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映画監督・平野勝之「暮らしのアナログ物語」【3】BERARDのまな板

&GP / 2016年10月19日 20時0分

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映画監督・平野勝之「暮らしのアナログ物語」【3】BERARDのまな板

まな板というのは、一体、いつから存在するのでしょう?

おそらく食料を確保した人間が、それらを加工する過程から生まれたものでしょうから、想像を絶する昔から存在していたに違いありません。人間の使う道具としては、最も古く、最もシンプルな物である事は間違いなさそうです。

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■BERARD(ベラール)との出会い

僕は、それほど料理をする人間ではありません。

しかし、うちには、ご覧のようにBERARD(ベラール)というフランスのプロヴァンス地方のメーカーのカッティングボード、すなわち、まな板を三つ持っていて、いつも台所に、このようにぶら下がっています。

このBERARDの前は、味も素っ気もない、木製でもない、普通のまな板を使っていました。そのまな板は、あまり気に入っておらず、いつか長く使えるまな板が欲しいなと、ボンヤリと思っていました。

しかし、まな板の良いものとは、どういう物なのか?サッパリわからず、特に調べるわけでもなく、日々を過ごしていました。

そんなある日、今から4年ほど前でしょうか? ある方のブログの記事に目が釘付けになりました。

それが、このオリーブウッドを使用したBERARDを紹介する記事だったのです。

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■アウトドアで活躍するまな板

この写真は、一番小さいサイズのBERARDのまな板を、同じフランスのオピネルのナイフと共にアウトドアに持ち出して使用している様子を写したものです。オピネルのナイフも、軽く手軽で、質感も良く、BERARDととても相性が合います。

無骨なアウトドア道具と違い、まるでモデルのように絵になり、且つ、実用的です。

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僕は自転車にキャンプ道具を積んで旅をする人間です。

そのブログの記事の方も、登山を趣味としていて、このBERARDをアウトドアに使用しているようでした。だから最初はうちで使うと言うより、「キャンプで使える素敵な道具」として俄然興味を抱いたのです。

一番サイズの小さいものは、軽く、薄く、持ち手も付いていて吊るす事もできる、しかも味わいがあり、長く使用する事ができる。ソロキャンプの道具としては、これ以上ないものに思えました。

すぐに購入できる店を調べて、自転車を飛ばしてスッ飛んで行きました。

BERARDの製品は、オリーブの古木を職人が手作業で制作しています。歴史も古く、まな板だけではなく、いろいろなキッチン用品をオリーブウッドを使って作っていました。手入れは、決して洗剤を使ってはならず、時々、オリーブオイルを塗布するだけ。天然のものなので、木目がひとつひとつ全て違い、複数の入荷があれば、好みの木目を選ぶ楽しみもあります。

早速、一番小さいサイズを購入し、キャンプで実際使ってみました。

僕はテントの中では、ロウソクの灯りだけで過ごします。このBERARDは刻印のある側を調理に使い、裏をひっくり返してロウソクを固定し、ちょっとしたミニテーブルとしても活躍してくれたのです。

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■もう、まな板はいらない

以来、すっかり気に入ってしまった僕は、「うちでも使おう」「これが決定版」と、以前から欲しかった大きなまな板もBERARDにしてしまおう、と決心したのです。

後日、再び自転車を飛ばして、大きなまな板と、中ぐらいのサイズまで買い求めてしまいました。大きいサイズのものは、お財布にやさしくない値段ですが、これでまな板を買う事はもう無い、また、長い使用の事を考えると、納得はできました。

しかし、それだけではなく、大きいものは小さいサイズのものと違い、持ち手の部分のカーブのラインが非常に美しく作られており、形としても優れていてひどく惹かれてしまったのです。

以来約4年間、写真のように置いて、野菜を切ったり、肉を切ったりしています。この原稿を書いてる間も、ムズムズと愛おしくなり、オリーブオイルをぬりぬりしに台所に行ったぐらいです。

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■食べ物が美味しそうに見える道具

僕は、この写真のように、まな板だけの使い方だけでなく、ケーキやパンを置く、お皿のように使う事もあります。

キッチン道具とは何でしょう?

最近のもののように、機能、機能、だけで良いのでしょうか? もちろん、それらも大切な要素ですが、「食べ物が美味しそうに見える」と言うのが、実はキッチン道具に求められる最大の機能ではないでしょうか。

日本でも焼き物とか、器のわびさびが古くから伝統として存在します。

「まな板」というシンプル極まりない道具ではありますが、BERARDの道具を見ていると、キッチン道具あなどれず、と思ってしまいます。

「美味しそう」に見える、と言う事は、気持ちに直結し、食べ物を最大限に味わう事に繋がります。それは、つまり「しあわせ」を呼び込む、と言うことにならないでしょうか。

あまり料理をしない僕ではありますが、今日も台所にぶら下がっているBERARDが、今か今かと出番を待ってます。

たまにオリーブオイルを塗りながら、少しづつ自分流に変化していく天然の道具を眺めつつ、「そうだ、今日はカレーでも作ろうか」と、思ったりするのです。

 

(文・写真/平野勝之)

ひらのかつゆき/映画監督、作家

1964年生まれ。16歳『ある事件簿』でマンガ家デビュー。18歳から自主映画制作を始める。20歳の時に長編8ミリ映画『狂った触覚』で1985年度ぴあフィルムフェスティバル」初入選以降、3年連続入選。AV監督としても話題作を手掛ける。代表的な映画監督作品として『監督失格』(2011)『青春100キロ』(2016)など。

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