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混戦必至!2019-2020日本カー・オブ・ザ・イヤー候補車の気になる実力①:岡崎五朗の眼

&GP / 2019年12月2日 19時0分

混戦必至!2019-2020日本カー・オブ・ザ・イヤー候補車の気になる実力①:岡崎五朗の眼

混戦必至!2019-2020日本カー・オブ・ザ・イヤー候補車の気になる実力①:岡崎五朗の眼

いよいよ今度の金曜日、2019年12月6日に、2019-2020日本カー・オブ・ザ・イヤー(以下、COTY)が決定します。

今回のノミネート車種は、2018年11月1日から2019年10月31日までに発表または発売され、年間500台以上の販売が見込まれる乗用車全35台。そのうち、選考委員の投票で選ばれた上位10台の“10ベストカー”が、最終選考へと勝ち残りました。

気になる2019-2020“10ベストカー”の実力とは? 目前に迫った最終選考を前に、選考委員を務めるモータージャーナリスト・岡崎五朗氏が、それぞれの魅力や気になる点について3夜連続で解説します(※掲載順は2019-2020COTYのノミネート番号順)。

>>前回の模様はコチラから
波乱の予感!2018-2019日本カー・オブ・ザ・イヤー候補車の本当の実力①:岡崎五朗の眼

■軽自動車や定番コンパクトカーの実力が大幅アップ!

ダイハツ「タント/タントカスタム」

ダイハツの「タント」は、助手席側中央のピラーをドアにビルトインし、前後ドアが大きく開くようにした“ミラクルオープンドア”が特徴だ。この構造を始め、大きく開くリアゲート、面積の広いフロントウインドウ、前方視界確保のために細くしたフロントピラーなど、徹底した使い勝手の追求により、タントのボディはいわば“穴だらけ”の状態。走りを左右するボディ剛性の面では、不利な設計であることは否めない。にもかかわらず、新型タントは軽自動車として上質な乗り味を実現している。その要因はやはり、ダイハツの新しい車両開発・生産手法“DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・ アーキテクチャー)”によって生まれた新プラットフォームの恩恵だろう。近年の軽自動車の進化を、まざまざと見せつけてくれる。

抜群の使い勝手や上質な走りなど、多くの魅力を備える一方、デザインはもうちょっと頑張って欲しかった。他のダイハツ車にもいえることだが、デザインの方向性に一貫性が感じられないのだ。ライバルメーカーが手掛けるスズキ「ワゴンR」やホンダ「N-BOX」は、全体のフォルムやヘッドライトの形状など、モデルチェンジを繰り返しても継承されるアイデンティティが随所に見られるが、ダイハツ車のデザインは丸いものが四角くなったり、ライト周りの意匠が大きく変わったりと、世代ごとに大きく変化する。新型タントのエクステリアでも「これぞタントだ」というアイデンティティは見つけにくい。

さらにインテリア、特にメーター周りのデザインは、個人的には最悪だと思う。速度やシフトポジションの表示部、車線逸脱などのワーニング部、そして、それらの周囲を飾るデコレーション部のすべてが白く点灯するが、すべての明るさ、色味が異なっているのだ。これはデザインの常識からすれば、あり得ないこと。デザイナーの目が行き届いていない、なんてことはないはずだから、メーターユニットを完成させるに当たって、それぞれのパーツを安いところから買い集めてきた、コスト重視の弊害なのだろう。こうしたデザイン面での洗練度に欠ける点が、新型タントにおける一番の弱点だと思う。

近年、“スーパーハイトワゴン”と呼ばれる背の高いモデルが軽自動車の人気を牽引しているが、走行安定性などの面で不利に働き、しかも、車体が大きい分、価格も高いこのカテゴリーが人気なのはなぜだろう? リアの左右にスライドドアを採用することも人気の秘密だが、やはり一番の購入動機は、サイズに制約のある軽自動車であっても、乗員の頭上空間が抜群に広いことで狭さを感じさせないことだと思う。実際、新型タントの車内も、狭いスペースに押し込まれているといったネガな印象が一切ない。というよりも、フロントシートに座った際の視界の良さ、“パノラマ感”は圧倒的で、まるで小田急ロマンスカーの最前席に座っているかのように開放的だ。こうしたクルマ作りのアプローチは、今後、他カテゴリーの軽自動車にも生かされるのではないだろうか。

 

