顔の威圧感がハンパない!キャデラック「エスカレード」がより豪華かつ先進的に進化
&GP / 2021年11月15日 7時0分
顔の威圧感がハンパない!キャデラック「エスカレード」がより豪華かつ先進的に進化
ゼネラルモーターズが展開するキャデラックのフラッグシップSUV「エスカレード」がフルモデルチェンジ。
大きく存在感のあるボディはさらに威風堂々としたものになり、インテリアの豪華さやハイテク装備もますます充実。ヨーロッパ勢にもヒケを取らない唯一無二の魅力を身に着けた、新型エスカレードの魅力を深掘りする。
■エスカレードの大きなボディは結構手ごわい
「ここまでボディサイズが大きいと、運転が難儀しそうだ」。キャデラックのフルサイズSUV、エスカレードのカギを受け取った時、真っ先にそう感じた。全長5400mm、全幅2065mmと、先代モデルより235mm長く、幅が2mを超えるエスカレードの巨体を乗りこなすのは、やはり簡単ではない。
まず神経を使わされるのが“車幅”感覚。普段なら全く気にならない、というか意識もしない道路の車線内にクルマを収め続けるという行為も、想像以上に気を使わされる。もちろん、大型バスやトラックはさらに全幅が大きいものの同じ道路を走っているわけだから、それらに比べたらエスカレードなんて格段にラクなはず。しかし、2065mmというワイドなボディは、日常的に運転しているフツーのクルマに比べたら、断然、気を使うことになる。改めて、大型車を運転するプロドライバーはスゴいと思わされた。
5ナンバー車でなければ運転しづらい、なんてことをいうつもりは毛頭ない。しかし、全幅1980mmの新しいトヨタ「ランドクルーザー」ではさほど意識することのなかった車幅ながら、ランクルからさらに85mmもワイドになると、世界が全く異なるのだから不思議である。
「きっとすぐに慣れるだろう」と思っていたが、与えられた2日間という試乗時間内では、慣れるまではいかなかった。意外だったのは、街中よりラクなはずの首都高速道路でも、車線内をキープするのに神経を使わされたこと。それは、普段の自らのドライビングが、いかにルーズなのかを教えられたようでもある。加えて想定外だったのは、混雑した首都高では、車線変更の際にクルマの長さが気になることだ。後続車に不安を感じさせないよう、しっかりスペースのある場所を探さなければならない。
エスカレードの大きなボディは結構手ごわい。それが日本の都市部を運転してみての正直な印象だ。さすが、アメリカンSUVの中でも最大級のサイズに属するだけのことはある。
■モダンながら“そびえ立つ”感覚が強いエクステリア
そんなエスカレードの最新モデルは、2020年に世界初公開された5代目モデル。日本では2021年夏にデリバリーが始まったばかりで、ボディは先代よりひと回り大型化し、ますます“そびえ立つ”感覚が強まった。
先代の縦長から、新型では横長へと大きく方向転換したヘッドライトにより、顔つきは随分異なっているけれど、全体的な雰囲気はさほど大きく変わらない。都会的なデザインで統一された昨今のキャデラック車らしく、先代はデザインがかなりモダンで、新型もまた、その延長線上にあるからだ。
新型のルックス、というか存在感は、ただただ立派だ。ギラギラとしたフロントグリルは大きく、ボンネットは常識外の高さで、威圧感がハンパない。このモデルを購入する人にとって、この力強さこそが大きな魅力なのだろう。
新型エスカレードは、20年以上の歴史において初めて6気筒エンジンが採用されたこと、また、ディーゼルエンジンがアメリカ本国向けに設定されたことがトピックとなった。しかし日本市場向けは、エスカレードの伝統であり、アメ車の魂ともいえるV8エンジンのみの設定となる。
6.2リッターという排気量は、日本はもちろんダウンサイジングが進む昨今のアメリカにおいても常識外れだ。
■有機ELディスプレイによる先進的なメーターパネル
キャデラックは、ゼネラルモーターズに属すブランドの中で最高峰に位置すると同時に、かつてはラグジュアリーなクーペとセダンを展開するブランドであった。しかし現在は市場の変化を受け、ラインナップ中のSUV比率が急上昇。本国アメリカ市場で展開されるモデルは7車種だが、そのうち5モデルがSUVという状況だ。日本に導入されるモデルも、5モデルのうち4車種がSUVとなっている。
エスカレードは、そんなキャデラックのフラッグシップSUVとして君臨している。それだけに、インテリアへの力の入れ具合も相当なものがあるというのがひしひしと伝わってくる。
