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波乱の予感!2018-2019日本カー・オブ・ザ・イヤー候補車の本当の実力①:岡崎五朗の眼

&GP / 2018年12月2日 19時0分

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波乱の予感!2018-2019日本カー・オブ・ザ・イヤー候補車の本当の実力①:岡崎五朗の眼

いよいよ今度の金曜日、2018年12月7日に、2018-2019日本カー・オブ・ザ・イヤー(以下、COTY)が決定します。

ノミネート車種は、2017年11月1日から2018年10月31日までに発表または発売され、年間の販売台数が500台以上見込まれる全27台。そのうち、選考委員の投票で選ばれた“10ベストカー”が最終選考へと勝ち残りました。

とはいえ今回は、7月の発売以来、大ヒットを記録し、大本命と目されていたスズキの「ジムニー」&「ジムニーシエラ」が、完成検査に関わる不適切事案を理由に、ノミネート前に辞退を表明。またスバルも、同様の理由から「フォレスター」の“10ベストカー”受賞を辞退することになり、最終選考会は残念ながら、全9台での争いとなりました。

まさに、波乱の様相を呈している今回のCOTYですが、やはり気になるのは、2018-2019“10ベストカー”の本当の実力です。そこで、来たる最終選考会を前に、選考委員を務めるモータージャーナリスト・岡崎五朗氏に、それぞれの魅力などについて改めて解説してもらいました。

前編となる今回は、日本車5台プラス、残念ながら“10ベストカー”受賞を辞退したフォレスターの真価と、現状のCOTYの課題についての考察です(※掲載順は2018-2019COTYのノミネート番号順)。

>>前回の模様はコチラから
ついに決定!2017-2018 日本カー・オブ・ザ・イヤー。大賞候補車10台の実力を斬る:岡崎五朗の眼

■果たしてCOTY辞退は誰のため?

【はじめに】
スズキとスバルの辞退というニュースが大きく報じられた2018-2019のCOTY。個人的には、両社の辞退は本当にユーザーのためになるのか? という疑問を抱き続けている。

世間を騒がせた責任から、スズキとスバルはCOTYのノミネートや受賞を辞退した。その一方で、全国のディーラーでは「これはいいクルマですよ」などと売り文句を並べ、ジムニーやフォレスターを売り続けている。もしCOTYを辞退するくらい反省しているのであれば、それらのクルマを売ること自体が、問題といえるのではないだろうか?

確かに、完成検査に関わる不適切事案は許されるものではない。しかし、問題を起こしたメーカーのクルマであっても、専門家がきちんと評価し、COTYに選ばれたならば、購入を検討している人たちも安心して買うことができるはず。また、すでに両社のクルマを買った人たちも、自分たちの選択は間違いではなかったと確信を持てることだろう。

COTY本来の目的とは、そういうクルマ選びの指標を打ち出すことにあるはずだ。だがいつの間にか、COTYは“業界のお祭り”という立ち位置になっていた。メーカーのため、開発者のため、メディアのため、という意味合いが色濃くなり、残念ながら一部では、“10ベストカー”には10台のクルマではなく、10のメーカーもしくはインポーターに残って欲しい、という忖度が働くようなことも。また“業界のお祭り”という位置づけだけに、メーカーやインポーターの間で「不祥事を起こした時に浮かれたことはしたくない」という心理が働くのも当然のことだ。

とはいえ、専門家が確固たる評価を下すCOTYは、ユーザーに対してしっかりと、クルマの魅力をアピールできる絶好の機会でもあるはず。そう捉えれば、COTYにノミネートされ、もしも各賞を受賞したとしても、それはメーカーにとって決して不謹慎なことではないと思う。

もちろん今回の問題は、メーカーだけの責任ではない。COTYは、その年の10台を選び、その中からベストの1台を選ぶという、本来の意味での“いいクルマ”選びに立ち返るべきだ。今回の波乱を踏まえ、われわれ選考委員やCOTYの運営に携わる実行委員会は、ユーザーにおすすめできるクルマを選ぶ、クルマ選びの指標を打ち出す、といったCOTY本来の目的に、今こそ立ち返らなければならない。

* * *

スバル「フォレスター」

“10ベストカー”に選出されながら、受賞辞退という道を選んだスバル。そのノミネートカーであった新型フォレスターは、確かに先代よりも進化したクルマといえる。例えば、インテリアのデザインや仕上げは格段にレベルアップしているし、コーナリング性能は高くなり、乗り心地も快適になった。だがそのすべてが、個人的には想定の範囲内。あくまで正常進化のレベルにとどまっていて、さほどインパクトを感じられなかったのも事実である。

