【ヒットの予感(1/3)】「なぜルンバは成功したのか?」アイロボットCEO コリン・アングル
&GP / 2015年10月13日 18時0分
【ヒットの予感(1/3)】「なぜルンバは成功したのか?」アイロボットCEO コリン・アングル
2015年10月に「ルンバ980」を発表し、新たなロボット掃除機の最先端な形を世界に示したアイロボットのCEOコリン・アングル氏。果たして、世界のロボット市場を牽引する男は、どのようなことを学び、どのような経緯でロボットに身を捧げ、そして世界を変えてきたのか? ここではその半生に迫ってみた。
ーー幼少期はどういう子だったのでしょうか?
コリン・アングル(コリン):僕は自分で言うのもなんだけど、ものすごく好奇心が強い子どもでした。どんな物でも、それがどういう仕組みになっているか、なんでも知りたがる子でした。3歳の頃の話を、私の母がよくします。突然家のトイレが壊れたことがありました。修理を頼むため配管工に連絡しなきゃと母が怒っていた時、当時の私が「自分が直してみたい」と言って、ちょうどその時にトイレの仕組み関する本があったので、母がその本を私に読み聞かせ、トイレを直したということがありました。
ーー3歳で家のトイレを修理したんですか? それはすごいですね!
コリン:実はそれだけではなく、とにかく暇さえあればいろんなものを作ってみたい子だったんです。例えば、フィッシャーテクニック(ドイツのブロックキット)やレゴブロックを作るのは当たり前。たまたま台所を散らかしていた時、母に「片付けなさい」と言われ、それを片付けるためのクレーンを作ったり。2日くらいかけて、ロープや滑車を使って、台所から部屋まで運ぶような仕組みを作りました。
ーーいつからロボットを作りたいと思い始めたのでしょうか?
コリン:MIT(マサチューセッツ工科大学)への進学を決めた時に、ものづくりを学びたいと思っていたのですが、それがロボットであるとは思っていなかったんです。MITを選んだ理由は単純に、“一番クールなものを作るやり方をきっと教えてもらえる”と思ったからなんです。
学生時代のコリン・アングル氏
ーーそれがロボットだと思ったのはいつ頃でしょう?
コリン:3年生の夏が終わった後に気づきが訪れました。夏の間、仕事をしようと思って面接に行ったのです。それがたまたまMITにあるラボ(研究所)でした。応募枠が3人しかない中、80人が希望していました。集団面接の質問はとてもシンプルで、紙を一枚渡され「これまで何を作りましたか?」というものでした。
ーーそれで今まで作ってきたものを紙に書いていったんですね。
コリン:5分~10分くらいで、応募者の半分は書き終えて、教室を出て行きました。20分経った頃には、ほとんどの人は書き終えて、自分以外部屋にはいなくなりました。45分後、私はまだ自分の作ったものを書き続けていたんです。その時に気づいたんです。自分はロボットを作るべく、生まれてきた人間かなって。その時のラボの教授が、後のアイロボットの共同創業者になるロドニー・ブルックスs教授だったのです。
ーーそのラボではどういうことをしていたのでしょうか?
コリン:学部生の論文のプロジェクトが、私の最初の担当プロジェクトでした。歩行ロボットを作るというテーマの論文です。当時、ロボットを歩かせるというのは、とても難しいことだったのです。
ーーいわゆる二足歩行ですか?
コリン:いや、6足です。当時、歩行ロボットを作るためには、スーパーコンピュータがいるというのが常識でした。でも、ロドニーと私が協力して研究しているなか、ロドニーが「昆虫は歩くためにスーパーコンピュータは必要としていないよね」と言ったのです。
知能を作るためには何か別の方法があるに違いないということに気づきました。そして1991年、行動制御を元に最初のロボット「Genghis(ジンギス)」を作ったのです。当時、8bitのマイクロプロセッサーを使ったんですよ。今から考えると信じられませんよね。それで歩行ロボットを実際に作ったものですから。
「ジンギス」は当然ながら、とても有名なロボットになりました。1号機はその後、スミソニアン博物館に収められ、後のソニーが生み出した「AIBO」にインスピレーションを与えたと言われています。
ーー起業したのは、その頃ですか?
コリン:はい。MITの修士号を獲得した後、私とロドニーで、「もっと実用的なロボットを作るために一緒に仕事をしよう」ということになり、1990年にアイロボット社を起業したのです。ジンギスが出来るより前でした。
(取材・文/滝田勝紀、ポートレート撮影/下城英悟)
【第2部に続く】
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