トヨタ「カローラ/カローラツーリング」

2018-2019年シーズンの10ベストカーに選出された「カローラスポーツ」と同様、「あのカローラがここまで変わった!」というのは、自動車業界にとって大きなトピックだ。

1966年のデビュー以来、’91年登場の7代目まで、カローラというクルマはモデルチェンジのたびにどんどん進化していった。だが、バブル崩壊後に開発された8代目以降、カローラは“デフレ圧力”にさらされ、どんどん安いクルマへと成り下がっていく。その最たるものが、先代モデルだ。プラットフォームは格下の「ヴィッツ」と共用。安い、壊れないといったこと以外、取り柄のないクルマになってしまった。旅先で借りるレンタカーに先代カローラが出てくると、乗った瞬間からテンションが下がり、せっかくの旅もつまらなく感じることさえあったくらいだ。まっすぐ走ることさえ難しい先代モデルは、単なる移動の道具として見ても成立していなかった。まるで、歩くとマメができるランニングシューズみたいなものだったのだ。

落ちるところまで落ちたカローラだけに、個人的には「次の世代はない」と踏んでいた。ところがカローラは、どん底から復活を遂げる。2018年に登場したカローラスポーツは、実に完成度の高いクルマに仕上がっていたのだ。

とはいえ、カローラのメインストリームは、やはりセダンとステーションワゴン。期待を込めて日本仕様をチェックすると、海外仕様と比べて全幅を狭くする(1745mm)など、ボディサイズを日本の道にアジャスト。その上で、価格もリーズナブルな設定とするなど、日本というマーケットを徹底的に意識したモデルとなっていた。

乗った印象はどうなのか? ひと言でいえば、相当出来のいいカローラスポーツの走りを、ほぼそのまま踏襲している。乗り心地はしなやかで、路面へのタッチがものすごく優しく、乗っていると癒やされるという印象。それでいてコーナーでは、しっかり曲がってくれる。一度、ハンドルの舵角を決めると、きれいにねらったラインをトレースしてくれるのだ。従来モデルは、まっすぐ走るだけで不安を覚えたが、新型は、直進性に優れるのにコーナーを曲がるのも嫌がらないという、全く別物に仕上がっている。少なくとも走りの面では、Cセグメントの代表モデルであるフォルクスワーゲン「ゴルフ」やプジョー「308」に匹敵するハードウェアを手に入れた。先代カローラのオーナーが新型をドライブしたら、きっと驚くはずだ。

新型カローラの進化は、先代を知る者にとって、逆転満塁ホームランくらいのインパクトがある。とはいえ、我々ジャーナリストやメディアの働きにもかかってくるが、営業車とクルマにこだわりのない人にしか需要のなかったカローラが、素晴らしいクルマに進化したということを人々に浸透させるというのは、相当に大変なことだと思う。

そうした変化を最も効果的にアピールできるのは、デザインの変化だろう。先代カローラは退屈なデザインだったが、新型はトヨタ車に共通する独自の“キーンルック”を採用しながら、「プリウス」ほどアクは強くないという、いい着地点を見つけたように思う。

とはいえ、同時期にデビューした「マツダ3」ほどのオシャレ感はない。インテリアにしても、せっかくの“ディスプレイオーディオ”が全体のデザインに溶け込んでおらず、インフォテイメント系を担当する部署とインテリアデザイナーとが、まるで連携できていないように感じる。クルマ全体で統一感あるデザインに落とし込むという作業は、次の世代に期待といったところだ。

■トヨタのクルマ作りはどのように変わったのか?

新型カローラが逆転満塁ホームランを打てたのは、豊田章男社長による「もっといいクルマを作ろうよ」という掛け声とともに、クルマ作りの際にスペックを追うことを止めたのが大きい。ボディ、エンジン、サスペンション、トランスミッションといったトヨタの各部門が、それぞれクルマに合わせて最適なスペックのものを開発し、最終的に1台のクルマへと集約する…。これが、従来のトヨタのクルマ作りだった。しかし、いいクルマを作るには、もっと社内で横断的に、各部署が手を組んで取り組まなくてはいけない、そして、それぞれがハーモニーを奏でなければいけない、ということに気づき、カンパニー制へと社内の仕組みを変え、エンジニアたちのマインドも変えて、個々の技術の最適値ではなく、クルマ全体としての最適値をみんなで作っていこう、という方向へとシフトしたのが、今のトヨタのクルマ作りだ。

