英語の「Yes」と日本語の「はい」は同じとは限らない。“ダイバーシティしぐさ”の心得とは

HARBOR BUSINESS Online / 2019年1月18日 15時31分

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日本語と外国語の違いを度外視すると起きやすくなるミスコミュニケーションについて解説

 こんにちは。微表情研究家の清水建二です。本日は、前回、前々回から続く「清水建二の微表情学」のスピンオフである万国共通のしぐさを学ぶシリーズ第三回目です。

 今回は、しぐさの断片的な現れである微動作からウソや相手の真の想いを察する方法について紹介します。

 しぐさからウソを見抜く系の書籍、特に翻訳本(Web等の記事含む)に書かれているウソのサインとして、「僅かな頷き」が挙げられているのを散見します。

「頷き」は肯定を示す万国共通のしぐさです。「僅かな」というのは微動作という意味です。微動作とは、抑制された感情や意図が断片的な身体動作として現れる現象のことでした。

 例えば、質問者が「あなたはウソをついていますか?」と回答者に質問します。「いいえ」と回答者が答え、そこに僅かに頷きが伴うとします。このとき、回答者はウソをついている可能性が高い、と解説されます。

 これは、「いいえ」という否定語と「はい」という肯定を示すしぐさが言動不一致の状態として起こっており、コントロールの難しい微動作の意味が優先されるということです。一見、簡単なウソ検知法のように思えます。

 しかし、このウソ検知法には注意が必要です。英語と日本語とで「はい」「いいえ」の意味が異なることがああるからです。例えば、美容院で頭を洗っているときのシーンを想像して下さい。

美容師:かゆいところございませんか?

あなた:はい、ありません。

 日本語として意思伝達できています。それでは次の場合はどうでしょうか。

美容師:かゆいところございませんか?

あなた:いいえ、ありません。

 なんとこれも意思伝達できてしまっています。

 つまり、「はい」と「いいえ」の意味が文脈によって変わってしまうのです。英語では変わりません。常に肯定はYesですし、否定はNOです。他の例で紹介します。

◆翻訳本や外国のウソ検知研究を鵜呑みにしてはいけない理由

Interviewer(質問者): Do you like snakes?(ヘビは好きですか?)

Interviewee(回答者): No, I don’t.(いいえ、嫌いです。)

Interviewer(質問者): Don’t you like snakes?(ヘビは嫌いですか?)

Interviewee回答者) : No, I don’t.(はい、嫌いです。)

Interviewer(質問者): Don’t you like snakes, do you?(ヘビが嫌いなのですね?)

Interviewee(回答者): No, I don’t.(はい、嫌いです。)

 いかがでしょうか。英語は日本語と異なり、肯定・否定の意味が明瞭であることがわかると思います。

 もし、日本語で頷きの微動作をウソのサインとして用いるには、肯定形で質問する必要があります。例えば、

 質問者:あなたはその事実を知っていましたか?

 回答者:いいえ、知りませんでした。

 回答者が「いいえ」と言いながら、頷きの微動作を見せたら要注意ということになります。

 ただ、私たち日本人は、直接的な質問が相手の気分を害する恐れがあることを知っているため、ズバッと直接質問することを避け、間接的に質問する傾向にあります。記者会見などでよく聞かれるのは次のような言い回しです。

 質問者:あなたはその事実を知らなかったのですか?

 回答者:はい、知りませんでした。

 こうなると「はい」と頷きは言動一致となるため、ウソのサインとしては使えなくなってしまいます。翻訳本や海外の研究知見を基にした記事を読み解く上ではこうした日本語特有の事情を配慮したものでない限り、書かれている知見をそのまま使うことはオススメしません。

 以上のようにウソのサインの正しい解釈の一例を解説しましたが、一点、注意を喚起したいと思います。

 それは、ウソを見抜くということは一つのサインだけを頼りにかつ断定的に行えるわけではないため、実用性を高めるには相当のトレーニングとウソ科学に関する知識が必要だということです。

◆「首傾げ」に気付き、ミス・コミュニケーションを防止しよう

 そうとは言っても相当のトレーニングは大変なので、本稿の最後にトレーニングなしですぐに使えるしぐさと微動作について紹介したいと思います。

 ここで紹介するしぐさは万国共通ではありませんが、私たち日本人がよくするしぐさです。それは「首傾げ」です。

 意味は、ご存知のとおり「不確か」です。「それは確かですか?」という問いに「確かです。」と答えながら首傾げが僅かに起こるシーンを、私は日常的にも様々な映像分析の中でも日々目にします。

 この微動作を目にしたら本当に確かかどうか確かめてみると良いでしょう。

 部長:社員全員の健康診断が終わったことを確認しましたか?何か問題はありませんでしたか?

 担当社員:(僅かに首を傾げながら)はい、終わりました。問題ございません。

 このやり取りはある実例をもとに少し手を加えたものです。部長の「確認しましたか?」という問いは直接的です。「問題ありませんでしたか?」という問いは間接的です。

 担当社員の「はい」は前者の問いには肯定の意味を、後者の問いには否定の意味を帯びています。「首傾げ」は肯定・否定を考える必要がないところが便利です。肯定・否定どちらにせよ、担当社員は自分の発言に「不確か」という想いを抱いていると推測できるのです。

 ちなみに後日わかったことですが、担当社員のこの発言時において健康診断をしていない社員がいたことがわかりました。この社員さんはウソをつくつもりはなかったと思います。

 きちんと確認していなかったため、自信の発言の自信のなさが「首傾げ」という微動作に現れたのだと考えられます。

「首傾げ」は本当によく観られるしぐさです。コミュニケーションするときにちょっと気を付ければ簡単に見つけることが出来るでしょう。トレーニングはいりません。相手をちゃんと見て、質問をし、話を聞けばよいのです。

「首傾げ」が起きたら、一呼吸。相手に「それ、確か?」と聞いてみましょう。ミス・コミュニケーションがグッと減るでしょう。

【清水建二】

株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。

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