「夢のある前向きな政策。政権交代のためにはそれが必要だ」小沢一郎ロングインタビュー第3回

HARBOR BUSINESS Online / 2019年6月22日 15時31分

写真

「結集」──小沢一郎氏が代表を務めた自由党のポスターにあった2文字が今、実現に向け動き出した。4月26日未明、国民民主党と自由党が合流を決定。野党統一候補の調整が進む中、今夏に行われる参議院選挙のカギを握る小沢氏に戦略・戦術を聞いた。

◆前回の政権交代時の失敗経験を生かして

 小沢氏はかつて二度自民党を下野させ、政権交代を実現した。8党派が揃った1993年の細川護熙政権と、民主党を中心とする2009年の鳩山由紀夫政権だ。前者は1991年のバブル崩壊後、後者は2008年9月のリーマンショックの影響で不況下にあった。現在も景気悪化が続いている。仮に政権を取ったとしても、厳しい運営を迫られることにならないか。

「いやいや、そんなことはありません。民主党は政権運営に一度失敗しています。私事を言えば、2009年の政権交代の直前、国策捜査で何の証拠も示されないまま東京地検特捜部に秘書が逮捕され、僕は代表を辞任。政治活動から離れざるを得ませんでした。

せっかく国民からいただいた政権のときに活動ができなかったことは僕にとって残念至極です。野党が一つにまとまりさえすれば、そのときの失敗の経験を生かして、今度はちゃんとやれます。政治さえしっかりしていれば、この国は立て直せる。大丈夫です」

◆原発の事故収束は何十兆円かかろうとも、政府の責任でやり遂げるべき

 個別政策に目を転じると、与野党でまず明らかに違うのはエネルギー政策だ。国民民主党のウェブサイトには現在、基本政策の一つとして「2030年代原発ゼロに向け、あらゆる政策資源を投入」と明記されている。

「まず具体的にやらなければいけないのは、東京電力福島第一原子力発電所の事故をきちんと収束させること。今でも汚染水をはじめ、さまざまな問題が未解決のままです。汚染水に関して言うなら、雨が降る限り、地下水は永久に出てくる。

僕も現地で見てきましたが、汚染水を保管するタンクは2年以内に満杯になってしまうという。これではお話にならない。何百年も耐えうる恒久的な施設にする必要があります」

 福島第一原発の被害を完全に防護したうえで、課題となるのが廃棄物の処理だ。

「原発をやめるには高レベル廃棄物の処理が必要です。これはどこの国も預かってくれませんから、日本国内でやるしかありません。福島第一の収束と廃棄物処理には途轍もない金が掛かるかもしれない。ただ、たとえ何兆円、何十兆円かかろうと、これは政府の責任でやり遂げなければなりません」

 原発事故の被害に遭った住民への対応にも疑問があるという。

「安倍政権の原発政策を見ていると、まるで『ダミー』を作っているように感じられてなりません。立入禁止区域を定めて、その場しのぎの補償だけをする。定見のある施策とはとても思えません。

政治の責任として、住民が生計をたてる術を考えなければいけない。新しい生活設計を立て、それを後押しする。持続可能な施設と住民の生活については、政府が直接取り組んでいくべきです。僕は事故発生直後からずっとそう言ってきた」

 東京電力の責任はどう考えるのか。

「僕は福島第一の事故以降、歴代の東電社長に会って話を聞いています。現社長とはまだなんですが。東電に任せていたって、対策は進みません。実際のところ、今の東電にはお金もない。ところが、安倍政権は何だかんだと言いながら、実質的に公金を投入している。

みんな自分が前面に立つのを恐れているんです。これではいけません。お金の問題はもちろんですが、対策、対応、モノもヒトも政府が責任を持って当たる必要があります」

◆不要な基地を造る必要はない。アメリカも話せばわかってくれる

 小沢氏がかねて「日本の七不思議」と表現してきたのが、沖縄・辺野古に建設中の米軍新基地をめぐる問題だ。「『新基地はいらない』というのが米国政府の本音。沖縄に駐留する海兵隊も『必要ない』と考えている」と明言してきた。実際、今年5月には「2025米会計年度の前半(2024年10月~2025年3月)に在沖海兵隊がグアムへの移転を始め、約1年半かけて完了させる」という米軍の方針が報じられた。

「なぜ新基地を造らなければならないのか。どう考えてもおかしいでしょう。会見でも言っていますが、これも原発と同じ利権です。利権の構造の中でずるずる続けている。何兆円、何十兆円という利権にみんな群がっているわけです。辺野古の埋め立ても、見込み違いでいくらかかるかわからないという。ジュゴンもいなくなったと聞いています。そもそも、いらない施設になんでそんなに金をかけるのか。本当に恐ろしい話です」

