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【レクサス LS試乗】Fスポーツの走りはGTカー級!ただ高級車としては課題も:岡崎五朗の眼

&GP / 2017年12月25日 11時0分

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【レクサス LS試乗】Fスポーツの走りはGTカー級!ただ高級車としては課題も:岡崎五朗の眼

先頃、フルモデルチェンジを果たしたレクサスブランドのフラッグシップサルーン「LS」。

僕はこれまで、米・サンフランシスコをはじめ、数回に渡って新型LSをテストドライブしてきたが、先日ようやく“日本の公道”でのテストドライブが叶った。

今回は、新しいLSの印象はもちろん、試乗を通じて見えてきた、レクサスの次なる課題について報告したい。

■旗艦モデルLSが示したレクサスの新たな方向性

まずは、そのたたずまいからして、5世代目のLSは大きく変化した。ひと言でいえば“エモーショナル”なクルマになったのだ。

国内では、トヨタ「セルシオ」を名乗った初代から3世代目、そして、レクサスブランドとなった先代の4世代目まで、LSは一貫してフォーマルな高級セダンというキャラクターを守り続けてきた。

しかし、今回のモデルチェンジでは、そこからオーナードライバー向けのクルマへと、LSは大きく舵を切ったのだ。クーペのごとく車高の低い、躍動感あふれるデザインを採用しただけでなく、走りにおいてもスポーティさを前面に押し出すなど、明らかな方向転換を図っている。

その要因は、いわゆる“セダン需要の衰退”だ。実際、従来のLSでは、ユーザーの平均年齢が上がっており、新たに若い層の顧客を迎え入れる必要があった。そこで新型は、クーペのような美しさや、スポーティな走りといった要素を採り入れる手に打って出た。

エクステリアは、ライバルであるメルセデス・ベンツ「Sクラス」やBMW「7シリーズ」、アウディ「A8」と比べても、ダントツにアグレッシブだと思う。そして、そのたたずまいからは「思い切ったことをやらなければ」というレクサス経営陣と開発陣の気概も伝わってくる。

ドイツのプレミアムブランド御三家はというと、各々、年間180万台を超える生産台数を誇る。一方、トヨタのプレミアムブランドを標榜するレクサスは、単体で見るとその規模は決して大きくない。そこで「既存のユーザーに嫌われたら…」という、しがらみを断ち切り、新しいLSは大いなるチャレンジに出たわけだ。

ここ数年、レクサスの経営陣と開発陣は、「レクサスとはどんなクルマなのか?」という自問自答を繰り返してきた。そして彼らの中で「レクサスは単にトヨタ車の上位モデルではないはずだ」、「トヨタとレクサスが目指す方向は同じではいけないはずだ」といった意識が強く芽生え始めていることは、僕も肌で感じていた。

LSに先駆け、同じプラットフォームを採用するスポーティな2ドアクーペ「LC」がデビューしているが、実はこれは、LSのデビューに向けた布石でもあった。すなわち「レクサスはエモーショナルを重視するブランドである」ということのアピールだ。これまでのトヨタといえば、壊れないとかリーズナブルといった印象が強く、レクサスが母体と全く異なるブランドとして独立するためには、トヨタとの明確な差別化が必要だったのだ。

では、LSは実際に運転してみるとどうなのか? その前に、LSのラインナップについて簡単に説明しておこう。

パワーユニットは大きく分けてふたつで、3.5リッターの自然吸気エンジン+モーターのハイブリッドモデルと、3.5リッターツインターボを用意。駆動方式は、それぞれにFR(後輪駆動)と4WDが設定される。各仕様で細かいグレード分けがなされるが、高級サルーンとしての位置づけを明確にした標準系モデルのほかに、スポーティな味つけの「Fスポーツ」も用意されている。

今回、最初にステアリングを握ったのは、ハイブリッドのFスポーツ(4WD)。この仕様は、掲げられた製品コンセプトのとおり、しっかりとしたドライバーズカーに仕上がっていた。先代モデルまでの静かでソフトというイメージから一変。さながらGTカーのように、しっかり、かつフラットな乗り味で、ワインディングロードでも走りを存分に楽しめるほど。大柄な高級車なのに、これほど思いどおりに操れる、スポーティに走れる、というのは、新鮮な感覚だった。

そして新型LSは、パワートレーンや仕様の違いにより、キャラクターが明確に異なるのも特徴だ。

個人的にお勧めなのはやはりFスポーツで、特に新設計の3.5リッターターボエンジンを積むモデルは、回転フィールが軽快で切れ味がよく、スポーティに仕立てられている。中でもFRモデルは、4WS(4輪操舵)や“可変スタビライザー”のサポートもあり、ワインディングロードを速いペースで飛ばしても、しっかりと地に足が着いた走りを披露する。

一方、4WD仕様は、4WSなどを備えたFR仕様ほどスポーティではないものの、鈍重さは一切感じることもなく、シチュエーションを問わず程良く楽しいドライビングを堪能できる。

■LSはレクサスブランドの新たな象徴と成り得るか?

スポーティなプレミアムサルーンを目指したLSにとって、その領域、個性を格段に強調したFスポーツは、実に魅力的だ。ただし、標準系モデルについてはどうか? と問われれば、いくつか気になる点があるのも事実。

シリーズ全体をドライバーズカーとして仕立てた結果、標準系モデルもそうした味つけに引っ張られた印象だ。Fスポーツであれば「これくらいエンジン音が聞こえた方が気分も高まる」、「足まわりがしっかりしている」と捉えることができるが、標準系モデルを高級サルーンとして評価するならば「もう少し静粛性を高めるべきでは?」、「乗り心地も良くするべきでは?」と感じるシーンが少なからずあった。

また、トヨタとレクサスにとって技術的な象徴であるハイブリッドについては、そろそろモーターやバッテリーの高出力化を検討する時期に来ていると思う。というのも、通常の加速時でもエンジンが始動し、回転数も思いのほか上がるため、キャビン内に侵入してくるエンジン音が高級サルーンとしては大きめなのだ。それは、モーターとバッテリーのパフォーマンスに余裕がないことの現れなのだが、中でも、高級車としてショーファードリブンも想定される標準系モデルにとっては、もう一歩改善して欲しい。

いささか厳しい意見と思われるかもしれないが、プレミアムブランドを目指すには、独自のキャラクターとなる“何か”が必要で、LSにはまだそれが、足りていないように思える。

メルセデス・ベンツやBMWには、近年、希薄になってきたとはいえ、歴史に裏打ちされた独特のキャラクターがある。そして、後発たるアウディも、多彩な先進デバイスの搭載などによって、独自の個性を打ち出しつつある。

では、レクサスはどうか?

かつてレクサスは、初代LS(=セルシオ)で圧倒的な静粛性を実現し、世界の高級車メーカーを驚かせた。もちろん、新型のFスポーツが提案するスッキリとした上質さや、スポーティさはひとつの個性となり得るし、ハンドリングや操縦性という部分においては十分な驚きがあった。

一方、標準系モデルでは、ハイブリッドシステムのさらなる進化・洗練によって無音領域を増やすなど、初代のような比類なき静粛性を追求して欲しい。LSはレクサスのフラッグシップサルーンだけに、ライバルに対してどこか圧倒的な部分が欲しいのだ。

クルマと同時にブランドも進化する。その中で、どのようなオンリーワンの個性を見出していくのか? レクサス、そしてLSの今後の課題は、まさにそこにあると思う。

(文/岡崎五朗 写真/村田尚之)

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