忍び寄る世界恐慌の足音。注視しておくべきポイントとは?

HARBOR BUSINESS Online / 2019年3月5日 8時32分

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<2つの経済指標が示す”大恐慌の足音”>アメリカ国債の利回りの動きに注目。これまでの歴史から逆イールドカーブの発生が起きたらリセッションは近い。またアメリカの中古住宅販売件数も低下の兆しがあり、景気減退を匂わせている

 株、為替、不動産から仮想通貨まで、大きな成功を収めた7人に取材を敢行した。忍び寄る恐慌を前に、果たして、金持ちたちは何に備え、資産をどこに張ろうとしているのか? 『金持ちが考えたこと一覧』と題して考えるシリーズ。まずは現在の世界的な経済状況から備えが必要な理由を整理した。

◆さまざまな経済指標が示唆する世界的な景気後退の兆候とは!?

 消費税増税や社会保険料の引き上げによって、国民の可処分所得は減る一方。また、国の債務超過は過去最大を更新するなど、日本の景気は先行きが極めて不透明だ。

「’19年は減速の年、’20年は景気後退の年になるでしょう。世界的にも借金バブルの反動で、同時不況が到来すると考えられます」

 こう予測するのは、経済アナリストの中原圭介氏だ。

「’08年のリーマンショック後の金融緩和により低金利が続き、あらゆる国で債務が増えすぎたのが最大の要因。現在、世界の合計債務は247兆ドル。これは前回の不況前の’07年当時の1.7倍にも及びます。借金に依存した経済がいずれ行き詰まり、不況が起きるのは歴史的にも明らかです」

 中原氏が予測する不況の震源地はアメリカ。その根拠となるのは、「中古住宅販売件数」の推移だ。

「’17年11月に天井をつけてからトレンドは一変。住宅価格の高騰やローン金利の上昇を背景に下落が顕著になってきています。この流れが不況の前触れを示すサインに見える。というのも過去、’06年の秋口に住宅関連の指標が悪化すると’07年にパリバショックが勃発し、’08年のリーマンショックへと連鎖していきました。そう考えると、波乱の相場に備える“守りの姿勢”は欠かせない。日経平均で言うなら1万8000円を割り込む事態を想定しておくべき」

 エコノミストのエミン・ユルマズ氏も、いずれ世界的な恐慌が来ると予測を立てる一人。ただし、その時期は「皆が思うより少し遅れて来る」と分析する。

「アメリカで言えば、突発的なリスクとして私が懸念しているのはトランプ大統領にかけられたロシア疑惑。側近が続々と逮捕されていますが、大統領の辞職に及んだら大恐慌の引き金になりかねません。逆にそれさえ起こらなければ、’19年に限って言えば株高のシナリオも考えられます。『恐慌が来るぞ』と皆が身構えているうちは来ませんし、複数の指標が“これから”であることを物語っています」

 エミン氏が注視するのは、アメリカの国債利回り。短期と長期、2つの金利差の相関から景況感を読み解けるのだと説く。

「短期の利回りが長期の利回りを超える『逆イールドカーブ』は景気後退の兆候としても知られ、’19年中にも起こる可能性がある。これが起きたら強力なシグナルとして捉えるべき。また個人的に最も参考にしているマクロ指標のLEI(景気先行指標)とCEI(一致指数)を見ても現時点で景気後退の兆しはない。これらの指標が下向きになってから恐慌は訪れるはず。数値として表れてから半年から2年のタイムラグがあるでしょう」

 忍び寄る恐慌を前に、我々は何をすべきか――

<世界経済を読み解くKey Word>

1 世界の合計債務247兆ドル

1ドル109円計算で2京7000兆円と天文学な数字に。IIF(世界金融協会)のデータによると、世界の借金は’00年の80兆ドル(9000兆円)から約3倍、リーマンショック前から70兆ドルも上積み。「アメリカではジャンク債も増加。今年はデフォルト率も上昇するのでは」(中原氏)

2 米国の「中古住宅販売件数」

米不動産業者協会(NAR)が毎月25日に発表する、アメリカの一戸建て中古住宅の動向を示す指標。アメリカでは中古住宅販売の規模が新築と比べ大きく成熟しているため、景気変動に対する先行性が高いと言われている。サブプライムローン問題以降、注目度が上がっている指標だ

3 逆イールドカーブ

短期国債の利回りが長期国債の利回りを超える現象。投資家がたとえ利回りが低くても、長期で資金が拘束される投資を選ぶことは、短期の経済見通しが暗いことを意味する。1955年から今までに起きた9つの景気後退を6か月から2年前に予測している

4 LEIとCEI

米国の民間調査機関コンファレンス・ボードが作成する混合指数。LEIは米国の景気予想に、CEIは景気後退の開始と終了時期を確認するのに用いられる。「LEIは米国の経済成長速度の減速を示唆しているが、まだ明確に下向きではない」(エミン氏)

【中原圭介氏】

経済アナリスト。’70年、茨城県生まれ。アセットベストパートナーズの経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。著書・連載多数

【エミン・ユルマズ氏】

エコノミスト。ルコ出身。’97年に日本留学、東京大学大学院にて生命工学修士を取得。野村證券を経て’16年、複眼経済塾取締役・塾頭に就任

取材・文/高城 泰(ミドルマン) アケミン 岩本 学 仲田舞衣 嘉村 翔 櫻井一樹

図版/ミューズグラフィック ブリッツアーティストエージェンシー

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