とはいえ新型フォレスターは、ものすごく真面目に作られた、いかにもスバルらしいクルマともいえる。控えめなルックスは、派手さよりもドライバーの視界確保を優先した結果だし、もっと大きなタイヤを履いた方がカッコ良く見えるにも関わらず、あえてタイヤ径を小さくすることで最小回転半径を抑えてきた。また、リアのコンビネーションランプをできるだけ細長い形状にすることで、荷室開口部の幅を可能な限り広げている。そういった努力や気配りは、確かにインパクトこそないものの、何年か使っていくうちにきっと「ああ、いいクルマだな」というドライバーの実感に繋がっていくはずだ。

そういう点で新型フォレスターは、後方側面の視界を割り切ってまでカッコ良さを追求したトヨタ「C-HR」とは真逆の存在といえる。C-HRのようなクルマ作りも個人的にはありだと思うし、おそらく買った瞬間の喜びは、C-HRの方がフォレスターよりも大きいだろう。しかし、仮に5年乗った後の満足度は、きっとフォレスターの方が上回るのではないだろうか。

ビジュアルインパクトには欠けるし、スペック面での飛び道具もないが、とても真面目に、丁寧に作り込まれた新型フォレスター。そういった、魅力をじわじわと感じられるクルマ作りを徹底したスバルの開発姿勢、設計思想は、とても高く評価できる。それだけに、今回の“10ベストカー”の受賞辞退は、非常に残念でならない。

 

トヨタ「カローラスポーツ」

個人的には、カローラスポーツと「クラウン」が、今回のCOTYでどのくらい上位にランクインするのか、非常に注目している。カローラとクラウンはトヨタを代表する車種というだけでなく、まさに日本を代表するクルマ。その2台がともに、同じ年のCOTYで“10ベストカー”に選出されたことは、とても意義のあることだ。

1980年代後半から'90年代の始めにかけて、日本の自動車メーカーは世界のライバルに追いつきかけていた。しかし、バブル経済の崩壊で各社の経営は傾き、“失われた10年”という言葉に象徴されるように、いいクルマを作ることよりもコストカットへの注力に追われた。そこに追い打ちを掛けたのが、2008年のリーマンショック。その結果、日本車は、壊れない、広い、安い、燃費がいい、といったことだけしか取り柄のない存在になってしまったのである。

そうした悪循環からようやく脱却し、高く評価できるクルマを、業界トップを走るトヨタがカタチにした。カローラとクラウンという日本を代表する2台を、世界のライバルに対し、再び追いつけ追い越せというレベルにまで高めてきたことは、ようやく日本車もここまで来たか、と感慨深いものがある。

カローラスポーツは、何しろボディがしっかりしている。そしてサスペンションはきれいに動き、ハンドリングも気持ちいいと感じられる正確さ、リニアリティを実現。ドライバーがハンドルを切れば、切った分だけきれいに曲がってくれるから、走らせていてとても気持ちがいい。そういった走りの基本を、開発陣は相当真剣に煮詰めてきた。また、個人的にこれまで嫌いだった、“キーンルック”と呼ばれる個性的なフロントマスクを起点とするトヨタ車のデザインも、新しいカローラスポーツではなかなか板についていて、カッコいいな、と思えるレベルに仕上がっている。

もちろん、壊れない、広い、安い、燃費がいいといったクルマに慣らされた目から見れば、カローラスポーツの室内やラゲッジスペースは狭く、エンジンやトランスミッションといったパワートレーンも、インパクトが希薄だ。だが、1.2リッターのターボエンジンはすごく気持ち良く走れるし、CVT嫌いの僕でも「これならいいね」と思えるほど、トランスミッションはドライバーの意思にレスポンスよく反応してくれる。その走りの出来栄えは、例えば、フォルクスワーゲン「ゴルフ」の購入を検討中の人に対し「比較対象としてこちらにも乗ってみたら?」と提案できるだけのレベルにある。

中には「これはカローラではなく、ヨーロッパ市場向けに作られていた『オーリス』の後継モデルでしょ?」といった声もある。もちろん、実際はその通りなのだが、日本市場において、オーリスのように知名度の低い、海外市場向けに作ったクルマを細々と売り続けるのではなく、日本を代表するカローラのブランド名を掲げて堂々と売ることは、とても意味のあることだと思う。しかも今回のモデルから、トヨタはすべてのグローバル市場において、オーリスの名を捨て、カローラへとネーミング統一を図っている。こうした動きを見ても「カローラをゴルフの真のライバル車にするんだ」という、トヨタの並々ならぬ意気込みが感じられる。1966年のブランド誕生から52年目にして、カローラは真の意味で、世界と渡り合えるベーシックカーに成長したのである。

