「DS7クロスバック」のハイブリッド4WDは内外装の仕立てと乗り味が上品すぎる
&GP / 2021年7月27日 7時0分
「DS7クロスバック」のハイブリッド4WDは内外装の仕立てと乗り味が上品すぎる
DSは、独特の世界観が魅力的なフランスのカーブランドだが、現在、日本で展開されるDSの最上級モデル「DS 7 クロスバック」に、先頃、プラグインハイブリッド仕様の「DS 7 クロスバック E-TENSE(イー・テンス)」が加わった。
DS 7 クロスバックで唯一の4WDであり、日本で展開されるDS車で唯一のプラグインハイブリッド仕様となるDS 7 クロスバック E-TENSEは、内外装の上質な仕立てと上品な乗り味が魅力的な個性派モデルである。
■高級ブティックを思わせるDS 7のインテリア
日本のカーユーザーの多くは、「フランス車とはどんなクルマか?」と聞かれてもピンと来ないかもしれないし、イメージすら思い浮かばないかもしれない。でもそれは、とてももったいないことだと思う。なぜなら昨今のフランス車は、かつてのような“マニア向けのクルマ”という枠を超え、思わず乗りたくなる魅力を備えたモデルが少なくないからだ。
例えば、今回採り上げるDS 7 クロスバック E-TENSEもそんな1台だ。「DSとは何?」という人もまだまだ多いだろうから、まずはそこから話を進めていこう。
2021年1月、プジョー、シトロエン、オペルなどを展開するフランスのグループPSAと、フィアットやクライスラーなどからなるFCAグループとが経営統合し、新しい自動車グループ・ステランティスが誕生した。欧米14のブランドを展開する巨大グループにあって、DSブランドのポジショニングはプレミアム。前身のグループPSA時代から、プジョーは幅広いユーザーをフォローし、シトロエンはベーシックを、そしてDSはプレミアムといった具合にブランドごとにキャラクターを分けていたが、その流れはステランティスになっても不変のようだ。
そんなDSの各モデルは、他のプレミアムブランドの各車とは異なり、強烈な個性を備えているのが特徴だ。その世界観をひと言でいうならば、宝石箱といったところ。ダッシュボードやドアトリム、インパネやセンターコンソールにあるスイッチ類、そしてメーターパネルなど、ダイヤモンドのカットを連想させる“ひし形”のモチーフを全面にあしらったインテリアは質感も高く、まるで高級ブティックのようである。
またDS 7 クロスバックでは、エンジンを始動させるとインパネ中央の上部にアナログ時計が回転しながら現れるが、そうした斬新なギミックもDSの世界観によくマッチしている。
それら独特のデザイン&ギミックは、インテリアだけにとどまらない。例えばヘッドライトの仕掛けは常識のはるか上をいくもので、ドアロックを解除すると左右に3灯ずつ内蔵されたLEDヘッドライトユニットが1灯ずつ180度回転し、四方八方にパープルの光を放ちながら乗員を迎えてくれる。常人では思いつきもしない発想と、それをカタチにした開発陣の執念に、思わずうなってしまうほどだ。
とはいえ、一見、奇抜に見えるデザインやギミックも、全体的に見れば上品にまとめられているのはさすがである。好き嫌いがはっきり分かれるデザインや仕立てだと思うが、強烈な個性を散りばめながら多くの人が共感できるボーダーラインをしっかりと守っている点は、DS各モデルの素晴らしい部分だと思う。
■最上級のE-TENSEはより高級な宝石箱
今回フォーカスするのは、現在、日本で販売されるDSブランドの最上級モデルで、クロスオーバーSUVのDS 7 クロスバック。しかも、新たにプラグインハイブリッド機構を搭載したE-TENSEと呼ばれるグレードだ。
DS 7 クロスバックのボディサイズは、全長4590mm、全幅1895mmで、日本車に例えるとトヨタの「RAV4」とほぼ同じ。日本の街中ではちょっと大きめだけど、気にするほど大きいわけでもなく、多くのユーザーに受け入れられるサイズといっていい。
プラグインハイブリッド機構を搭載したE-TENSEはDS 7 クロスバックの最上級グレードで、シート表皮はレザーを標準採用。ダッシュボードやドアトリムにもナッパレザーが貼られるなどプレミアムな仕立てで、より高級な宝石箱となっている。
フロントシートはもちろん電動式で、ヒーターやベンチレーションも内蔵されているから快適。またリアシートにも電動調整機能が備わっている。この辺りの充実した快適装備は、フランス大統領の公用車として使われているDS 7 クロスバックの面目躍如といったところだろう。
最上級グレードのE-TENSEは、現在、日本で発売されるDSブランドのモデルとして唯一のプラグインハイブリッドカーであり、DS 7 クロスバックで唯一の4WD仕様でもある。とはいえ、単なるエコカーではないところがヨーロッパ車らしいところだ。
エンジンは、1.6リッターの4気筒ターボで200馬力を発生。そこに100馬力のフロントモーターと112馬力のリアモーターをプラスし、システム最高出力は300馬力を誇る。これだけパワーがあれば、車重が約2トンという重量級でも遅いわけがない。
ちなみに、4WDといってもリアタイヤはエンジンとは機械的につながっておらず、モーターで駆動する電動4WDとなる。
また、外部からバッテリーに充電可能なプラグインハイブリッド機構の搭載により、フル充電状態だと最長約50kmの距離をエンジンを止めた状態で走行可能だ。
■電気自動車に近いドライブフィール
DS 7 クロスバック E-TENSEのメカニズムは、車体の基本構造まで含め、以前レポートしたプジョー「3008ハイブリッド4」と同じだが、乗って納得したのはその乗り味の違いだった。
DS 7の方はすべてが滑らかで、加速感も乗り心地も、すべてがまるで口の中でとろけるクリームのようにアタリが良く、後味もスッキリしている。21インチという大径タイヤを履いているにもかかわらず、この乗り心地を実現しているのは見事としかいいようがない。
また加速フィールも、「なめらかだけど気がつけば速い」という、あくまでも上品さを貫くタイプ。加速時は、バッテリーに余裕があればモーターを主体に動き出し、速度が高まると途中でエンジンに主役を譲る。しかし、モーターがかなり粘るのに加え、そのつながりが超絶スムーズだからエンジンの存在感はあまり感じない。この仕立ては電気自動車の感覚に近いものだ。
こうした走行フィールには、しっかりと磨き上げて作り込まれた、静粛性という見えない上質さも効いている。運転を楽しみたいなら、キビキビ感があって驚くほど旋回性能も高いプジョーの3008ハイブリッド4の方がいいかもしれないが、快適なドライブを楽しみたいなら、DS 7 クロスバック E-TENSEの方が向いている。
プレミアムさを実感できる内外装の上質な作り込みと上品な乗り味こそが、DS 7 クロスバック E-TENSEの魅力である。この世界観に共感できるか、また、宝石箱の世界を楽しめるかが、このモデルの評価を左右することだろう。
<SPECIFICATIONS>
☆DS 7 クロスバック E-TENSE 4×4 グランシック
ボディサイズ:L4590×W1895×H1635mm
車重:1940kg
駆動方式:4WD
エンジン:1598cc 直列4気筒 DOHC ターボ+モーター
エンジン最高出力:200馬力/6000回転
エンジン最大トルク:30.6kgf-m/3000回転
フロントモーター最高出力:110馬力/2500回転
フロントモーター最大トルク:32.6kgf-m/500〜2500回転
リアモーター最高出力:112馬力/1万4000回転
リアモーター最大トルク:16.9kg-m/0〜4760回転
価格:732万円
文/工藤貴宏
工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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