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【検証2015年の注目車】ホンダ「S660」が軽自動車規格で登場した理由:岡崎五朗の眼

&GP / 2015年12月24日 19時30分

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【検証2015年の注目車】ホンダ「S660」が軽自動車規格で登場した理由:岡崎五朗の眼

2015年のクルマ界において、高い注目を集めた1台がホンダの「S660」です。

ホンダにとって「ビート」以来となる本格“軽”スポーツカー。納車まで1年待ちを記録し、今もクルマ好きたちの関心を集める“2015年の話題の1台”は、なぜ軽自動車規格でデビューしたのでしょうか? 年間250台近い最新車種を試乗する人気ジャーナリスト、岡崎五朗さんが分析します。

 ■軽自動車規格で登場したメリットは明白!

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2015年の日本カー・オブ・ザ・イヤーで、マツダ「ロードスター」に次ぐ得点を獲得したホンダ「S660」。わざわざカー・オブ・ザ・イヤーの話を引き合いに出さなくても、その魅力はすでに多くの人に伝わっているはずだ。

デザインは最近のホンダ車の中では出色の出来栄えだし、2シーターミッドシップというマニアが泣いて喜ぶレイアウトもいい。そして実際に走らせれば、いい意味で予想を裏切ってくれる。「これが軽だなんて信じられない…」と。

かつて日本は、ソニーの「ウォークマン」に代表される、小さくて精密なモノづくりによって世界を席巻した。これほど小さなボディに、ミッドシップ2シーターオープンスポーツというスーパーカー的要素をてんこ盛りにしたS660は、日本のモノづくりの持ち味を大いに活かした商品といっていい。

しかしその一方で「軽自動車でなくてもよかった」、「軽自動車の枠にこだわらなかった方がより魅力的なクルマになったのでは?」という声があるのも事実。

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実際、S660には軽自動車であるがゆえのネガがある。ひとつはエンジンの出力が軽の自主規制である64馬力に抑えられていること。排気量が660ccであってもターボエンジンなら簡単にもっと高出力を得られる。それどころか、制御で抑え込まないと64馬力以上出てしまうため、4500回転を超えた辺りからターボのブースト圧をあえて落としている。

ホンダは「誰もが扱える適度な出力」といっているし、それも一理あるが、明らかに頭打ちするパワー特性は、あまりスポーツカー的ではない。普段使いでは力強くて気持ちいいのだが、いざ鞭を入れてトップエンドまで引っ張っていった時の伸びきり感に物足りなさを感じるのだ。64馬力に縛られた軽でなければ、この辺りのフィーリングは俄然よくなっただろう。

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トランクスペースと呼べる空間が実質ないのも、厳しい部分だ。ひとりで乗っている時なら助手席やその足元に荷物を置けるが、ふたりだともうお手上げ。ふたりでは1泊旅行はおろか、買い物にいっても大きなものは買えない。ボディがひと回り大きければ、小さいながらもトランクスペースを確保できたのに…と思わずにはいられない。

そういったネガを承知で、なぜホンダはS660を軽自動車規格で作ってきたのか。最大の理由は“軽の恩典”だ。日本市場の約40%を軽自動車が占めている最大の理由は、維持費の安さ。たとえネガがあろうとも、維持費が安い方が需要を見込めるとホンダは考えた。そしてその読みは見事的中。セカンドカー需要の掘り起こしを含め、最長1年待ちとなるほどの受注台数を獲得した。

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もうひとつ「なるほどな」と思うことを開発者から聞いた。もし軽自動車規格でなかったら、「海外でも販売しよう」「そのためにはもっとパワーが欲しい」「タイヤはもっと太く」「ボディサイズも大きく」「大きく重くなったからもっとパワーを!」となり、S660とは似ても似つかないクルマになっていただろう、と。

 

たしかに、S660の魅力はミニマルなところ。軽自動車規格と割り切ったからこそ、世界に類をみないプリミティブなスポーツカーに仕上がった。そう考えると、維持費の安さ以上に、軽自動車であることの価値は大きいのかもしれない。

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ただし僕は、荷室スペースは割り切れたとしても、パワー特性にはやはり改善を望みたい。軽自動車枠に収めなくてもいいから、今の排気量とボディサイズと重量のまま、できれば価格も上げずに、80〜90馬力くらいの、トップエンドまで気持ちよく吹け上がるエンジンを搭載した、例えば「S800」のようなモデルが出たら、これはもう、そうとう魅力的だと思うのである。

<SPECIFICATIONS>
☆β(MT仕様)
ボディサイズ:L3395×W1475×H1180mm
車重:830kg
駆動方式:MR
エンジン:658cc 直列3気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6速MT
最高出力:64馬力/6000回転
最大トルク:10.6kg-m/2600回転
価格:198万円

(写真/&GP編集部)

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