パチンコ店、「集客イベント」の断末魔。しかし、業界もホール側もむしろ禁止に賛同?

HARBOR BUSINESS Online / 2019年3月30日 8時33分

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てぃらいみ / PIXTA(ピクスタ)

◆規制強化される「取材系イベント」

 パチンコ店における集客イベントの主流となった「取材系イベント」が、厳しく規制されはじめている。

 パチンコ店では、出玉を謳ったイベントは、常に警察行政の厳しいチェックを受けており、ある程度地域差はあるものの、「新台入替」や「リニューアルオープン(=設備等の変更)」等の事実に基づく宣伝や、新しい景品の入荷告知(※特定の機種を示唆していない景品に限る)くらいに抑えられている。

 これはパチンコ店が「著しく客の射幸心を煽らない」ための措置であり、客の射幸心を煽る事は風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)で厳しく規制されているからだ。

 そのような規制の中で、パチンコ店が「集客ツール」として利用しているのが、所謂「来店系イベント」、「取材系イベント」である。しかしこれらの「来店系イベント」、「取材系イベント」も昨年末あたりから、各地域にあるパチンコ店の組合の名のもとに、自主規制という名の禁止措置が取られ始めている。

 パチンコ店の「取材系イベント」とは何なのか? その「イベント」を自ら禁じるパチンコ業界の思惑は何なのか?

◆集客イベントの「三店方式」

 パチンコ店の「取材系イベント」については、過去記事(2018年12月22日HBO「取材系イベントなども規制強化の方向。なぜ、パチンコ店の広告だけ規制されるのか?」)にも書いたが、簡単に説明すれば、

「パチンコ店の依頼を受けた広告会社が、パチンコ・パチスロライターや専属タレントらを、取材という名目でパチンコ店に派遣する。この取材派遣を、SNS等を通じて広く告知し集客を図るイベント」

の事である。

 SNSでは、取材日、取材店舗が公表されており、ライターやタレントのSNSをフォローしている一般ファンがその当日にお店に押し掛けるという仕組み。

 勿論、お店に来る一般ファンの目的は、(一部の人を除いて)ライターやタレントに会う事ではない。その日、その店の出玉を期待しているのだ。

 このような取材イベントでは、「〇〇機種徹底取材」という名のもとで、特定の機種を示唆していたり、取材当日のSNSの更新で「○○の機種が良い感じ」と伝えたりする。

 この「取材系イベント」のポイントは、パチンコ店が直接宣伝を行っていないという体裁が保てる事だ。あくまで取材をしているのは、雑誌や動画の媒体であり、パチンコ店はその取材の協力をしているという形を取れるのだ。いわば体のいい「広告宣伝の三店方式」である。

 まったくパチンコを打たない人でも、店頭に「○○さん来店!」というポスターを見た人は多くいるだろう。一般的にはまったく知名度のない人が来店して、果たして何の効果があるのだろうか不思議に思う人がいたかも知れないが、ざっといえば、こんなカラクリなのだ。

◆取材系イベントを禁じたい業界の思惑

 中身のカラクリはどうであれ、法律によって広告宣伝が厳しく規制されているパチンコ業界が、それでも集客が図れる「取材系イベント」を、自らが禁ずるのはなぜなのか。

 その第一の理由は、昨今のギャンブル等依存症対策の趣旨を慮っての事であることは間違いない。

 パチンコ業界は数年来、この依存問題と真摯に向き合ってきた。時には、業界全体の売上を下げたり、ファンを失ったりするかも知れないリスクを負った施策も、身を削って実施してきた。そのようななかで、むやみに客の射幸心を煽るような広告宣伝手法は、依存対策を推進するパチンコ業界にとって、ある種の「相反行為」でもある。

 依存対策第一を謳うパチンコ業界にとって、このような宣伝行為は目の上のたんこぶも同じだ。

 また一方、行き過ぎた取材系イベントは、間違いなく警察行政からも厳しく指導される。仮に警察行政から厳しく指摘された場合、今時点で許されている広告宣伝の範囲が更に制限される可能性もある。

 そのような事態を避けたい業界としては、自主規制という先手を打ったという側面もある。自らが、自らの宣伝手段を規制するという苦渋の決断もやむなしと言ったところだろう。

◆取材系イベントに対するホール現場のリアル

 この取材系イベントについて、ホール現場の声は、業界全体のそれとはちょっと違う。何人かのホール店長らに話を聞いてみたが、この取材系イベントについて「推進派」、「反対派」の意見はそれぞれだ。

「推進派」の意見は主に、取材系イベントを実施する事によって、大きな集客を図れるという事。

 パチスロの高設定台などで相応の出玉を放出するので、自店の利益は削る事になるが、それでもホールが賑わい、お客様が喜んでくれるのだから良いだろうというのがほとんどだ。

 勿論、更なる思惑もある。曜日や日にちの規則性を持って取材系イベントを実施すれば、図らずも客はその特定の曜日や日付を、ホールが出玉で頑張る日という風に認識してくれる(パチンコ店は風営法により、「特定の日」や「特定の機種」を宣伝する事を禁じられている)。

 すべては営業努力である、というのが「推進派」の意見。

 一方、「反対派」の意見はどうか。

◆「取材系イベント」は通常営業に繋がらない

 取材系イベントは、大きな集客効果を図れるが、その集客が今後のパチンコ店営業には繋がらないという。一時的に集客しても、取材イベント当日に来店した客は、翌日には別の「取材店」に移動して、お店の常連客には絶対にならないというのだ。

 イベント目当ての一見さんに出玉を渡すくらいなら、月に何度も来てくれる常連客に還元すべきだという。

 実際に、取材系イベント日には、SNS活用に長けている若年層の客が大幅に増えるので、年配の常連客の中には「その日にはあえて来店しない」という人も多くいる。お店が薄利で営業する日に、常連客が来店しないなんて本末転倒もいいところだ。

◆実施禁止区域でも「隠語」で集客!?

 最後に。業界内外に様々な意見のあるこの「取材系イベント」。

 筆者も色々調べてみたのだが、その実施が禁じられた地域において、宣伝する側のライターやタレントが、「○○区○○(住所)のパチンコ店」などと、具体的な店名を明かさずイベントを告知していたり、実施ホール名と似通った芸能人やアニメキャラクターの写真を貼りユーザーにホール名を連想させるような手法を取っていたりするのには流石に断末魔のようで失笑した。

 いまだ日本全国に10000店ほどのパチンコホールがあり、3000以上の会社がある。

 市場規模は年々縮小し、ファン離れのスピードも加速していくなか、互いに競合し、過当な競争を余儀なくされるホールが、いくら依存問題が大事だとしても、揃いも揃って「右向け右」になるのは至難の業だ。

 それは十分に理解できるが、しかし筆者には、この取材系イベントが、パチンコ業界を維持発展させる施策にはどうしても思えない。

<文・安達 夕 @yuu_adachi>

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