米国が「細胞培養肉」の開発・生産を食品として認める。これからは実験室で食肉を作る時代?

HARBOR BUSINESS Online / 2019年2月19日 15時31分

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ボトルの中で培養・増殖される培養肉

 米国農務省(USDA)と食品医薬品局(FDA)は2018年11月、家畜や家禽の細胞を培養して生産する「細胞培養肉」に対し、共同して規制・監督してゆく旨のステートメントを発表した。実験室のシャーレの中で培養・増殖される再生医療用の皮膚のように、食用肉も細胞から培養・増殖することが可能になったという。

◆細胞培養肉も「生物学的には同じ筋肉組織」というが……

「細胞培養肉」とは、生きた家畜や家禽から筋肉細胞を採取、それを実験室の培養培地の中で増殖させ、筋肉組織を作るというもの。家畜や家禽の肉は人々にとって主要なたんぱく源だが、今後40年で世界の食肉需要はさらに高まり、従来の畜産ではその必要量を満たすことはできないと考えられている。

 また、広大な土地と水、エネルギーを多用する従来の畜産に対して、細胞培養肉であれば水や土地を9割以上、二酸化炭素排出量を7~9割削減できるとの試算もある。地球温暖化の視点から見ても、細胞培養肉のほうが持続可能であるとして細胞培養肉の研究が進められている。

 しかし、従来の畜産による食肉と細胞培養肉は「生物学的に同じ筋肉組織である」と言われても、実験室の培地の中で増殖させた筋肉組織が同じ食品として受け入れられるのか、また、食品として安全性について消費者としては疑念が残るところだ。

 USDAとFDAは2018年7月に細胞培養食品に関する公聴会を開催し、細胞培養肉の研究を進める企業や研究者、消費者等の意見を聴取した。

◆消費者団体、培養液の汚染を懸念

 700万人の読者を持つ消費者向け情報誌「コンシューマー・レポート」を発行するNGO団体「コンシューマーズ・ユニオン」の上級科学者であるマイケル・ハンセン博士は公聴会で意見陳述を行った。

 博士は細胞培養肉の安全性について、こう懸念を示した。

「この新しい技術は食用動物から細胞を取り出し、ビタミン、脂質、アミノ酸及びウシ胎児血清を含む成長ホルモンなどが入った増殖培地で、それらの細胞を増殖・分化させる。しかし、この培養液には動物細胞が含まれているため、病気の原因となる細菌や真菌、ウィルス、マイコプラズマで汚染される可能性がある。消費者に細胞培養肉の安全性を保証するためには実験室で製造された肉の評価は必須である」

◆消費者に分かるような名称を

 また、細胞培養肉が従来の食肉と異なることを消費者に知らせ、消費者の選択に資することが重要で、そのためには違いが分かる名称で表示するべきであるとした。

 細胞培養肉の名称について、コンシューマー・レポートが全国の消費者に電話アンケートを行った結果、最も多かったのが「実験室で作られた肉(lab-grown meat)」で、次いで「人工肉または合成肉」が多かった。

 FDAが例示する「養殖肉」や「クリーン・ミート」では、どのように生産されたどんな肉かはわからないため「あまり選ばれなかった」という。消費者団体や食肉業界からは、従来の食肉と区別がつき、生産方法が分かるような表示や、安全性の確保を求める声が上がっている。

<取材・文/上林裕子>

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