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スポーツカーの刺激とSUVの機能性が融合!VW「ティグアンR」は1台2役の万能選手

&GP / 2021年10月12日 7時0分

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スポーツカーの刺激とSUVの機能性が融合!VW「ティグアンR」は1台2役の万能選手

VW(フォルクスワーゲン)のミッドサイズSUV「ティグアン」のラインナップに、高性能な心臓部と4WDメカを搭載した「ティグアンR TSI 4モーション(以下、ティグアンR)」が加わった。

ヨーロッパで先行公開された新型「ゴルフR」と同じパワートレーンを搭載するハイパフォーマンスSUVは、果たしてどんな走りを披露してくれるのだろうか?

■「R」シリーズは強力エンジンに4WDの組み合わせ

きっとVWには、高性能車に対して熱い情熱とこだわり、そして理解を持った経営陣とエンジニアがいるに違いない。ミッドサイズSUVのティグアンに追加された高性能バージョン、ティグアンRをドライブしていてそんなことを考えた。

VWはここ数年、EV化へと大きく舵を切ったことで知られる。EVを開発・量産するために莫大な投資をし、市販モデルを続々と発表。EV社会への推進を最も勢いよく進めている自動車メーカーのひとつである。

しかしVWは、アウディやボルボのように「エンジン搭載車の販売を止める」とは明言していない。先日、VWの役員が「2035年までにエンジン搭載車の販売を打ち切る」とコメントしたという報道があったが、それはヨーロッパ市場に限っての話。彼のコメントには「地域によってはEVのインフラが整わないため、グローバル市場を考えるとエンジン搭載車からの撤退には時間がかかる見通しだ」との続きがあった。

つまりVWは、ここしばらくの間、エンジン搭載車の販売を止めるつもりがないことを明らかにしているのだ。これはトヨタ自動車と同じ戦略であり、年間販売台数が1000万台と規模が大きく、しばらくは充電インフラの整う見込みのない新興国でもビジネスを展開するVWにしてみれば、当然の判断といえるだろう。

そんなVWのエンジン搭載車の中で、最も元気なのが「R」シリーズ。VWのスポーツモデルといえば「GTI」グレードがメジャーだが、「R」はその上に立つ存在だ。

4代目と5代目の「ゴルフ」に用意された、3.2リッターの自然吸気V6エンジンを搭載する「ゴルフR32」を皮切りに、「パサート」のステーションワゴンには3.6リッターの自然吸気V6エンジンを搭載する「パサートヴァリアントR36」を設定。6代目ゴルフ以降は、時代の要請に合わせてエンジンを2リッターのターボ仕様へとダウンサイズしたが、ハイパワーエンジンに4WDを組み合わせるというパワートレーンの構成は昔も今も変わりはない。

■タダモノではない雰囲気を醸し出すルックス

今回フォーカスするティグアンRは、そんなRシリーズに新しく加わったモデル。VWがSUVのラインナップにRシリーズを用意するのは、今回のティグアンRが初めてだ。

ティグアンRは、見た目からしてフツーじゃないオーラに包まれている。専用のフロントバンパーには、穴が開いているように見えるけれど、実は空気抵抗軽減のためにふさがれているというダミータイプの開口部“風”デザインを採用するではなく、冷却性能向上のためにきちんと穴が開けられるなど、やる気を感じさせる。

また、タイヤ&ホイールは径が21インチ、幅も255と常識外れのサイズで、パワーをしっかり路面へと伝えつつ、コーナリング時はしっかり踏ん張りを効かせようという意図がうかがえる。

そんな太いタイヤを収めるべく、フェンダーのタイヤ回りにはノーマルのティグアンより張り出しの大きなモールが備わり、またフロントタイヤの内側には、スポーツカーのような大径のブレーキローターと大きなキャリパーが収まっている。後方に回れば、4本出しのエキゾーストパイプがタダモノではない雰囲気を醸しだしている。

一方、ウインドウモールやフロントグリル、リアバンパーなどには、クロームのアクセントで高級感をプラス。この辺りは「バリバリのスポーツモデルとはひと味違うよ」とでもいいたげな仕立てだ。

インテリアに目を向けると、ホールド性の高いフロントシートが目に飛び込んでくるが、中でも「これは!」と感じさせるのがハンドルのデザイン。スポーツモデル専用の意匠であり、レーシングカーっぽい雰囲気に仕上げられている。

