【スズキ スペーシア試乗】軽とは思えない驚きの広さ!いい意味での“道具感”も魅力
&GP / 2018年2月17日 11時0分
【スズキ スペーシア試乗】軽とは思えない驚きの広さ!いい意味での“道具感”も魅力
スズキのスーパーハイトワゴン「スペーシア」と「スペーシア カスタム」が、フルモデルチェンジを果たしました!
スズキ自慢の新プラットフォーム“ハーテクト”を用いて、広かった室内がさらに広くなり、リアシートのアレンジを始め、使い勝手が向上。危険を予測して安全運転をサポートする、各種先進機能も充実しています。
新しいスペーシアは、全車660ccの自然吸気エンジン+CVTのマイルドハイブリッドシステムを採用し、価格は133万3800円〜。アグレッシブな顔つきのスペーシア カスタムは、上記の駆動系に加え、660ccターボを搭載したマイルドハイブリッド仕様もラインナップします。NAモデルは157万6800円〜、ターボタイプは178万7400円〜となります。
■カスタム仕様のフロントマスクからは技術陣の気迫を感じる
現在、軽自動車マーケットは、ホンダ「N-BOX」やダイハツ「タント」といった“スーパーハイトワゴン”が席巻しています。そんな中、先代のスペーシアは、堅調な売れ行きを示しながら、なかなかブレークできませんでした。
「やはりスズキのユーザーは『ワゴンR』を求めるからですか?」とスズキのスタッフに聞くと、「最近では、ワゴンRの神通力も弱ってきてまして…」と謙遜される。続けて、先代のスペーシアは「どうも女性向けに振りすぎていたようで…」と分析していました。旧型は、ちょっとフェミニンに過ぎた、ということですね。
そこで新型スペーシアでは“ワクワク感をカタチに”することにこだわったそう。デザインモチーフは、なんとスーツケース。あちらこちらに出掛けて、家族や仲間たちと「楽しい思い出をたくさんつくって欲しい」との願いが込められています。
具体的には、フロントガラスを立てて前に出し、ショルダーライン(窓の下端)を上げてボディの大きさや厚みを強調。前後のサイドウインドウを囲むドアパネル(窓枠)は、スーツケースの取っ手をイメージしているのだとか。そして、クルマの内外に使われるビード(細長い窪み)が、旅行用スーツケースの表面を連想させます。なるほど、日常の生活感とは少し距離を置いた、いい意味での“道具感”がよく出ている。最近のスズキデザイン、なかなか冴えてます!
試乗したのは、スペーシアの上級グレード「ハイブリッドX」(146万8800円)。新型スペーシアは、先代よりもホイールベース(前後車輪間)がさらに35mm長くなり2460mmに。その結果、前後の乗員間距離が10mm広がっています。また、車高がプラス50mmとなった恩恵で、室内高は35mm天地が広がりました。こうしたミリ単位の努力が「とても軽とは思えない!」、驚きの室内空間を実現しているのです。
車内が物理的に広くなったおかげで、前後乗員のヒップポイントもそれぞれ30mmと15mm上げられました。前席では、加えてAピラー(フロントガラスの左右枠)を細くしたり、ドアミラーの取り付け位置を下げたりして、前方、側方の視界を良くしています。高めの着座位置で、全方位的に見晴らしがいい! 運転が楽しくなりますね。
また、上級グレードのXに限ってではありますが、ステアリングホイールがチルト(上下に調整)できたり、シートリフターで座面の上下を変更できたりします。体格に合わせて好みのドライビングポジションを取りやすくなるわけで、運転好きなユーザーは、それだけでもXを選びたくなるでしょう。
「仲間でワイワイ」のコンセプトどおり、新型スペーシアは後席への配慮も怠りません。前後席間の天井に“スリムサーキュレーター”と呼ばれる一種の扇風機を設け、車内の空気を循環させる工夫が採られました。スペーシアのようなスーパーハイトワゴンは、その広さが災いし、車内の温度が不均等になりがち。リアシートの人は、夏場は暑い、冬は寒い、と不満に感じることが多いのですが、このデバイスで大いに改善されるはずです。
後席のアレンジが簡単になったこともトピックです。左右分割式で、先代比50mmの、210mmも前後にスライドできるようになりました。そしていうまでもなく、背もたれは可倒式。肩口のレバーや床面のストラップを引くことで、荷室側からラゲッジスペースの容量を調整できる、つまり、リアシートをアレンジできるようになりました。大きな荷物や自転車を積む際に、いちいちボディ側面にまわってスライドドアを開け、後席を畳む必要がなくなったわけです。ありがたい。
さて、ステアリングホイールを握って走り始めます。最高出力52馬力、最大トルク6.1kg-mの660ccエンジンで870kgのボディを引っ張るので、余裕綽々(しゃくしゃく)…とはいきませんが、まずは必要十分な動力性能を発揮します。
