「このままいけば恐ろしいことに。安倍内閣は“亡国の政権”だ」<小沢一郎ロングインタビュー第2回>

HARBOR BUSINESS Online / 2019年6月17日 8時31分

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「結集」──小沢一郎氏が代表を務めた自由党のポスターにあった2文字が今、実現に向け動き出した。4月26日未明、国民民主党と自由党が合流を決定。野党統一候補の調整が進む中、今夏に行われる参議院選挙のカギを握る小沢氏に戦略・戦術を聞いた。

◆安倍首相ではトランプ大統領に太刀打ちできない

 安倍政権はもともと「戦後レジームからの脱却」を掲げて発足した。だが、その対米従属ぶりは歴代自民党政権の中でも際立っている。国賓として5月25日に来日したトランプ米大統領は、ゴルフや大相撲観戦、炉端焼き、新天皇との会見と連日の「接待外交」でもてなされた。

「僕はトランプ大統領と話したことはありません。ただ、言動を聞いていると、ある意味では異色の大統領。思ったことを率直に口にする人物のようです。はっきりしているのは、安倍政権を信用する気持ちなど、これっぽっちもないこと。それが彼の流儀。欧州の同盟国に対しても平気で注文をつけていますから、ましてや日本にはなおさらです。利用できるときだけ利用する。

 非常に友好的に見えるのは、日本が米国のモノを買ってくれているからです。貿易交渉も今は中国とやり合っていますが、風向きが変われば、矛先はすぐに日本に向く。『アメリカファースト』一辺倒なので、手ごわいと言えば手ごわい相手です。安倍首相ではとても太刀打ちできません」

◆富の公平な配分、国民の暮らしを第一に考える政権を

 小沢氏はこれまで記者会見などの場で安倍政権について「基本的な政治への認識が野党とはまったく違う」と批判してきた。あらためて現政権の問題点とは何か。

「まずは政治の基本的な理念。安倍政権は競争第一、優勝劣敗、弱肉強食という考え方です。これはもはや政治とは言えません。初期の資本主義国家では貧富の差が拡大し、『これでは社会が持たない』というところまで行き着いた。そこから労働法を作り、社会保障制度ができていきました。

 英国では『ゆりかごから墓場まで』で知られる手厚い福祉国家が実現した。資本主義は民主主義という政治体制と一体となり、生き延びてきたんです。

 ところが、安倍政権の進める新自由主義は、もういちど原始資本主義のころに戻そうという考え方。規制撤廃の名のもとに、セーフティネットを次々と潰してきた。これは時代の流れに逆行した、政治の本質とはまったく反する動きです。絶対に許してはいけない」

 小沢氏は民主党代表時代、小泉純一郎首相や竹中平蔵経済財政担当相(当時)の構造改革路線に対し、「国民の生活が第一」をスローガンに掲げた。この言葉は民主党が2012年、消費増税を巡って分裂すると、そのまま新党の党名になっている。小沢氏の政治家としての師である田中角栄元首相も「政治とは何か。生活である」との言葉を遺した。

「野党が目指すのは国の富の公平な配分。国民の暮らしを第一に考える政権、政治体制を打ち立てなければなりません」

◆都市と地方、正規雇用と非正規雇用、さまざまな格差を解消していきたい

 日本は米国、中国に次ぐ世界第3位の経済大国でありながら、先進国の中でも貧困率の高さで知られる。厚生労働省の国民生活基礎調査によれば、7人に1人が貧困のさなかにある。母と子の一人親世帯では半数以上が貧困に苦しんでいる。

「安倍政権が新自由主義的な政策をとり続けた結果、日本中でさまざまな格差が広がっています。都市と地方の格差。正規雇用と非正規の格差。社会保障制度でも給付が減り、負担だけが増えて生じる格差。

 都市部では非正規雇用であっても、それでもまだ余裕があります。当面の生活に困っているわけではない。だから、20~30代の層はもともと投票率が低い。

 投票に来ても、『今のままでいいじゃないか。せっかく給料も出ているんだから。野党は余計なことを言わないでくれ』という考えで、与党を支持している人も多いようです。僕はその人たちに言いたい。『景気が悪くなったら、真っ先に首を切られるのは皆さんですよ』と」

 今や就業者の約40%が年間300万円以下の収入しかない。生活保護水準以下の者は20%以上を占める。その多くは40歳未満。相当数が健康保険に未加入で、年金保険料を払っていない。彼らの声を代弁する政党は見当たらないのが現状だ。新生国民民主党が「ロストジェネレーション」の支持を取りつけていくには何が必要なのか。

「発想を転換して思い切った政策を打ち出さなければいけません。僕は非正規雇用のクオータ制導入を考えています」

 クオータ制とは企業の雇用に一定数の割り当てを設ける制度。女性やマイノリティーの社会進出を促し、働きやすい社会を作ることを目指すものだ。

「『非正規をゼロに』と企業に要請するのは現実的とは言えません。『非正規を正社員並みの待遇に』といっても、事態が進展するとは思えない。コストダウンのために経営者は非正規を増やしてきた経緯があります。

 企業も雇用を守らなければならないので、コスト意識には敏感です。だったら、「非正規は○%まで」と上限を定めればいい。パーセンテージは議論するとして、政権交代したら、この非正規クオータ制を法制化したいと僕は思っています」

◆こんなバカな政治は早くやめさせないといけない

 中国経済の落ち込みもあり、世界的な景気後退局面の到来が指摘されている。特に深刻なのは地方だ。小沢氏の地元も決して例外ではない。

「僕の生まれ故郷は岩手県の旧水沢市。合併して現在は奥州市となりました。人口は11万9000人ですが、毎年1000人ずつ減少しています。出生率・死亡率が今のままだと、2100年には日本の人口が現在の半分以下、5000万人になります。奥州市の人口はそのころ8万人減で2〜3万人。半分以下どころの騒ぎではありません。しかも大半が高齢者。これでは地域社会は成り立たない」

 地方の現状を知るだけに小沢氏の憂慮は深い。言葉を選びながら吐露した。

「こんなバカな政治は本当に早くやめさせないといけない。このまま行けば、恐ろしいことになる。安倍内閣は“亡国の政権”です」

 国の統治もたがが緩んできている。安倍首相の資質と長期政権によるたるみによるものだろう。森友学園問題、加計学園問題、統計不正と、かつてなら一発で内閣が吹っ飛ぶほどの不祥事が相次いでいるにも関わらず、政権は安泰だ。

「安倍内閣の閣僚や与党幹部は何かあると、全部官僚のせいにします。これでは誰もついてこない。役人も『それなら、一番無難な現状維持で。余計なことはしないでおこう』となる。政治家がしっかりした展望と姿勢を見せ、責任を取りさえすれば、霞が関はついてきます」

【小沢一郎氏プロフィール】

1942年岩手県水沢市(現奥州市)生まれ。1969年、自民党公認で衆議院選挙に出馬し、27歳で初当選。田中角栄氏の薫陶を受ける。1987年に竹下登、金丸信氏らと経世会を旗揚げ。’89年に幹事長に就任するなど若くして自民党の要職についたが、1993年に自民党を離党し細川連立政権樹立に尽力。2009年の鳩山政権では幹事長に就任。2012年、民主党を離党し自由党を結党するも2019年に国民民主党へ合流。今年12月28日、在職50年を迎え名誉議員となる。

文/片田直久 写真/大房千夏

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