こうした演出はデザイナーの遊び心に違いないし、ハンドルのスポークに「R」と書かれた、最も過激な走行モードである「レース」モードをワンプッシュで呼び出せるボタンがついているのも特筆すべきポイントだ。

■SUVながらコーナリング性能を高める機構を導入

ゴルフRと同様の2リッター4気筒ターボエンジンは、最高出力320馬力を発生。実はこの数値、歴代のゴルフRよりハイパワーであることを示している。そう聞くだけでも、VWがティグアンRに対してどれだけ力を注いでいるかが伝わってくる。

メカニズムのもうひとつのハイライトは、4WDシステムに後輪の左右トルク配分機構を組み込んでいること。いわゆる“トルクベクタリング”と呼ばれる仕組みで、ふた組のマルチプレートクラッチを備えたリアデフにより、コーナリング中の状況に応じて左右50:50から最大で左右どちらかを100%まで駆動力を分配することができる。ティグアンRはSUVでありながら、悪路走破性を追求するためのシステムではなく、コーナリング性能を高めるための機構を組み込んでいるのだ。

ちなみに、320馬力を発生するエンジンとトルクベクタリング機構の組み合わせは、すでにヨーロッパでお披露目されている新型ゴルフR(日本未発表)と同じもの。新しいゴルフRに先んじて、ティグアンRに搭載されて上陸したといわけだ。

そんなティグアンRの走り味は、とにかくスポーツカーライクだ。オンロード向けの走行モードは、快適性に優れた「コンフォート」や任意にセッティングできる「カスタム」に加え、「スポーツ」と先述したレースが用意される。

中でもレースモードに入れた際の、太く心地いい排気音が一段と高まると同時に、アクセル操作に対するエンジンの反応が俊敏となって荒々しいまでにグイグイと前へと押し出してくれる刺激的な加速は、ハイパワーモデル特有の楽しさにあふれている。

ターボ付きながらエンジンを回す気持ち良さと高回転域でのパンチ力はさすがVWの直噴ターボといった出来栄えで、思わずSUVであることを忘れてしまいそうになる。

足回りには、状況に合わせて電子制御で硬さが変化する減衰力可変式のショックアブソーバーが搭載されていて、レースモードに入れた時は乗り心地も硬さが強調されたものとなる。そのおかげもあって、コーナリングはダイレクトかつシャープで、限界領域も高い。「さすがはRだ!」だと納得させられる走り味である。

■開発陣の高性能車に対する理解度の高さがうかがえる

そんなティグアンRからは、いかにもスポーツカー好きの開発者が作り上げたという香りがプンプンと漂ってくる。なぜなら、レースに参戦するようなクルマでもないのに遊び心でレースモードが用意されているし、それを選択した際の演出は、音やハンドリング、エンジンのレスポンスなど、すべてがレーシングカーのような刺激に満ちている。

こうした演出は数値で測れるものではなく、もはや“官能”の領域にあるもの。そのため、ハイパフォーマンスカーに理解があり、そしてそれを本当に好きな開発者じゃないとここまで作り込めないはずだ。

今回、VWからこんな刺激的なSUVが登場した背景には、根強い人気を誇り一定の利益を上げているメルセデスAMGの「GLA35 4マチック」やアウディの「RS Q3」といった存在があるのは間違いない。ヨーロッパのマーケットでは、刺激的なSUVに一定のニーズがあるのだ。

もちろんティグアンRは、減衰力可変式のショックアブソーバーのおかげで乗り心地のコントロール幅が大きい分、走行モードをコンフォートにすればレースモードの時の刺激がウソのような快適な乗り心地になるし、走りも幾分おとなしくなる。すなわち日常的には、上質なSUVとして活用できるのだ。

つまり、ファミリーユースのSUVとスポーツカーをこれ1台でまかなうことができるのだ。普段は猫をかぶったように快適な走りを楽しみ、ひとりで運転を楽しむ時はレースモードで刺激を味わう。さまざまな事情で複数台のクルマを所有できない人にもぴったりなスポーツモデルといえそうだ。

<SPECIFICATIONS>
☆R TSI 4モーション
ボディサイズ:L4520×W1860×H1675mm
車両重量:1750kg
駆動方式:4WD
エンジン:1984cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:7速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:320馬力/5350~6500回転
最大トルク:42.8kgf-m/2100~5350回転
価格:695万1000円

>>フォルクスワーゲン「ティグアンR」

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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