働く女性の強い味方になる本って?文筆家・木村綾子さんがお悩み別に一冊セレクト。
Hanako.tokyo / 2021年5月26日 18時0分
ふと思い悩んだ時は、立ち止まって本を読んでみましょう。そこには生きるためのヒントが隠されているはず。今回はHanako.tokyo連載でもおなじみの文筆家・木村綾子さんがセレクトしたお悩み別に読んでもらいたい本をご紹介!
1.【フリーとしてやっていけるか不安】『東京を生きる(雨宮まみ)』
「フリーに転身して、全てを一人でやらなきゃいけない環境になりました。お作法的なものが全く分からなくて苦労しています。常に不安と戦っていて、「私この先大丈夫なの!!」と心配になります。」
『東京を生きる』(大和書房)「生々しく、ヒリヒリしていて、だけど愛おしい」(木村さん)
これは著者の雨宮まみさんが、東京で過ごした日々を綴ったエッセイ集。お金、美しさ、努力、退屈、女友達、居場所、そして、幸せ…。綴られる端々に自分の気配を感じるほどに生々しく、ヒリヒリしていて、だけどどとても愛おしい。地方出身の人には刺さる本です。生まれる場所は選べないけど、生きる場所は選べる。「私は私で決めて、いまここで生きているんだ」っていう選択を裏付けてくれる「時間」という保証が欲しかった。
最近すごく感じているのは、私たちは「何者か」になるのではなく、「自分自身」になるために生きてるんだなってこと。モデルや女優、タレント、その他にもこの世の中にはあらゆる肩書きがあります。でも、その肩書きを得たからといって、それは記号でしかない。大切なのは、「自分とはどんな人間なのか」を自分で知っていくことなんですよね。自分が知って、はじめて他人とともに生きられる。『東京を生きる』は、悩んだり失敗したり、傷ついたり逃げたくなったり、誰かに人生の責任を押し付けたくなったりする日々の中で、雨宮まみが雨宮まみになっていった軌跡を感じられます。日常の中で消化しきれない感情や問題に、ふと立ち止まってしまったとき、この本が存在していることがどれほど頼もしいかも知れません。
2.【人の顔色ばかりを気にしてしまう】『みんなの「わがまま」入門(富永京子)』
「子供の頃、部活の影響で機嫌や顔色ばかりをついつい伺ってしまう癖が自然と身に付きました。大人になってからもその癖が抜けなくて、誰かと話していても「ひょっとしたら今、機嫌を悪くさせちゃったかな」とか、つい余計なことまで考えてしまいます。」
きっと、「わがまま」を「言う」ことにも「聞く」ことにも、恐怖心や抵抗感が染み付いちゃったんだろうなって思ったの。それでオススメしたいのが、『みんなの「わがまま」入門』。これは、自分の意見を言葉にすることや、行動としてそれを示すことに、どうして人は臆病になってしまうのかを社会学の観点から考えた入門書なんだ。「わがまま」っていう感情を掘り下げていくことで、自分の意見とは異なる他人や社会と共存する方法を、読者に問いかけながら一緒に探っていくの。私たちの生活に落とし込んでくれてて、分かりやすいでしょ!?「社会学」って難しそうに思われがちだけど、人間とか社会とかって曖昧な存在の意味を読み解いて、言葉で説明してくれるって考えたら、有り難い学問だよね。
3.【年齢に合ったおしゃれを楽しみたい】『40歳までにオシャレになりたい!(トミヤマユキコ)』&『オシャレな人って思われたい!(蜂なゆか)』
「30代に突入し、何年も着れてた服や好きで毎シーズン買ってたブランドの服がしっくりこなくなってきました。年齢に合ったおしゃれを楽しめるようになりたいです!」
ともに扶桑社出版/2018年初版刊行
タイプは違いますが、どちらも、オシャレにまつわる悩みや葛藤を赤裸々に綴りながら、オシャレを通して自分と向き合っていく、痛快で実用的でもあるエッセイです。
トヤマユキコさんの本には、“おもしろい服好き”を自認している彼女が、個性的なファッションを選んで「オシャレ圏外」に出ることで、世間のファッションチェックをかわし続けてきた過去を乗り越えるべく、試行錯誤を重ねる様が描かれてます。雑誌を参考にしたり、自腹切って買い物をしたり、プロの手ほどきを受けたりしつつ、自分で自分の見た目をコントロールする術を身につけていくから、同志を得たような気持ちで読めるはず。
峰なゆかさんの本は、過去の経験から「非オシャレな人がオシャレを頑張ろうとすればするほどオシャレからは遠ざかってしまうこと」を理解し、それならせめて、オシャレな人って錯覚されるような人を目指そう!って観点が斬新。ファッションはもちろん、ライフスタイルそのものの美学を観察&分析しているから、普段あんまり人に聞けないような情報も得られます。
4.【まともな恋愛が、いつもできない】『漫画みたいな恋ください(鳥飼茜)』
「私は恋愛に関して結構こじらせてしまいます。まともな恋愛がいつもできません。好きになると肝心なこととかが聞けなくなってしまいます。もっと素直にサラッて聞けたら良いのにとは思っているのですが…。」
『漫画みたいな恋ください』(筑摩書房)
漫画家の鳥飼茜さんの日記本。付き合って1年ちょっとになる彼とのこれからについてや、前夫との間にできた息子との生活、仕事の悩み、親きょうだいや友人関係…。“ここまで書くか!”ってほど赤裸々に綴られてるの。人と人って、圧倒的な“分かり合えなさ”と“伝わらなさ”を抱え持って暮らしてるんだなぁ…、と改めて思ったんだよね。同じもの見ても感じ方が違うのは当然だし、あのとき言葉ではああ言ったけど本音はこうだった、とかザラだし。でも、だからこそ、それでも一緒に居続けることを諦めたくない相手は貴重っていうか。彼女が綴った、何万字もの不満と不安に、なぜか励まされもしたんだ。
ゲストのお悩み、解決するのはこの一冊!木村綾子の『あなたに効く本、処方します。』
木村綾子の『あなたに効く本、処方します。』
文筆家・木村綾子さんがゲストのエピソードに合わせて本を処方していくこちらの連載。さまざまな業界で活躍する「働く女性」の背中を押す、木村さんおすすめの一冊とは?(第1水曜日更新)
連載一覧ページはこちらから。
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