こうした手法は、場合によると、スペックダウンを強いられる部署も出てくる。例えばトランスミッションは、効率を追い求めようとすると、単体での最適値が自ずと決まってくる。しかしそれをクルマに組み合わせてみると、ドライバーの感性に合わない、なんてこともあるのだ。従来の手法のままであれば「感性って何? 優劣は数値で決めよう」と、新型カローラでもスペック重視でクルマ作りが行われていたかもしれない。そういう意味で、テストドライバーや実験部門といった“人の意見”が、最近のトヨタ車には濃密に反映されてきている。

“The日本車”と呼ぶべきカローラの完成度がこれほどまでにアップしたということは、今回のモデルチェンジにおける最大の価値だと思う。コレを基準に考えると、他のクルマも必然的に良くならざるを得ない。新型カローラの登場で、今後の日本車の進化にがぜん期待が膨らんできた。

 

トヨタ「RAV4」

新型「RAV4」は、全方位的に良くできたクルマだと思う。

まずデザインは、個人的に「アドベンチャー」グレードのそれがとても気に入っている。このところのSUV人気を受け、コンパクトカーなどでもクロスオーバー仕様のデザインを採用したモデルが増えているが、それらの“なんちゃって”モデルが増えれば増えるほど、スズキ「ジムニー」やジープ「ラングラー」、メルセデス・ベンツ「Gクラス」といった、骨のあるプリミティブなモデルへの注目度が高まってくる。

そんな状況にあって、RAV4、特にアドベンチャーグレードには、ヘビーデューティさやワイルドさを感じさせるデザイン要素が採り入れられていて、SUVブームの中でも埋没しない、確固たるポジショニングを確立。ひと目でRAV4と分かる個性がプラスされている。

キャビンやラゲッジスペースの広さも、新型RAV4の魅力のひとつだ。大人4名が乗っても車内はゆったりしているし、荷室には遊びや趣味の道具を気兼ねなく積み込める。アウトドア人気が高まっている昨今、そういうガシガシ使えるクルマに仕立てられている点も、人気を呼ぶ大きな要因となっている。

RAV4は走りも上出来だ。先日、助手席とリアシートに人を乗せ、4名で移動する機会があったのだが、走り出してすぐ、後席に座る人から「このクルマ、いいですね」との感想が聞かれた。ジャーナリストや自動車メディアに携わる人ではなく、普通の人であっても、走りの出来の良さを感じられるほど、RAV4は質感の高い乗り味を実現できている。それは、サスペンションがフリクションを感じさせることなくきれいに動いていることに起因する。こうした乗り味は、従来は高級車でなければ決して味わえないものだった。

RAV4の上質な走りは、しっかりと作り込まれたハードウェアによる恩恵だが、それはトヨタのエンジニアたちが、上質な走りを生み出すためのノウハウをしっかりと積み重ねていることの現れでもある。

トヨタはコンパクトSUVの「C-HR」を開発する際、フリクションを感じさせないサスペンションを実現するために、減衰力を始めとするショックアブソーバーのチューニングを徹底的に吟味した。それは高コストにつながり、カタログを華やかに彩るスペックや売り文句にもなりにくいものだったが、従来のそれと乗り比べると、やはり乗り味の違いは明らかだったという。

その際に得られた情報を解析し、サスペンションがどのように動くとドライバーは気持ちいい走りだと感じられるのかを分析。そうして蓄積してきたノウハウが、新型RAV4の走りにも相当盛り込まれている。最近のトヨタ車、特に今回、10ベストカーに選出されたRAV4とカローラの走りには、トヨタの開発陣が積み重ねてきた財産が上手く反映されているようだ。

先のロサンゼルスオートショー2019でアナウンスされたように、この先RAV4には、PHEV(プラグインハイブリッド車)が追加される予定だ。「RAV4プライム」と呼ばれるこのモデルは、現行モデルのハイブリッド車よりも強力なモーターを搭載。302馬力を発揮し、静止状態から96km/hまでの加速タイムは歴代のRAV4で最速となる5.8秒と、かなりの駿足を誇る。トヨタはこれまで、ハイブリッド車やPHEVではエコ性能を重視していたが、新しいRAV4プライムは燃費と同様、動力性能も重視している。こうした点からも、トヨタのクルマ作りの変化が感じとれる。<Part2に続く>

(文責/&GP編集部)

 

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