 玉城デニー沖縄県知事は衆議院議員時代、旧自由党で幹事長を務めた。昨年8月の選挙では「日米地位協定の抜本改定、主権の行使を求める」と訴えている。国政で野党が政権を取れば、日米関係、沖縄の在り方もさらに変わっていくだろう。

「米国と話し合えばいいんです。日米安全保障条約がある以上、基地の提供はしなければなりません。ただ、いらない施設を造る必要は全くない。米国政府だって、話せばわかってくれます。現状は日本政府のほうが『やる』と言い張っているので、米国も『ダメ』と言えないだけです」

 民主党が政権を取る直前の2009年7月、鳩山由紀夫・民主党代表(当時)は米軍普天間飛行場移設先について「最低でも県外」と公言。9月に鳩山政権が成立すると、普天間問題で米国政府や外務省、メディアが相次いで反発し、政権運営は混迷を極めた。普天間移設は鳩山政権が短命に終わった一つの要因とも言える。

「鳩山政権のころに僕が自由の身であれば、首相に助言していました。でも検察の捜査が進むなか、当時は党務に専念せざるを得ず、できなかった。無念です」

◆個別の政策とは別に、夢のある前向きな政策を

 今夏の参院選、野党はどんな政策を掲げるのか。

「脱原発や安保法制廃止、消費税減税もいいけど、これらは自公政権の政策を否定しているだけです。個別の政策とは別に、もっと大きな、夢のある前向きな政策を打ち出していきたい。国民があっと驚き、『おお、いいな』と思ってもらえるような。

まだ誰にも言っていませんが、僕の頭の中にはすでにある。ここではまだ言えませんが、枝野代表や玉木代表に聞かれれば答えますよ」

 国別GDP(国内総生産)では2010年に中国に抜かれ、日本は世界第3位となった。アジア諸国の急成長もあり、今や一人当たりのGDPでは世界211か国中32位。経済的な豊かさがすべてではないものの、日本人が以前ほど自信を持って行動するのが難しい環境になってきているのは事実だ。

「日本という国、地域はもともとかなり温暖で豊かだったといいます。大陸や半島から多くの人は入ってきていますが、基本的には何千年にわたって自分たちだけでやってきた。この間、民族的、人種的な争いはほぼ起きていません。例外はありますが、おおむね平穏無事な暮らしが続いてきた。

 これに加えて、戦後教育、戦後民主主義の影響もあって、日本人はどうしても自立心に欠けるところがあります。何ごとも『和を以て貴しとなす』。聖徳太子が制定したといわれる十七条憲法の第一条からほとんど変わっていません。

 一人一人が自分で考え、結論を出し、行動するようにならないと、政治も経済もよくはならない。『誰かがやってくれるだろう』とか、『そのうち神風が吹くに違いない』と思っていては、何も変わらないんです」

◆日本人が自立するためにも、まずは生活の安定が必要

 小沢氏の講演会場に足を運ぶと、聴衆に向かって「あなた方がしっかりしなくてはいけません」と叱咤激励する姿を目にすることがよくある。

「どんな世の中になろうと、僕は困りません。家と田んぼがあるから(笑)。そうじゃない皆さんにはしっかりしていただきたい。端的に言えば、自立が必要だということです。

日本人は自立していない。まずは自立した個人があり、その集合体として自立した国家ができあがる。他人任せの姿勢では右肩上がりのときにはいいけれど、一旦下り坂に入ると、底なし沼にはまり込んでしまいます」

 夏の参院選は、日本人が自立する一歩となるだろうか。

「個人が自分の頭で考え、行動していくためにも、まずは生活がなければなりません。『衣食足りて礼節を知る』です。僕たち野党は格差解消と国民生活の安定を図り、政権奪取を目指します」

【小沢一郎氏プロフィール】

1942年岩手県水沢市(現奥州市)生まれ。1969年、自民党公認で衆議院選挙に出馬し、27歳で初当選。田中角栄氏の薫陶を受ける。1987年に竹下登、金丸信氏らと経世会を旗揚げ。’89年に幹事長に就任するなど若くして自民党の要職についたが、1993年に自民党を離党し細川連立政権樹立に尽力。2009年の鳩山政権では幹事長に就任。2012年、民主党を離党し自由党を結党するも2019年に国民民主党へ合流。今年12月28日、在職50年を迎え名誉議員となる。

取材・文/片田直久 撮影/大房千夏

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング