トヨタ「ハリアー」はココがスゴい!美と機能の絶妙なバランスで“いいモノ感”が濃密
&GP / 2020年7月23日 19時0分
トヨタ「ハリアー」はココがスゴい!美と機能の絶妙なバランスで“いいモノ感”が濃密
発売から1カ月ほどで、約4万5000台を受注したトヨタの超人気モデル「ハリアー」。
これほどの大ヒットを記録した理由はどこにあるのだろう? 今回は内外装デザインや、室内と荷室のユーティリティにフォーカスし、新型ハリアー人気の秘密を探る。
■クーペフォルムと居住性を両立したマジックとは?
新型ハリアーを前にして「これは売れる。売れない理由が見当たらない」と直感した。品があって美しいスタイル、上質感の高いインテリア、そして、トヨタの上級車であることを実感させるこだわり装備の数々。いずれも“いいモノ感”を高めることに貢献していて、「ハリアーを買って良かった」とオーナーを満足させてくれるものばかりだ。
ハリアーのプライスタグは299万円〜。上級グレードであれば500万円を超える高額車だ。「クルマは移動できればいい」と割り切れるのであれば、ほかに選択肢はたくさんある。だからこそ高額車のハリアーには「あえて高いクルマを選ぶ」という理由が求められるはずだ。今回はそんな視点から、新型ハリアーの魅力をひもといてみたい。
まず注目したいのは、第一印象を左右するエクステリアデザイン。全体にハリアーらしいエレガントさをたたえているエクステリアの中でも、最も特徴的なのはリアのセクション。キャビン後方がクーペのようなフォルムになっているのだ。
このクーペフォルムは、SUVにおける最新トレンドのひとつであり、ルーフの後端やリアウインドウを寝かせることで、スポーツカーのような軽快な雰囲気を醸し出す手法だ。ハリアーもそんな流行を反映。「流麗だけどSUVと感じてもらえるギリギリの線を狙ったデザイン」と、開発者は語る。
だからといって、インテリアの居住性が犠牲になっていないのが、新型ハリアーにおけるデザインの妙だ。フロントシートはもちろん、リアシートに座っても、頭上のクリアランスがしっかり確保されていて、乗員はゆったりと移動することができる。
クーペフォルムと優れた居住性を両立できた秘密は、錯覚をうまく活用しているため。リアウインドウ自体はそれなりに寝ているが、実はルーフラインはそれほど低くなく、リアシートの頭上を越えて、しっかりとリアエンドまで伸びている。そのため、後席の頭上空間は、ほとんど犠牲になっていないのだ。
一方、真横から眺めると、サイドウインドウは後方へ行くにつれてどんどん低くなっていて、最後端の部分は鋭角に描かれている。このサイドウインドウの形状こそが、軽快なクーペフォルムとリアシートの優れた居住性を両立したデザインのマジックなのだ。
このほかリアセクションでは、斬新な形状のテールランプが目を惹く。左右をつないだ独特の形状で、他メーカーの車種では見たことがないような、細いランプ形状が真新しい。
加えて、テールランプの下に見られるボディの“くびれ”も印象的だ。新しさに挑戦していこうとの意気込みを感じさせるデザインであると同時に、先進性や魅惑的といったポジティブな印象を抱かせるバランス感覚が絶妙だ。
ちなみに、SUVなら誰もが気になるであろうラゲッジスペースは、兄弟車である「RAV4」ほど大容量ではない。荷室フロアの面積こそ広いものの、フロア自体が高いのに加え、傾斜の大きなリアウインドウの影響もあって、どうしても高さに制約がある。
とはいえ多くのユーザーが「これなら困らないだろう」と思えるだけのスペースは確保されている。こうした実用性と美しさの絶妙なバランスこそ新型ハリアーの美点であり、デザイン優先のための割り切りがあったからこそ、新型は美しく見えるのだ。
■馬の“鞍”をイメージしたセンターコンソールが大胆
インテリアのデザインも、大胆でありながら機能的というバランス感覚に優れたもの。本物の“革”をあしらったかのような、素材使いの妙を感じさせるダッシュボードやドアトリムは、高級ホテルのロビーにいるかのような風格と非日常感を演出していて、いいモノ感に加え、“心地良さ”を伴って乗る人をもてなしてくれる。
そんなインテリアで注目すべきポイントはふたつ。ひとつ目は、斬新なデザインのセンタークラスターで、エアコンの操作パネルやその下に確保された収納スペースなど、ダッシュボード中央のデザインはほかでは見たことがない。もうひとつは、シフトレバーからセンターアームレストにかけての、“センターコンソール”と呼ばれる部分のデザインで、全体に革をあしらったかのような仕立てになっている。こうしたデザインは珍しく、とびきりの上質さを感じさせてくれる。開発陣によると、センターコンソールのデザインは、馬の“鞍(くら)”をイメージしたというが、レザー風の仕立てに加え、馬の背中を包むような造形にも確かにその雰囲気がある。
