話題のヤリスとフィットを迎え撃つ!「マツダ2」の真価は上質なデザイン&走りにあり
&GP / 2019年12月14日 19時0分
話題のヤリスとフィットを迎え撃つ!「マツダ2」の真価は上質なデザイン&走りにあり
まさに“寝耳に水”とはこのことだ。マツダがコンパクトカーの「デミオ」をマイナーチェンジすると同時に、車名を「マツダ2」へと変更した。
確かにその兆しはあった。2019年5月に発表された「マツダ3」は、フルモデルチェンジを機に「アクセラ」からネーミングが変更されていたし、先行して「アテンザ」も「マツダ6」へと名前が変わった。これでマツダは、商用車とOEM車種を販売する軽自動車、そして「ロードスター」を除いて、“マツダ+数字”、もしくは、「CX-5」などのように“アルファベット+数字”へと車名が統一されたことになる。
とはいえ海外市場では、以前から各モデルとも、そうしたネーミングで販売されていた。デミオ、アクセラ、アテンザと呼ばれていたのは日本市場だけであり、日本向けも海外市場と同様の名称に統一された、と考えれば、今回の変化も理解しやすいだろう。
■内外装デザインを上質でエレガントな方向へと一新
デミオからマツダ2への車名一新を伴う今回のマイナーチェンジで、最も分かりやすい変更点はフロントデザイン。中でも、フロントバンパーの変化は一目瞭然で、下部を左右に貫くラインがマツダ6に似た雰囲気となり、違いがすぐに分かる。このデザイン変更により、マツダ2の高級感はビックリするくらい高まった。
フロントバンパーの変更に伴い、フロントグリルは左右に広がる形状に変更されるとともに、ヘッドライトが上下に薄くなった。その結果、マツダ2の顔つきは、デミオ時代のスポーティ路線から、シャープでプレミアムな方向へとスイッチしている。
一方のリアスタイルは、バックランプの電球をLED化するなど、コンビネーションランプのデザインをリファイン。バンパー形状もデミオ時代のそれとは異なっている。さらに上級グレードには、バンパー両端の下部にクロームの加飾パーツを添えることで、エレガントさを強調している。
インテリアにおけるハイライトは、シート生地を軸としたカラーコーディネートの一新。人気グレード「プロアクティブ」にはブラウンとブラックのクロスを、「プロアクティブ Sパッケージ」にはネイビーブルーとブルーブラックのクロスを、そして最上級グレードの「Lパッケージ」にはブルーグレーとオフブラックのレザーを、といった具合に、グレードごとにマテリアルや色使いを変えてきた。
プロアクティブ
プロアクティブ Sパッケージ
Lパッケージ
前身のデミオは、ブラックやホワイトといった分かりやすい内装色を採用していたが、マツダ2ではユーザーの好き嫌いを恐れず、深みを感じさせるコーディネートを採用するという冒険に打って出た。こうしたインテリアカラーの設定は、強豪ひしめく国産コンパクトカーの中で、あえてマツダ2を選ぶ理由に十分なり得るはずだ。
■シートの一新でカラダを包み込む感覚がより強まった
今回のマイナーチェンジでは、フロントシートの内部構造も一新された。背もたれの内側には、骨盤を立たせるためのサポート(カラダを保持する部品)を追加。併せて、座面の後方に骨盤を支えるプレートを加えたほか、座面前部にワイヤーを追加したり、座面を構成するバネどうしのつながりを強固にしたりすることで、乗員の着座位置が前へとズレないよう配慮している。これらは、マツダが昨今の新型車のシートにおいて提唱している「骨格をしっかり立たせて保持する」ことを狙っての変更だ。
実際、デミオのそれと座り比べてみると、違いは歴然。マツダ2のフロントシートの方が、カラダを包み込む感覚が強い。見た目はほとんど変わらないものの、座るとしっかり進化を感じられる、というのは、控えめながらも、なんともマツダらしい改良といえるだろう。
またインテリアでは、“マツダコネクト”と呼ばれるディスプレイオーディオが進化した点もトピックだ。これは、タッチパネル式モニターの付いたオーディオユニットで、オプションの地図データをセットすればカーナビとしても使えるもの。マツダ2では新たに、Apple CarPlayやAndroid Autoにも対応。スマホのナビアプリを活用できるようになったほか、車両側からの操作でスマホ機能のコントロールも可能になった。
このほかマツダ2では、“レーダークルーズコントロール”の作動範囲が広がった点にも注目したい。デミオ時代のそれは、速度が約30km/hまで落ちると機能が解除されていたが、マツダ2のそれはバージョンアップを果たし、車速0km/hの状態まで作動するようになった(その先の停止保持は、ドライバーのブレーキ操作が必要)。つまり、デミオ時代のレーダークルーズコントロールは、渋滞時は使えないケースも少なくなかったが、マツダ2ではある程度まで、アシストしてくれるようになったのだ。
■マイチェンなのに走りの快適性や乗り味もアップグレード
今回、そんなマツダ2とデミオを乗り比べてみたところ、「あれっ!?」という驚きを覚えた。なぜならマイナーチェンジにもかかわらず、走りの快適性や走行時の挙動までもが、アップグレードされていたからだ。
まず、走り出してすぐに、静粛性と乗り心地の向上を実感した。静粛性に関しては、マツダ2への進化に伴い、ルーフ部分の吸音性能を約35%も高めたという。その効果は絶大で、違いをしっかり感じられるほど、車内は静かになっている。一方の乗り心地は、デミオ時代には拭いきれなかった、路面からの突き上げによるゴツゴツ感が緩和され、落ち着きが増した印象。マツダ2を運転していると、ひとクラス大きなクルマをドライブしているかのような感覚になる。
さらに、デミオ時代とは方向性が明確に異なるのが、ハンドリングの味つけ。デミオ時代は軽快で、キビキビと車体が動く感覚を強調していたが、マツダ2では、ハンドルの手応えも、その反応も挙動が穏やかで、安定感を強める味つけへとシフトしている。
こうした操舵フィールの違いに関しては、サスペンションの変更はもちろんのこと、ハンドル操作に応じてエンジンを制御し、走りを安定させる“GVC(G-ベクタリング コントロール)”機能にブレーキが連携し、新たに“GVCプラス”へとバージョンアップしたことも効いているようだ。
車名が変わり、見た目もちょっと変化しただけーー。正直に告白すると、今回のマツダ2はその程度のクルマだと高をくくっていた。しかし試乗してみると、マイナーチェンジであるにもかかわらず乗り味までもが変わり、ひときわ落ち着いた上質なクルマへと進化していた。
スタイリングやインテリアのカラーコーディネートはもちろん、乗り味までもがスポーティから上質へと路線転換したマツダ2は、間もなく登場するトヨタ「ヤリス」やホンダの新型「フィット」とは異なる、独自の魅力を身につけたといえるだろう。
<SPECIFICATIONS>
☆15Sプロアクティブ Sパッケージ(4WD)
ボディサイズ:4065×1695×1525mm
車重:1150kg
駆動方式:4WD
エンジン:1496cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:6速AT
最高出力:110馬力/6000回転
最大トルク:14.4kgf-m/4000回転
価格:211万2000円
<SPECIFICATIONS>
☆XD プロアクティブ Sパッケージ(FF/6速AT)
ボディサイズ:4065×1695×1500mm
車重:1150kg
駆動方式:FF
エンジン:1498cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:6速AT
最高出力:105馬力/4000回転
最大トルク:25.5kgf-m/1500〜2500回転
価格:215万6000円
(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)
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