【趣味のためのクルマ選び・VWパサート ヴァリアント】洒落っ気のない“真面目さ”こそ最大の長所
&GP / 2016年1月20日 18時0分
【趣味のためのクルマ選び・VWパサート ヴァリアント】洒落っ気のない“真面目さ”こそ最大の長所
RR(リアエンジン/リアドライブ)方式の「ビートル」を販売の主力としていたフォルクスワーゲン社が、最初に製品化したFF(フロントエンジン/フロントドライブ)モデルはなんでしょう?
多くの方は「そりゃ『ゴルフ』でしょ」と答えるかもしれませんが、ざんねーん! 答えは「パサート」なのでした。アウディ「80」のコンポーネンツを使った初代パサートは、ゴルフより1年早く、1973年に発表されているんです。
ただし、初代のパサートは、80同様、エンジンは進行方向に向かって“縦”に置かれていました。ゴルフは初代から、より一般的な“エンジン横置き”のレイアウトを採っています。自分のクルマのエンジンレイアウトを気にする人は、あまりいないかもしれませんが、実はクルマの基本的な性格を決定付ける重要なポイントなんです。
誕生以来、パサートはゴルフの上級車種でありながら、どうも「優秀過ぎる弟の陰に隠れた兄」の役割を負わされている気がしてなりません。アウディとのつながりが深くなればエンジンは縦に置かれ、「ゴルフとの部品共用化を進めよう」となると、エンジンは横置きになる…。
8世代目に当たる現行のパサートは、エンジンは横置きにレイアウトします。6世代目からレイアウトは変わっていないので、もう安心…と思いきや、かつてプラットフォームを共有したこともあるアウディ「A4」は、先頃、本国で発表された次世代モデルもエンジン縦置きのレイアウトを堅持するのだとか…。まだまだ予断は許しません。将来のパサートの立ち位置や、いかに!? 興味は尽きません。
■ゴルフのワゴンと比べて荷室は45リッター増
日本で売られるパサートは、セダン、ヴァリアントと呼ばれるワゴンともに、パワーユニットはいまのところ、1.4リッターのターボエンジン(150馬力/25.5kg-m)と7速のデュアルクラッチ式ATの組み合わせのみ。駆動方式は、もちろんFFです。
今回は次期機材車両の候補として、ヴァリアントのTSIハイラインに乗ってみました。グレードは、ボトムレンジから、トレンドライン→コンフォートライン→ハイライン→Rラインと設定されています。Rラインは、よりスポーティに装ったモデルなので、ハイラインはノーマル外観のフル装備モデルといっていいでしょう。
ルックスを引き締めるティンテッドガラス、クロームのモールディングで外観を飾り、内装にはナパレザーが使用されます。パワーテールゲート、リアビューカメラ、ナビゲーションシステムなどを標準で備えるのも、下位グレートとの違い。価格は433万9900円です。
現行パサートは、セダン、ヴァリアントとも、直線基調のキリッ!としたデザインがいいですね。飾り気のない機能美を具現しています。セアト、アウディ、そしてフォルクスワーゲンと、行く先々でクルマを飛躍的にカッコ良くさせた鬼才デザイナー、ワルター・デ・シルバが監修しただけのことはあります(残念ながら、すでにフォルクスワーゲン社を退社なさってしまいましたが…)。
室内も機能優先のイメージが貫かれていて、車内空間の四隅が角張っています。洒落っ気はないけれど、隅々まで無駄なくスペースを使っていることを視覚的にアピールします。ハイラインならではの、ダークブラウンの内装材とウッドパネルの落ち着いた組み合わせがいいですね。前席はもとより、後席も広々として、大人5人乗車での移動が現実的です。
で、気になる荷室も見てみましょう。容量は650リッター。「ゴルフ ヴァリアント」のそれを45リッター上回ります。実寸したところ、最大幅は142cm、奥行き110cm、パーセルシェルフ(荷室カバー)までの高さは48cm。幅と奥行きでゴルフ ヴァリアントをしのぎます。
試しに「ゴルフ オールトラック」の時と同じ荷物を積んでみたところ、なるほど、余裕がありますね! 撮影機材のみならず、乗員の手荷物も無理なくラゲッジスペースに載せられそうです。
パサート ヴァリアントのボディサイズは、全長4775×全幅1830×全高1410mm。スバルの「レヴォーグ」より半まわりほど大きなボディを、1.4リッターターボで動かすところが現代的ですね。
この直噴ターボは、なんと気筒休止システムを採用していて、エンジンへの負荷が低い時には、4気筒のうち2気筒への燃料噴射を中止します。高速道路を使っての移動が多い人には恩恵が大きそう。アイドリングストップ機能と併せ、カタログ燃費は20.4km/Lと記載されます。
グレードを問わず、衝突の危険を感じた時には、最終的に自動ブレーキをかける“プリクラッシュブレーキシステム”、車線の逸脱を警告する“レーンキープアシストシステム”、死角に入った他車を警告する“レーンチェンジアシストシステム”などの安全装備が充実しているのも、パサート ヴァリアントの美点。前走車との距離を保ちつつ追従する“アダプティブクルーズコントロール”も、全グレードに搭載されます。
室内空間を大きく取れるFFレイアウトの基本コンセプトに対し、忠実に、かつ堅実につくられたパサート ヴァリアント。何はともあれ“真面目さ”が取り柄のモデルだけに、件の排ガス不正事件の影響も大きいのではないでしょうか。けっして、このまま埋もれてしまわないで欲しい。機材車両としては、それくらい秀作なのです!
<SPECIFICATIONS>
☆ハイライン
ボディサイズ:L4775×W1830×H1510mm
車重:1510kg
駆動方式:FF
エンジン:1394cc 直列4気筒 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:150馬力/5000〜6000回転
最大トルク:25.5kg-m/1500〜3500回転
価格:433万9900円
(文&写真/ダン・アオキ)
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