そんなインテリアにおける注目アイテムが、「Z」グレードに標準装備され、「G」グレードにはオプション設定される12.3インチのワイドディスプレイだ。一般的には、9インチでもかなり大きいとされるディスプレイだけに、12.3インチというのはかなり立派。画面サイズは幅295mm×高さ110mmと横長で、「Sクラス」を始めとするメルセデス・ベンツの上級モデルとほぼ同じ。つまり量産車としては世界最大級なのだ。画面は左右2分割での表示がスタンダードで、大きい方の画面はナビゲーションとしての使用がメイン、小さい方の画面には空調や車両の状況などが表示される。
ちなみに、12.3インチのワイドディスプレイを装着する仕様は、エアコンの操作スイッチがタッチ式となり、室内の先進感がひと際高まるのも新型ハリアーのトピックといえるだろう。
■「星空を見せて」のひと言でガラスの色が変化
「Z」グレードにメーカーオプションとなる“調光パノラマルーフ”も、斬新な仕掛けで乗る人を楽しませてくれる新型ハリアーの強力な武器だ。
これは、固定式ガラスルーフの一種で、開閉機構を持たないことからガラス面積が広いのが特徴(電動開閉式のシェードが組み込まれている)。その上で、新技術として液晶を活用した調光機能が備わっている。通常のガラスと同じ透明の状態から、スイッチひとつで瞬時に“すりガラス”状に切り替わるのだ。さらに、すりガラス状となったルーフを通じ、柔らかな光が車内に注がれるようになるこの仕掛けには、もうひとつの秘密が。スイッチだけでなく音声認識機能とも連携していて、「星空を見せて」と語りかけると、すりガラスの状態から透明なガラスへと変化する。トヨタ車らしからぬ遊び心や洒落っ気の効いた装備といえるだろう。
新型ハリアーにはもうひとつ、大きな話題となっている装備がある。それが、世界的にも珍しい前後方向の録画機能を備えた“デジタルインナーミラー”だ。
デジタルインナーミラーは、車両後方の様子をカメラで撮影し、それをルームミラー部に組み込まれた液晶画面へと映し出す仕組み。見える範囲が通常の鏡に比べて広いのが最大のメリットだが、新型ハリアーではその映像を録画する機能まで組み込んでいる。
しかも、車両の後方だけでなく、前方の映像まで記録する。昨今、装着率が高まっているドライブレコーダーのようなものと考えればいいだろう。ちなみに記録メディアはmicroSDカードで、そのスロットはルームミラー本体に備わっている。
もちろん、そもそもがデジタルインナーミラーだけに、映し出せる範囲がドラレコほど広くないとか、音声は記録できないとか、車内では記録した映像を再生できないなど、一般的なドラレコと比べると見劣りする部分もあるが、衝撃を検知すると、その前後の記録を別フォルダーに残すなど、事故の際を想定した機能も搭載されている。今後、トヨタ車を始め、多くの市販車に広がりそうな装備といえるだろう。
美しいデザインに上質なインテリア、そして、トヨタ車をリードする先進装備を搭載した新型ハリアーには、オーナーを満足させるであろう、いいモノ感が凝縮されている。売れない理由など見当たらないし、現状の大ヒットも十分うなずける出来栄えだ。
※「Part.2」では、新型ハリアーの走りの実力に迫ります
<SPECIFICATIONS>
☆ハイブリッド Z“レザーパッケージ”(E-Four)
ボディサイズ:L4740×W1855×H1660mm
車重:1750kg
駆動方式:E-Four(電気式4WDシステム)
エンジン:2487cc 直列4気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:電気式無段変速機
エンジン最高出力:178馬力/5700回転
エンジン最大トルク:22.5kgf-m/3600〜5200回転
フロントモーター最高出力:120馬力
フロントモーター最大トルク:20.6kgf-m
リアモーター最高出力:54馬力
リアモーター最大トルク:12.3kgf-m
価格:504万円
文/工藤貴宏
工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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