ノイキャン最強のソニー「WH-1000XM4」はさらに先の時代を見据えている
&GP / 2020年10月24日 7時0分
ノイキャン最強のソニー「WH-1000XM4」はさらに先の時代を見据えている
完全ワイヤレス界隈で“ノイズキャンセル”がキーワードになっている昨今。でも、そもそも静寂に包まれるようなノイキャン性能を求めるならヘッドホンを選ぶべきでは、という声は少なからずありました。
そんなノイキャンの王道ともいえるソニーのワイヤレスヘッドホン。9月に登場した「WH-1000XM4」(実勢価格:4万4000円前後)は、ソニーが世界中のハイエンドヘッドホン市場で勝ちまくる原動力となったロングセラー“1000Xシリーズ”の最新世代になります。
そんな注目作を、ノイキャン性能の検証はもちろん、テレワーク時代にもマッチしたコミュニケーション機能の観点からチェックしていきます。
■ノイキャン最強で音もいい。けど本質はそこじゃない!?
最初に特徴の説明を。この「WH-1000XM4」は、“高音質ノイズキャンセリングプロセッサーQN1”と“高性能BluetoothオーディオSoC”を搭載するノイズキャンセル・ハイレゾ対応ヘッドホンになります。ノイキャン技術は自社開発で世界最高峰。さらにAndroidスマホで標準化されているLDACコーデックによるハイレゾにも対応。機能で選んでも、高音質でも第一候補になるモデルです。
見た目からは新しくなったポイントが分かりにくいのですが、前世代よりマットな質感になり、ハウジングとアームの隙間も縮小。ヘッドホンとしての密着感を上げて遮音性を引き上げ、ノイキャン性能も引き上げる設計になっています。
実際にノイキャンを試してみると、騒音を消して無音空間を作るチューニングはヘッドホン型だからこその領域。屋内ではキャンセルの難しいエアコンのシーと響く高めの音もカットし、屋外の喧騒のような音はほぼ無音。装着するとフッと静寂が訪れる感覚は、ヘッドホン型のメリットです。
音質もチェックしていきましょう。宇多田ヒカルの『あなた』を聴くと、声の艶やかさ、ピアノの音色の響きまで伝わってきて、オーケストラの伴奏まで圧巻のスケールと丁寧さ。低音もタイトで鮮明な鳴りです。BrunoMarsの『24K Magic』も弾むようなレスポンス志向の重低音の刻みに音の移動感の遊びまで克明。音楽にどこまでものめり込んでしまう、ワイヤレスヘッドホンだからできる本格的過ぎるサウンドです。
Windows 10のPCと接続して通話性能もテストしてみます。
通話用マイクは、ヘッドホンに搭載されている独自の“高精度ボイスピックアップテクノロジー”で深みのある声の質感を拾うので、これは通話用にもアリ。周囲の騒音を区別して拾わない技術はAIの機械学習が用いられています。
ノイキャンも音質も業界最高クラスに優秀な「WH-1000XM4」ですが、でもそこまでは前世代でも達成していたこと。実は製品としての面白味は、ノイキャンを含めた“外音”と“コミュニケーション”について真剣に考えているところにあります。
専用アプリ「Sony Headphones Connect」はカスタム性が豊富で、22段階の外音取り込み調整に、声のみを聴けるボイスフォーカスにも対応。例えば、ノイズキャンセルを最低の1に設定しボイスフォーカスをONにすると、「家族の生活音やテレビは騒音だからカットしてほしいけど、呼びかけには応えたい」なんて用途も高精度で応えてくれます。
また、右側のイヤーカップを手のひらで触れると瞬時に外音取り込みになる“クイックアテンション”も、いざという時に便利。
そして業界初の機能となる“Speak to Chat”。ヘッドホンを装着し音楽再生しながら発話すると、マイクで声を検知して、自動的に音楽再生を一時停止。30秒間、外音取り込みモードに切り換えてくれます。自分の世界に没入しつつも、周囲に気を配り、会話する時はハッキリ。そんな利用ストーリーも成立します。実際に使う場合は、家族や同僚に「ヘッドホン付けているけど、聴こえてるから気軽に話しかけてね」的な念押しは必要ですけどね。
もうひとつ、テレワーク時代向きだなあと思う機能が、ワイヤレス2台接続の完全対応です。例えば、スマホとPCを同時に繋いだまま、音声を聴けます。これってスマホの電話もビデオ会議も両受けしたい時に便利。音声アナウンスで「Bluetoothデバイス2、接続しました」とハッキリと2台接続と分かるように教えてくれるところも業界初です。
* * *
ノイキャンでも高音質でも業界最高クラスのソニー「WH-1000XM4」ですが、それだけではこの製品の本質は語れません。没入感と騒音処理、そしてコミュニケーション機能といったテレワーク時代の課題、これを解決していく部分こそソニーが先陣を切っている分野です。ノイキャンと高音質目当てで購入したら、そんな今どきの課題にまで対応できちゃうなんてお得ですよね。
<取材・文/折原一也>
折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長
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