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世界の空港案内[TRIP:03] バラ空港(イギリス)

&GP / 2017年1月9日 21時0分

写真

世界の空港案内[TRIP:03] バラ空港(イギリス)

これまで世界100の国や地域で航空写真撮影をした経験から言うと、監督官庁がしっかりしていると言えば聞こえがいいが、日本の空港は融通が利かなく利便性が悪い。そのくせ書類の量は膨大。その内容は、万が一何かあった際には官僚が「こちらに落ち度はありません。悪いのは利用者であり航空会社です」と言えるようになっている。

そのためか、定期便が来ない小さな空港でもフェンスがあり、自由に楽しく飛ぼうという雰囲気はゼロ。これが小型機でも営業運航するとなると、法律は厳しくなる。さらに空港を造るとなると、大小にかかわらずいくつもの困難なハードルが待ち受ける。結果的に航空事業はコストが増え国際競争力がなくなってしまうという図式に陥っている。

航空の分野は日本よりも欧米が先進的で、安全に配慮しながらも利便性やコストを考えながら先進国の航空文化は育っている。そんな一例をお見せしたいのがこの空港。なんと、自然の砂浜を滑走路にして定期便が離発着しているのだ。

logan100 ▲駐機場に停まる定期便。取材時の機材はブリティッシュエアウェイズカラーで、後ろに見えるのは個人所有のパイパー社製の飛行機。なんとものどかなシーンである

砂浜といっても遠浅の固い砂地で、飛んでくる飛行機は、日本でも使用されている「DHC6ツインオッター」という座席数19の小型プロペラ機。

ここはイギリスはスコットランド、バラという名称の離島だ。

 

■砂浜上に仮想の滑走路が3本設定されている

日本なら、しっかりとした滑走路とターミナルビルを作り、当然のようにフェンスで周囲をぐるりと囲むだろう。しかしここは、自然の干潟をそのまま利用したエコな空港だ。英語では<エアポート>ではなく<アエロドローム>になり、空港より格下の飛行場扱いになるので、小さなターミナルと管制塔のような設備を立てればすぐに運用可能となる。周囲にフェンスはなく「吹き流しが立っていたら空港運用中なので砂浜に入らないように」と書かれた看板があるだけだ。

logan151 ▲砂浜にある看板には「吹き流しが立っているときは空港運用中。飛行機が離着陸しますので海岸から出てください」とある。右は仮想滑走路の図面が描かれている

ここは一応、仮想の滑走路が三本あり、陸側の滑走路端には滑走路番号(方位)が書かれた看板がある。しかしただの砂浜なので照明設備はない。だから夜間の運用はなし。ただし島で急患が発生したときは、島民が集まり車のライトを砂浜に向けてつけ滑走路が見えるようにするという配慮がとられている。

バラ島の人口は約1100人。産業は牧羊などで、大きなホテルはなく、宿泊施設は英国ではよくある「ベッド&ブレックファースト」と呼ばれる一般家庭の部屋に宿泊するものになる。文字通り朝食つきで、家主と英語で楽しく話す必要があるが、この島の情報が聴けるので楽しくもある。

私は、砂浜に着陸する飛行機の撮影がしたくて、日本からロンドン、グラスゴー経由で現地へと飛んだ。DHC6型機の窓から着陸シーンを見ていたら、機首を下げて前のめりに突っ込んでいくとビーチが見えてきた。あらかじめビーチに着陸すると知っていればいいが、客室乗務員もいない小さい飛行機だ。詳しい説明などなく、知らない人が見たら「何か問題が発生してどこかの砂浜に緊急着陸か?」と勘違いしてしまうかもしれない。

logan246 ▲岩と緑の丘を背景にDHC6型機が着陸。道路にはそんな珍しいシーンを見ようと観光バスが停まっているほか、キャンプしている人の姿も見える

そして車輪が海水をバシャバシャと巻き上げながら着陸。砂浜なので滑走路よりも柔らかいからなのか、着陸の衝撃はソフト。着陸後、客室ドアが開くとそこは海岸だった。

logan267 ▲満潮なのか少し水かさが増してきた海岸に着陸した飛行機。車輪が水をかき分けている様子がよく分かる。もちろん海水なので基地に戻ったら洗うのかもしれないが、DHC6型機は質実剛健の機体なので心配ない

この便は旅客だけでなく生活物資を輸送する重要なルートでもあり、私が乗ったフライトには新聞も積み込まれていた。若い女性が自家用車で空港まで新聞の束をとりに来ていたので、お昼頃には朝刊が各家庭に届くのかもしれない。

logan120 ▲管制塔のような建物と小さな空港ターミナルビル。実際に管制をしているのではなく、風向きや視程など空港情報をパイロットに伝えるもので、管制官はいない

この空港を見ると、滑走路を造らなくても運航できるエコなエアポートが先進国にもあるんだなと思う。それとともに、北米や欧州、ニュージーランドなどでは小型機がわりと気軽に飛べるようになっていて、飛行機が特別な乗り物でない事が伝わってくる。この点、日本はまだまだで、小さな飛行機が活躍できる社会になれば良いと思いながら再びDHC6型機に搭乗し、砂浜の滑走路からテイクオフしてバラ空港をあとにした。

 

(文・写真/チャーリィ古庄)

CF1605S_12956 チャーリィふるしょう/写真家・冒険写真家・フォトジャーナリスト

1972年東京生まれ、旅客機専門の航空写真家。国内外の航空会社、空港などの広報宣伝写真撮影を行ない旅客機が撮れるところなら世界中どこでも撮影に出向き、これまで100を超える国や地域に訪れ、世界で最も多くの航空会社に搭乗した「ギネス世界記録」を持つほか旅客機関連の著書、写真集は20冊を超える。キヤノンEOS学園講師。成田空港さくらの山に自身がプロデュースしたフライトショップ・チャーリイズをオープン(www.charlies.co.jp

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