 

トヨタ「クラウン」

新しいクラウンは、本当に走りのいいクルマだ。開発責任者の秋山 晃さんによると、新型は「走行中にドライバーの視線を動かさないような挙動を目指した」という。そうしたクルマの動きは、これまで多くの日本車が目指しながらも、なかなか実現できずにいたもの。だが新型クラウンは、それをかなり高いレベルで実現している。

初めて乗った時の試乗コースには、凹凸が激しく、かなりバンピーな路面もあった。しかし、そんな条件の悪い路面でも、新型クラウンはフラットな姿勢を保ちながら走り抜けたのだ。“ゼロクラウン”と呼ばれた12代目から、クラウンは走りに関し、それなりに注力して開発を行ってきたが、新型の走りはこれまでのクラウンの枠を飛び出し、欧州のライバル車と十分渡り合えるだけのレベルに達している。

先代までのクラウンは、操縦安定性をとるなら「アスリート」、乗り心地を重視するなら「ロイヤルサルーン」といった具合に、グレードによっていずれかの要素を諦めなければならず、ユーザーに二者択一を強いるクルマだった。しかし、トヨタが掲げる“クルマづくりや仕事の進め方の新たな方針”である“TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)”に基づき開発された新型は、走りと乗り心地の双方を高い次元で両立。どのグレードを選んでも、走り、快適性ともに満足できるクルマに仕上がっている。

また、見えない部分にまでしっかりコストをかけて作られている点も、新型クラウンの魅力といえる。例えば、ラゲッジスペースのフロアカーペットをはいだ時にしか見えないような部分も、新型クラウンはきちんとパーツ類が成型されていて、仕上げが美しい。その理由を秋山さんに尋ねると「整備士の人たちがタイヤ交換などをする際、『やはりクラウンは違うな』と思って欲しかったから」との答えが返ってきた。そうした、普段、オーナーの目に触れない部分まで、新型は手を抜かずに作り込まれているのだ。

それに比べると先代のクラウンは、ラゲッジスペースに敷かれるカーペットが薄くペラペラで、それをめくると、パネルのすき間を埋めるシーリング材などがむき出し。高級車とはいいつつも、そういった見えない部分ではしっかりコストダウンが図られていた。表面的にはなんとか取りつくろってはいたものの、実際は、思いのほかコスト要求の厳しいクルマであることを、端々で実感させられるクルマだったのだ。

その点、TNGAの採用などで投下コストの効率化が図られた新型は、高級車として然るべき部分にしっかりとコストが掛けられていて、“アラ”が目につくことが少なくなった。そういう意味で新型クラウンは、真の意味で日本を代表する高級車になったといえるだろう。

■三菱自動車4年ぶりの新型車も“10ベストカー”に選出

ホンダ「クラリティPHEV」

“スリーインワンコンセプト”を掲げ、ひとつのモデルでPHEV(プラグインハイブリッド車)、FCEV(燃料電池車)、ピュアEV(電気自動車)という3種類のパワーユニットを搭載できるようにしたクラリティ。ホンダが今後、パワーユニットの電動化を推進していくに当たって、まさに象徴となるであろうクルマである。実際に乗ってみてもよく仕上がっていて、静粛性は高く、乗り心地もいい。またインテリアデザインも、非常にセンス良くまとめられている。

そんなクラリティPHEVの最大の特徴は、国内外のメーカーが市販しているPHEVの中で、バッテリー+モーターだけで走れる距離が一番長いこと。とはいえ、どのくらいの距離をエンジンに頼らず走れるか、というのは、モーターの出力とバッテリー容量に左右されるものであり、バッテリー+モーターで114.6kmも走れるという“EV走行領域”の上限が、果たしてクラリティPHEVのキラーポイントになるかといわれれば、個人的にはさほど訴求力を持たないと考える。近距離はバッテリー+モーターだけで走れて、長距離移動ではエンジンで発電しながら走れるということがPHEVのメリットだとするならば、EV走行領域が広いというのは、さほど誇るべきポイントではないと思うのだ。

例えば、1日の通勤で走る距離を50kmと仮定すれば、EV走行領域が114.6kmに達するクラリティPHEVの場合、丸2日間、充電なしに走れる計算になる。しかしそれを実現するために、多くのバッテリーを積む必要があり、その分、価格は高くなり、重くなってしまった。そうした事実を考えると、クラリティPHEVのアピールポイントを、手放しに褒める気にはなれないのだ。