ガチのライバルたるN-BOXに対し、新型スペーシアは全車マイルドハイブリッドシステムを搭載しているのが特徴。減速エネルギーをリチウムイオンバッテリーに回収し、発電機とモーターを兼ねる“ISG”で、クルマの発進と加速をサポートします(モーターのみの発進も可能)。簡素だけれど実用的なシステムですね。
カタログ燃費は、28.2km/L(XのFFモデル/GのFFモデルは30.0km/L)と記載されます。一方、N-BOXはハイブリッドシステムを持たず、カタログ燃費は27.0km/L。セールスの現場で舌戦が繰り広げられそうです。
今回のスペーシアから、出力アップしたISGを活かすべく、パワーモードが設けられました。個人的には、常時パワーモードで走りたい感じです。14インチのホイールを履いたアシまわりは、背高ボディをしっかり支えるためか少々硬め。家族や仲間を乗せ、かつ遊びのギアを満載することを想定しているのかもしれません。
スペーシアのアグレッシブ&スポーティ版たるスペーシア カスタムにも乗ることができました。こちらはターボモデルで、最高出力64馬力、最大トルク10.0kg-m。当然ながら、走りは力強い。気になる燃費は25.6km/Lと、奇しくもN-BOXのターボモデルと同じ数値です。
スペーシア カスタムは、スズキ車として初めて、ターボエンジンとISGを組み合わせたマイルドハイブリッドモデルであり、そのパワフルな走りに注意が向きがちですが、一方、遮音材もスペーシアより多く使っているので、実は室内の静粛性も上がっています。
ブラックパールのカラーパネルが使われ、メッキ加飾が施されたインテリア。本革巻きのステアリングホイールやシフトノブ。そして、レザー調のシート表皮と、スペーシアより豪華に演出されたスペーシア カスタムですが、走行中のノイズ低減にも配慮されているのです。
それにしても、スペーシア カスタムの顔つきは迫力ありますね! ぶっちゃけ“軽自動車版『アルファード』”といいたくなります!? なんというか「なんとしてもスペーシアをブレークさせるのだ!」というエンジニアの人たちの気迫が伝わってきます。
ちなみに、スペーシアよりシャコタンに見えるスペーシア カスタムですが、150mmの最低地上高は変わりません。派手めのサイドスカートと、1インチアップの15インチホイールの迫力が、視覚的に利いているのです。
新しくなったスペーシアシリーズは、安全技術たる“スズキ・セーフティ・サポート”を全車に標準装備(マイナス5万9400円で、衝突被害軽減ブレーキのレスオプションも可)。単眼カメラとレーザーレーダーで前方を監視するほか、超音波で後方の障害物を検知する機能も与えられました。前後とも、自動ブレーキが働くようになったのです。
もう1点。軽らしからぬ(!?)贅沢装備として、フロントガラスに速度や瞬間燃費、エネルギーフロー等の情報を投影する“ヘッドアップディスプレイ”が、セットオプションで用意されました(全方位モニター用カメラパッケージ)。ダッシュボード上面から生える透明パネルに、ではなく、前方2.4m付近で焦点が合うようにフロントガラスに投影されるので、瞳の焦点調整機能が弱ったオトナ世代には特にありがたい機能で、安全運転にも寄与しそうです。
より広く、さらに便利に、そして安全面でもレベルアップした新型スペーシア&スペーシア カスタム。ユーザーにとっては、うれしい選択肢がまたひとつ増えました。
<SPECIFICATIONS>
☆スペーシア ハイブリッドX
(2トーンパッケージ装着車)
ボディサイズ:L3395×W1475×H1800mm
車重:880kg
駆動方式:FF
エンジン:658cc 直列3気筒 DOHC
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:52馬力/6500回転
エンジン最大トルク:6.1kg-m/4000回転
モーター最高出力:3.1馬力/1000回転
モーター最大トルク:5.1kg-m/100回転
価格:146万8800円
<SPECIFICATIONS>
☆スペーシア カスタム ハイブリッドXSターボ
ボディサイズ:L3395×W1475×H1785mm
車重:900kg
駆動方式:FF
エンジン:658cc 直列3気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:64馬力/6000回転
エンジン最大トルク:10.0kg-m/3000回転
モーター最高出力:3.1馬力/1000回転
モーター最大トルク:5.1kg-m/100回転
価格:178万7400円
(文&写真/ダン・アオキ)
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