きれいな靴はビジネスの基本!専門店で靴磨きのコツを教えてもらった
&GP / 2017年10月17日 18時0分
きれいな靴はビジネスの基本!専門店で靴磨きのコツを教えてもらった
「靴を見ればその人が分かる」とはよく言いますが、靴がきれいだと印象が良く、仕事も出来そうに見えますよね。そして、きれいな靴は気分を上げてくれるし、履いている人を素敵な場所へ連れて行ってくれそうな気もします。そんな靴を目指すには、定期的に靴を磨いてメンテナンスすることが必要。ということで、靴磨きの専門店で靴磨きの基本を教えてもらいました。
■靴磨きの前半は靴を長く履くためのお手入れ
伺ったのは、東京・青山にある靴磨き&修理専門店「ブリフトアッシュ青山」。今回は特別に、シニアクラス職人の北見さんに靴磨きの全ての工程を見せていただきました。これが靴を磨く前の状態です。どう変わるのでしょうか。楽しみです♪
▲つま先は傷が少し目立ちます
ブリフトアッシュ青山では、全部で「15の工程」で靴磨きを行っています。まずは靴紐を外すところからスタート。
1.紐を外す
「紐は全部外さず、一番下は残し、靴の中へ入れます。タンがくっついているタイプの靴は、紐を全部外してしまうと一番下の穴に紐が通しにくいので。そして、アルコールを付けたコットンで、靴の内側、特につま先の内側のホコリをきれいにしていきます」
2.ヤスリでコバを整える
▲新品の靴以外はぐるっと一周コバにヤスリをかけます
「次にコバ(靴底の横の部分)をヤスリで整えます。ここの部分は靴から出ている部分なので削れたり色がはげたりしやすい。この部分も硬い革なので、水を少しつけてヤスリをかけてなめらかにします」
3.馬毛ブラシでホコリを落とす
▲馬毛は毛足が長くて弾き飛ばす力が強いので、ホコリを落とす時に最適
4.以前に塗ったクリームやワックスを落とす
▲クリーナーを使ってすっぴんの状態に
「靴用のクリーナーと布を使って、以前に塗ったクリームやワックスを落とし、一度完全にツヤがなくなる状態にします。使用する布は専用のものもありますが、Tシャツやシーツなど、どんな布でもいいです」
5.コバ用のインクでコバに色を入れる
▲黒、こげ茶、茶色などのコバインクの中から靴に合うものを選んで使用します
6.乳化性のクリームで補色し、革に栄養を与える
▲クリームは全体にまんべんなく。一度に全て塗ってしまうのではなく、クリームを少し手にとってのばし…を繰り返しながら塗っていきます
「革に栄養を与えてくれる乳化性のクリームを指で馴染ませます。指で塗った方が体温でクリームがなめらかになり、馴染みやすくなります。このクリームは色がついているので、靴の色に合わせて選びます。革に栄養を与えつつ、色を入れてくれるので、履き続けた靴が補色されて色に深みが出てきます」
7.豚毛ブラシでクリームを浸透させる
▲クリームを革の中に浸透させたいのでかなり力強くゴシゴシとこすります。ここで力いっぱいブラシを入れているだけでツヤが出てきます
「工程6ではまだクリームをのせただけの状態なので、豚毛ブラシでしっかりブラッシングしてクリームを中に浸透させていきます。靴磨きではこの作業が一番大切。栄養をしっかり入れて革を柔らかくさせておくことが、靴を長持ちさせる秘訣ですので」
8.コバの隙間に色を入れる
▲コバとアッパーの間に乳化性のクリームで色を入れます。コバの隙間も補色
9.余分なクリームを布で拭き取る
▲表面に残ったクリームを空拭きします
「クリーナーの時に使った布で、表面に残ったクリームを落とします。表面に多少はクリームが残っているので、それをきれいに拭き取ります」
ここまでがお手入れ。ここから先がワックスを使っての仕上げです。
■鏡面仕上げでつま先とかかとをピカピカに
今の状態でも、乳化性のクリームで色がのっているので十分きれいです。普段のメンテナンスはここまでで問題ないそう。物が映るくらい鏡のようにピカピカにする鏡面仕上げにしたい人はここからが本番です。
10.ワックスをつま先とかかとに馴染ませる
▲ワックスはロウなので、体温で伸びやすくなります。馴染ませるために指で塗ります
「靴の色に合わせて選んだワックスを、指でつま先とかかとにしっかり塗っていきます。鏡面をほどこしたいところ、つま先とかかとにしっかりと。つま先とかかとは歩いても曲がらないので、シワができません。ですので、ここはワックスをたくさんのせても問題ないんです」
11.水を使ってワックスをなめらかにする
▲ワックスと水で繰り返し馴染ませて鏡面をつくります
「塗ったワックスを、水を潤滑剤にして円を描くように指を動かしながらなめらかにしていきます。このとき使う布は、綿100%のネル生地。つま先とかかとを集中的にやりつつ、全体もワックスと水で仕上げていきます。ひたすら水とワックスの繰り返し。ここが全体の中で一番時間がかかります」
▲つま先が眩しい! ワックスはのせればのせるだけ光ります
