン建築のような造形。シームレスにつなげられたふたつの10.2インチタッチスクリーンが装備され、物理的なスイッチ類は最小限に抑えられます(目に付くのは、ラジオのボリュームなど3つのダイヤルに過ぎません)。
試乗車は、レザーとバックスキン調のシート地を組み合わせたブラック内装でした。これはこれでクールかつ贅沢で素敵ですが、このクルマの場合、エボニー(アイボリー)やタン内装の方が“らしい”かもしれません。頻繁にアウトドアを楽しむ…というより、もっぱら街乗りに使うなら、Kvadrat(クヴァドラ)社とコラボしたテキスタイル内装も上品でいいですね。動物由来の素材を忌避したい向きにもオススメです。
3リッターV6エンジンは、スーパーチャージャーによる過給を得て380馬力/6500回転の最高出力と、45.9kg-m/3500回転の最大トルクと発生します。小排気量ターボやディーゼルエンジンが脚光を浴びる今日この頃ですが、余裕ある排気量の6気筒も、乗るといいものですね。
過給器が、エンジンのパワーを使うスーパーチャージャーということもあって、アウトプットの盛り上がりが素直でリニア。スロットルの開度に合わせて、力強く、嫌みのないパワーを発生します。ストップ&ゴーの多い街中でも、違和感なくドライブを楽しめます。
また3リッターモデルは、エアサスペンションを標準で装備するので、乗り心地は穏やか。路面の凹凸を鷹揚にこなす、スムーズな乗り心地です。
ハンサム&クールなヴェラールにも、もちろんランドローバー自慢の“テレインレスポンス”が採用されます。センターコンソールのダイヤルを操作することで「草/砂利/雪」、「泥/轍」、「砂地」など、路面状況に合わせて自動的に動力&シャーシ系をコントロールしてくれるシステムです。が、ヴェラールオーナーの場合、もっぱら「ECO」、「コンフォート」、「ダイナミック」の3つから選ぶことになるかもしれません。個人的には、3リッターV6の場合、コンフォートのままでなんら不満はありません。豪雪地帯でスキーを楽しむ趣味でも持たない限り、「一度もテレインレスポンスを使ったことがない」というオーナーの方が出現したとしても、驚かないかも。
でも、「いざ!」という時の備えがあるとないとでは大違い。「ヴェラールのキュッと上がったお尻は、荒れ地で急坂を行く際にデパーチャーアングルを取るための形状なんだよ」とか、“インテリジェント・ドライブライン・ダイナミクス(IDD)”を備えた4WDシステムの優秀性、ハンドル操作に集中したいシチュエーションでも一定の低速で自動で前進してくれる“オールテレイン・プログレスコントロール”、さらに、急な下り坂で一定速度を維持する“ヒルディセントコントロール”のこと、などなど。都会の夜景を眺めながら、同乗者に、タフで優しいランドローバーのDNAを語ることができるのが、ヴェラールオーナーの特権のひとつです。
一刻も早く最新モデルを手に入れたい向きには「ファーストエディション」が準備されています。3リッターV6モデルをベースに、スペシャルカラーが施され、22インチホイール、マトリックスレーザーLEDヘッドランプ、テレインレスポンス2オート、アクティビティキーなど、さまざまな装備を奢った限定車。2018年モデルのみの設定で、価格は1526万円です。
<SPECIFICATIONS>
☆R-Dynamic SE
ボディサイズ:L4820×W1930×H1685mm
車重:1884kg
駆動方式:4WD
エンジン:2995cc V型6気筒 DOHC+スーパーチャージャー
トランスミッション:8AT
最高出力:380馬力/6500回転
最大トルク:45.9kg-m/3500回転
価格:1129万円
(文/ダン・アオキ 写真/ダン・アオキ、ジャガー・ランドローバー・ジャパン)
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