中でもハイライトはインパネだ。ドライバーズシートに座った時に目の前に広がるのは、対角線の長さで38インチ(メータークラスターとその左右にあるディスプレイを合わせたサイズ)という巨大なディスプレイ。単に広いだけでなく、ドライバーを取り囲むように湾曲しているのが斬新だ。
また表示部が“四角くない”のも新しい。コレは、業界初の湾曲型有機ELディスプレイ採用で可能になったもの。見た目のインパクトに加え、スモークウインドウのように真っ黒の表面パネルに高輝度の発光を組み合わせた結果、乱反射がなく見やすいのも美点といえる。
それだけでも驚いてしまうが、新型エスカレードのインテリアは、アメ車が得意としていた本杢目パネルの上質な仕上げやセミアニリンレザーが張られたシートの座り心地の良さに加え、各部のトリムやスイッチ類のクオリティも大幅にアップ。インテリアの上質感は、1000万円オーバーのクルマとして文句なしのレベルに達しているのは大きな進化といえるだろう。
2世代ほど前のエスカレードは、「頑張ってはいるけれどヨーロッパ車にはリードを許す」というレベルにあったインテリアが、先代では「あと一歩でヨーロッパ車に追いつく」という段階までレベルアップし、新型ではついに「ヨーロッパのプレミアムカーを超えたかも」と思えるところまで到達した。この成長ぶりには、筆者も「ついにここまで来たか」と感慨深いものがある。
そんなエスカレードのもうひとつの自慢が、ヨーロッパの大型SUVに対して間違いなく勝っている室内スペースの広さだ。左右席が独立したセパレートタイプの2列目シートは当然のことながら、3列目シートまでゆったりとしていて実用的。3列目シートの広さと居住性の高さは、文句なしに量産SUVの中ではナンバーワンで、ロングドライブも楽勝だ。
ボディサイズが大きいのだから当然かもしれないが、3列目シートの実用性を求めるユーザーにとって、他のSUVに対する大きなアドバンテージとなることは揺るぎない事実である。
■乗りこなすには相当の技量が求められるエスカレード
新型エスカレードのドライビングフィールは、まるで洋上を優雅に進むクルーザーのようである。とにかくどっしりとしていて、高速クルージング時の突き進むような安定感はさすがのひと言。どこまでも走り続けたくなる。
アクセルペダルを踏み込むとドバッと圧倒的なトルクを発生するV8エンジンは、その一方、レスポンスの俊敏さや高回転域での軽快感もあって、意外といっては失礼だがドライビングプレジャーを感じさせてくれる。
電子制御による減衰力可変式ショックアブソーバーの採用に加え、リアサスペンションが左右独立式となったことで乗り心地が向上したことも、新型エスカレードのひとつのトピックだ。ただし、路面の細かい凹凸を拾いがちというラダーフレーム車らしい乗り味が残っており、高級サルーンほどの緻密さには欠けるものの、コレはある意味、個性の継承といえるかもしれない。
そんな新型エスカレードと時間を共にして感じたのは、ほかのモデルにはない唯一無二の魅力が、色あせるどころかますます濃密になったということ。それは、ラグジュアリーなインテリアや広い室内空間、そして、大きなボディから来る強い存在感などがもたらすものであり、日本市場で正規輸入モデルとして選べる他のSUVでは得られない独自の価値が新型エスカレードには詰まっている。
その一方、約1500万円にまで上昇したプライスタグや、駐車時だけでなく公道でも神経を使わされるボディの大きさなど、所有するには高いハードルがあるのも事実。お金を出しさえすれば買えるのではなく、乗りこなすには相当の技量が求められるため、ありきたりの言葉で表現するなら、高嶺の花といった存在なのだ。
つまり新型エスカレードは、それらのハードルを乗り超えた人だけが魅力を味わえるモデルである。まさに選ばれしオーナーだけの贅沢といえるだろう。
<SPECIFICATIONS>
☆スポーツ
ボディサイズ:L5400×W2065×H1930mm
車両重量:2740kg
駆動方式:4WD
エンジン:6156cc V型8気筒 OHV
トランスミッション:10速AT
最高出力:416馬力/5800回転
最大トルク:63.6kgf-m/4000回転
価格:1520万円
文/工藤貴宏
工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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