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【マツダ新世代4WD試乗】燃費でFF車を超える!?新発想4駆の実力を試す!

&GP / 2016年1月12日 18時0分

【マツダ新世代4WD試乗】燃費でFF車を超える!?新発想4駆の実力を試す!

【マツダ新世代4WD試乗】燃費でFF車を超える!?新発想4駆の実力を試す!

今年の冬は雪の少ない状況が続いていましたが、ようやくここへきて、積雪のニュースが聞こえてくるようになりましたね。

そんな積雪路で威力を発揮してくれるのが、4輪駆動車。とはいえ、従来の4WD車には、2WD車に比べて車重がかさむ、燃費が悪い、そして、高性能な4WD機構を搭載するモデルは価格が高い、といったデメリットがありました。

そんな不満を新発想で解消した4輪駆動(AWD)システムが、マツダの“i-ACTIVE AWD”。その実力を、北海道の公道やテストコースでチェックしてきましたので、ご報告しましょう。

 ■タイヤが滑る“ロス”を徹底排除して燃費向上につなげる

駐車場までのアプローチには、膝下くらいの高さまで雪が積もっていました。おっかなびっくり、赤いマツダ「CX-3」で乗り入れると、拍子抜けするほどスルスルと進み、除雪された場所まであっさり到達したのでした…。

北海道の旭川からクルマで1時間半。上川郡剣淵町にあるマツダのテストコースを中心に、4輪駆動(AWD)システムを搭載したマツダ車の雪上試乗会が開催されました。「CX-5」「アテンザ」「アクセラ」「デミオ」、そしてCX-3に共通のAWDシステムが採用され、i-ACTIVE AWDという総称が与えられたのを機に、「大いにアピールしていこう!」というわけです。

i-ACTIVE AWDの特徴は、何はともあれ、日常の使い勝手向上に特化しているところ。“ヨンク”といえば道なき道を行く悪路走破性の高さや、持てるパワーを余さず路面にたたきつけて激走するスポーツ性の高さも魅力ですが、i-ACTIVE AWDはずっと地に足がついた(!?)生活密着型。足元の悪い雪国でも、他の地域のマツダユーザーと同様、Zoom-Zoomしてもらうのを第一の目的としています。「走る歓びと優れた環境、安全性能をすべてのお客様に提供する」とマツダは主張します。

ところがマツダのAWD開発担当者は、もっと大きな野望を胸に抱いているようで…。

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AWD担当エンジニアは、i-ACTIVE AWD搭載モデルの実用燃費を「2輪駆動モデルよりも良くしたい」と考えています。4輪駆動モデルには、その潜在能力がある。なぜなら、効率よくパワーを路面に伝えることができるから。

雪道で考えてみましょう。FF=前輪駆動車の場合、雪上でフロントタイヤが空転すると、せっかくの駆動力をロスしてしまいます。AWD車なら、例え前輪が滑ってもサッと後輪で駆動力を伝えられるので、そのまま前へ進めます。パワーを無駄にすることがない。AWDシステムは、「雪中でクルマが立ち往生した時に脱出するため」だけの機構ではないのです。

普通の道でも、程度の差こそあれ、実はさまざまな場面で駆動輪は滑ってパワーをロスしています。雪道ほど派手ではないけれど、チリ程度のパワーロスでも積もり積もれば大きな山となる、はず。赤信号のたびにエンジンを止めるアイドリングストップ機能のように、前輪のわずかな滑りもAWDシステムがこまめに拾っていけば、燃費向上に貢献するはずです。

とはいえ、今のところカタログ燃費では、4輪駆動モデルは2輪駆動モデルの後塵を拝しています。駆動力をリアタイヤへ伝える間に多少なりともエネルギーの損失が起こり、また力を伝えるシステムそのものの重量がかさむためです。