また、クラリティが掲げるスリーインワンコンセプトのうち、FCEVはまだ一般に市販されておらず、リース販売に限られているし、北米で展開されるピュアEVも、大容量バッテリーを搭載するスペースがないのか、航続距離は130kmにも満たない。つまり、PHEVを除く残りのふたつは、まだ“ものになっていない”と捉えるべきだろう。とはいえ、スリーインワンコンセプトの発想自体は、高く評価できる。今後の進化や発展に期待したいところだ。

 

マツダ「CX-8」

CX-8は、大きくて重く、3列シートを配置するSUVであるにもかかわらず、マツダがこれまで追い求めてきた“人馬一体”のコンセプトや、走りのスムーズなつながりなどを見事に具現している。ブレーキを踏んで、ハンドルを切って、それを戻して、加速して…という走りの一連の動きがきれいに繋がっていて、運転すると走りの上質感や気持ち良さを鮮明に味わえる。

一方、上級グレードにはブラウンやホワイトのレザーをあしらうなど、センスよくまとめられたインテリアでは、3列目のシートにも大人がきちんと座れる空間を確保した点を、高く評価したい。単に「CX-5」のボディを延長し、「近距離であればなんとか座れます」といったレベルの空間でお茶を濁すことなく、北米市場などに展開される大柄なSUV「CX-9」をベースとし、そのシャーシとボディを適度に詰めることで、大人がしっかり座れる3列目シートを成立させている。

フロントマスクを始めとする“魂動デザイン”のテイストには、確かに最近、ちょっと飽きを感じ始めたのも事実である。しかしCX-8は、デザイン面で新たな提案を打ち出したクルマというよりも、3列シートSUVという制約あるパッケージングの中に、これまでのマツダ車らしさをいかに盛り込むか、ということにチャレンジしたクルマだといえる。

3列目のシートにもしっかりと人を座らせるには、3列目席のヘッドクリアランスを確保する必要があり、それを重視し過ぎると、一般的にはルーフラインが真っ直ぐになってスタイリッシュなルックスがスポイルされてしまう。その点マツダは、ルーフラインこそ真っ直ぐな線をキープしながら、その下にあるウインドウのグラフィックを工夫してスタイリッシュに見せるなど、さまざまなアイデアを駆使することで、CX-8をマツダ車らしく見せることに成功している。

 

三菱「エクリプス クロス」

三菱自動車にとって実に4年ぶりのニューモデルとなったエクリプス クロス。デザインは二の次で良好な視界を確保するなど、実直なクルマ作りを目指したスバルのフォレスター。一方、後方側面の視界を割り切ってまでカッコ良さを追求したトヨタのC-HR。そんなライバルたちに対し、リアゲートにダブルウインドウを採用したり、各ピラー類の位置や太さ、角度などを入念に計算したりすることで、エクリプス クロスはデザインと視界=実用性の両方を追い求めた。そういう点においては、真面目一辺倒を貫いたスバルのフォレスターに対し、もっと前へ進もうという意欲が感じられる。

走りにおけるハイライトは、なんといっても同社独自の4WDシステム“S-AWC(スーパー・オール・ホイール・コントロール)”の採用だろう。三菱自動車は「ジープ」に始まり、RVブームの火つけ役となった「パジェロ」、走行安定性とハンドリング性能を両立した「ギャラン VR-4」、WRC(世界ラリー選手権)を制覇した「ランサー エボリューション」と、長年、4駆システムの開発に注力。エクリプス クロスにも、そんな同社の経験とノウハウがしっかりと息づいている。

S-AWCは路面状況などから判断し、必要に応じて多板クラッチを介してリアタイヤへ駆動力を伝える電子制御4WDを基本とし、それをABSや、滑りやすい路面での不安定な動きや車輪のスリップを防ぐ“ASC(アクティブ・スタビリティ・コントロール)”、左右のタイヤの駆動力や制動力をコントロールする“AYC(アクティブ・ヨー・コントロール)”とともに統合制御している。

そのメリットは、滑りやすい路面において顕著に現れる。特に雪道などでは運転しやすく、滑りやすいコーナーでも外側へクルマが膨らまずによく曲がり、オンザレールをキープしてくれる。また、そうした際も電子制御の作動や介入がとても自然で、いかにも縁の下の力持ちといった印象が強いのだ。

このように、エクリプス クロスは非常に完成度の高いクルマではあるものの、今後、ライバルに対して明確なアドバンテージを打ち出すには、いかにして三菱自動車らしさを盛り込んでいくかが課題となりそうだ。“ランエボ”はすでにこの世には存在せず、パジェロも存在感を失ってしまった今、三菱自動車らしさの演出に繋がる何かを見つけ出せるのか? 新たな提案に期待したいところだ。<後編に続く

(文責/&GP編集部)

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