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[再現!文学ごはん]芥川龍之介『芋粥』の「芋粥」

&GP / 2016年12月2日 8時0分

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[再現!文学ごはん]芥川龍之介『芋粥』の「芋粥」

『芋粥』は芥川龍之介が『今昔物語』の中の一話をリメイクし、見事に心理劇として昇華させた短編です。文学史の授業などで習った覚えのある人も多いのではないでしょうか。

超おおざっぱに言いますと、大好きな芋粥を飽きるほど食べてみたい…、と夢想していた平凡な男が、藤原利仁という人に「じゃあ飽きるまで食べさせてやるよ」的な感じで屋敷に招かれます。

そこで予定通り大量の芋粥を供されるのですが、いざドカ盛り芋粥を前にしてみると「あ、なんかもういいや」となって、結局残すという話です。

……いや、もちろん、本当はこんな雑な内容ではありません。芥川龍之介らしい、知的で乾いているのにどこか色気のある筆致や、人間への独特な観察眼、距離感などが大変魅力的な小説です。

ともあれ、ここに出てくる「芋粥」は実は現代人が想像するおイモのお粥とはかなりかけ離れたものです。平安時代によく食べられたものらしく、薯蕷粥(しょよかゆ)とも呼ばれます。

 

■超カンタン!意外と美味しい“温スイーツ”

芥川は

芋粥とは山の芋を中に切込んで、それを甘葛の汁で煮た、粥のことを言うのである

と説明しています。

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今回はヤマノイモ属の中では最も手に入りやすい長芋を使いました。

“あまずらみせん” ともいう甘葛の汁でできた甘味料は、残念ながら現代ではほぼ消失してしまったものです。

同じく樹液から作られる甘味料ということで、メープルシロップを使ってみました。ただ、メープルはかなり風味が強いので砂糖と混合します。

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イモは

薄刃を器用に動かしながら、片端から削るように、勢いよく切る

とのこと。勢いよくというのはちょっと難易度が高いので、普通に鉛筆を削るようにそぎ切りにしました。

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水を沸かし、メープルシロップと砂糖で好みの甘さを作ります。

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そこにイモを入れて、歯ごたえを残す程度にサッと煮。

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できた! 超かんたん!

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そしてこれが意外に美味しい。ちょっとマズければと面白いとも思ったのですが(失礼)、いい意味で普通にイケちゃうのです。

さらりとした甘みの汁と、芋のシャクっとした歯触り。上品な汁粉のように食べられます。温かなスイーツなので、晩秋から冬にかけてはぴったりです。

もちろん、芋も甘味料も平安のそれとは違うのですが、たぶん面影くらいは感じられたはず!

芥川の小説は、文学作品として深刻に感じ入る楽しみかたもいいのですが、普通に純粋にかなり「面白い」ので、学生以来手に取っていないという方、ぜひ読み直してみてはいかがでしょうか。

>> 芥川龍之介『羅生門・鼻・芋粥』(KADOKAWA)

 

(取材・文/くぼきひろこ

C くぼきひろこ/ライター

美食・カルチャー・ライフスタイル・クルマ・ゴルフ・巷の美女etc……対象は様々に、雑誌・ウェブサイト等の各種媒体にて活動中のフリーライター。「人の仕事のすべて。そして、その仕事から生み出されるすべてのモノゴトが面白い!」と津々浦々の興味津々で取材・執筆を行う。

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