そこでマツダのi-ACTIVE AWDでは、日常的に公道を走る上で必要な強度を研究し、システムそのものの小型軽量化に励んでいます。通常は前輪でクルマを走らせ、必要なタイミングで後輪が助けに入る、というコンセプト。ですから、「オフロードで岩がゴツゴツ当たっても大丈夫なタフさ」とか「ハイパワーを受け続けても音を上げない耐久性」といった過剰な要素は、ひとまず脇に置いています。

具体的には、駆動力を伝えるギヤを小型化、ギヤ類を収めるケースを薄くし、プロペラシャフトを軽量化。CX-3の場合で、AWDシステム全体の質量は約46kgだとか。2輪駆動モデルと燃費競争をする上で、AWD車には小柄な女性ひとりがハンディとして乗っている、と考えればいいでしょう。

幸いにも(?)雪に恵まれたマツダ剣淵試験場では、i-ACTIVE AWDのありがたさを体験できるさまざまなシーンを体験できました。

例えば、一旦停止して左右を確認し、再度、発進するようなシーン。動画を見てもらえれば一目瞭然ですが、2輪駆動のCX-5(ブルー)は前輪が空転してなかなか前に進めません。

しかし、i-ACTIVE AWDを搭載するAWDモデル(レッド)は苦もなくスムーズに発進していきます。i-ACTIVE AWDの有無による違いは明白ですね。

このほか印象的だったのは、パイロンの間を左右に走るスラローム。前輪駆動のアクセラでは、クルマが滑ってなかなか思った方向に走らせることができませんが、i-ACTIVE AWD搭載のアクセラなら、ステアリングを切った方向へ無理なくクルマが向かってくれます。

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ひと昔前のヨンクは「曲がらない」のがいわば常識でしたが、今回のアクセラの場合、むしろAWD車の方がよく曲がる。AWDなら、フロント2輪が持つ摩擦力を使い果たしそうになっても、リアタイヤの摩擦力を追加して使うことができるので、クルマのコントロールを維持できるのです(もちろん、無茶な走りをすれば、その限りではありませんが)。

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では、i-ACTIVE AWDは、どうやって駆動力を後輪へ伝えているのでしょうか? システムのキモは“電子制御アクティブトルクコントロールカップリングユニット”という長い名前のデバイスです。これは、いわゆる電子制御式の多板クラッチで、クラッチの圧着する強さを調整し、後輪への駆動力をコントロールします。

「いつ」「どれだけ」駆動力を分配するか? は、外気温、アクセルペダルの位置、4輪各輪の速度、ワイパー作動の有無など、27のパラメーターを使い、1秒間に200回の演算をして決めます。人が感じないようなかすかなスリップを検知して、次の瞬間にスリップ…するのを防ぐ「先読み」の機能まで盛り込まれます。ドライバーに「ヒヤリとさせない」ことを目標にしているのです。

面白いのは、AWD制御のためのデータに、乱れた挙動を正すための“DSCシステム”で得た情報を活用していること。i-ACTIVE AWD専用のセンサーは搭載されていないのだとか。「素材をどう料理するか?」は、シェフ(=エンジニア)次第ということです。

クルマの挙動の制御にもDSCシステムのそれが使われ、例えば左右どちらかの車輪が空転した場合、自動的に滑った車輪のブレーキをかけてパワーが逃げるのを防ぎます。複雑で重いLSD(リミテッド・スリップ・デフ)は搭載しません。雪国の日常使いには、それで十分なのです。

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冒頭に述べたとおり、CX-5、アテンザ、アクセラ、デミオ、そしてCX-3は、エンジンのアウトプットに応じて、トランスファーとデファレンシャルの大小こそあるものの、基本的に同じi-ACTIVE AWDが使われます。

スバルのように、車種ごとの性格に合わせて異なる4WDシステムを与えるという方法も、学術的な(!?)興味が湧きますが、マツダの割り切ったシンプルなアプローチも、ひとつの見識だと思います。

安全性が高く、頼りになって、なおかつ燃費にも優れるAWD。もはや2輪駆動モデルを選ぶ理由はなくなった! …そういう時代がやって来るのでありましょうか。i-ACTIVE AWDの今後に期待です!

(文&写真/ダン・アオキ)

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