12.履きジワのワックスを散らす
▲コバブラシや豚毛ブラシで履きジワのワックスを散らします
「全体にワックスをのせると履きジワにワックスが残ってしまうのできれいにします。鏡面仕上げのつま先とかかとには当たらないように気をつけて」
13.ヤギ毛ブラシで甲やサイドを整える
▲ヤギ毛ブラシで鏡面以外の部分を整えます
「とても毛が柔らかいヤギ毛ブラシを使って、甲やサイドの部分を整えます。鏡面仕上げ以外の部分を、少し水をつけて仕上げていきます」
14.水で鏡面を仕上げる
▲鏡面仕上げの最後は上下に直線的に指を動かします
「布のきれいな面を使って、鏡面にしたところを水で整えます。ワックスを馴染ませている時は円を描くように指を動かしていましたが、ここは上下に直線的に。これでよりムラをなくし、光の粒を揃えてあげます」
15.ソールオイルを塗る
▲いよいよ仕上げ。靴紐を元に戻し、ソール用のオイルを塗っていきます
「最後にソール用のオイルをソールのレザーの部分に塗ります。レザーソールの箇所のみ。修理をしていてソールがラバーの場合は、この工程は必要ありません」
▲靴磨き終了! つま先なんてピカピカすぎてほんと鏡。顔も写っちゃいます
靴の状態によって変わりますが、靴磨きには通常45分~1時間程度かかるそう。それにしてもピカピカに仕上がりました。おしゃれをして素敵な場所に出かけたくなりますね。これは確かに履くとテンションが上がる!
■道具さえ揃えれば自宅でも靴磨きは可能
――靴磨きを一通り見せていただき、ありがとうございました。どのくらいの頻度で靴は磨いたらいいのでしょうか?
「8~10回履いたら一回、クリーナーとクリームでお手入れをするのがベストだと思います。同じ靴を毎日履くわけではないので、大体一週間に一回履けば二カ月ごとにお手入れ、というかんじですね。プロにまかせた方が安心ですが、道具さえ揃えれば自分でもできます。鏡面仕上げは難しいですが、お手入れまででも十分。クリームで補色できるので、色も補えます」
▲自宅で靴の手入れをするなら揃えておきたい、靴磨きに使う道具一式。すべてこちらの店で購入可能です
▲ブラシ類一式。左から、コバブラシ(2592円)、馬毛ブラシ(1万800円)、豚毛ブラシ(8640円)、ヤギ毛ブラシ(1万2960円)
▲磨きに使用する布も購入可能。綿100%の汚れ落とし用の白い布(10枚入り・648円)、綿100%ネル生地の鏡面磨き用の赤い布(4枚入り・978円)。こだわりたい人はどうぞ
▲左から時計回りに、乳化性クリーム(75ml・3240円)、クリーナー(100ml・2160円)、ソールオイル(100ml・2700円)、ハンドラップ(2592円)、ソールオイル用スポンジ(430円)、KIWIのワックス(40g・740円)
「靴磨きはこだわる方はこだわるので、アイテムを揃えている人は多いですよ。義務でやるというより、楽しみとしてやっている方が多いです」
なんと! 靴がきれいになるうえに、楽しいなんて最高ですね。自分で磨くと、きれいになっていく様がより実感できて、靴にも愛着が湧きそう。年に一度、半年に一度などはプロにお願いして、普段のメンテナンスは自分でするというのも手ですね。
今回伺った「ブリフトアッシュ青山」は、靴をきれいに仕上げるだけでなく、長く愛用できるようお手入れにも力を入れている、靴の魅力を最大限に引き出してくれるお店です。バーのようなカウンターで目の前で靴を輝かせてくれるカウンタースタイル(4320円*シニアクラス職人の北見さんにお願いする場合は+1080円)と、宅配でのデリバリースタイル(3日目以降は3560円、一週間以降は3132円)を行っています。
▲クラシカルで重厚感のある店内
――お客さまはやはり男性が多いのですか?
「9割は男性のお客さまです。色落ちしたり味が出たりと、ものが変化していく様子を楽しむのは男性の方が多いですからね。靴も変化するものなので」
営業で身だしなみに気を遣っている人や、靴にこだわりを持っている人が多いそうですが、大切な商談やプレゼンの前などに来るお客さまもいるそうです。
▲シニアクラス職人の北見さん。ストライプの蝶ネクタイがオシャレ!
――靴がきれいだとテンションが上がりますよね。
「履いている人にとっては、きれいな靴だと気持ちがいいです。気分が上がりますよね。靴にとっては長持ちするというメリットがあります」
なるほど。靴がきれいなことは、本人にも靴にとっても良いことなんですね。まさに、靴磨きをすることはいいことづくし!
何か幸せを運んできてくれそうな、縁起の良いきれいな靴。大切な仕事の前など、「ここぞ!」というときは気合を入れてピカピカの靴で挑みたいものです。
>> ブリフトアッシュ青山
(取材・文/坂田圭永)
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