公職選挙法違反疑惑を指摘のジャーナリストを国会議員事務所が警察に虚偽通報か

HARBOR BUSINESS Online / 2019年6月29日 8時33分

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菅原一秀議員の事務所前に集結する警察官(6.19練馬区)

 これまで度々問題となってきた政治家による有権者への団扇やカレンダーの配布。これは「政治家の名前が入った団扇やカレンダーの配布は選挙区内の有権者への有価物の寄附行為を禁じた公職選挙法に抵触する」との統一見解が出され、総務省の見解を集めた「選挙関係実例判例集」にもその旨が記載されているためだ。

 そんな折、現職の衆議院議員が数年に渡り選挙区内の有権者にカード型カレンダーを配布していたことが判明。ジャーナリストからTwitter上で公職選挙法違反の可能性を指摘された当該議員が、Twitter社と警察へ虚偽の通報を行い、証拠隠滅と取材妨害を行った疑いを持たれている。

Contents1 筆者のTwitterアカウントがロック2 公職選挙法違反指摘ツイートが都合悪かった?3 「攻撃的な行為(嫌がらせ)」「プライバシー」「私的なメディアの投稿」!?4 ロック解除、通報内容が判明5 国会議員による「報道妨害」か6 直当て取材に虚偽の110番通報7 菅原議員の秘書は事務所前を素通り8 カレンダー配布を取りやめチラシに変更9 ストーカー規制法報道で意味深なツイートを繰り返す10 トップダウン体制との指摘

◆筆者のTwitterアカウントがロック

 筆者が異変に気付いたのは6月16日、Twitterを開くと、こんな画面が表示され一切のアクセスができなくなっていた。

『このアカウントはロックされています。ご利用のアカウントはTwitterルールに違反していることが確認されました。具体的な内容は次の通りです。

1.プライバシー法に対する権利が認められている国の人物の私的なメディアの投稿を禁止するルール」に違反しています。このため、ご利用のアカウントをロックしました。』

◆公職選挙法違反指摘ツイートが都合悪かった?

「Twitterルール違反」として示されていたのは、筆者が5月25日に投稿したこのツイート。知人に確認してもらうと非表示にされていた。

『#政治家 のカレンダー配布が「選挙区の有権者に有価物の寄付を禁じた #公職選挙法 に抵触する可能性あり」と報じられるが、#菅原一秀 議員が選挙区内で配り続けてきたこのカードの裏ってカレンダーなんだよね。総務省「選挙関係実例判例集」では名入りのうちわやカレンダーを選挙区内で贈ることはNG』

 自民党の菅原一秀衆議院議員(自民党・東京9区)が選挙区内の有権者に名刺サイズのカード型カレンダーを継続的に配布していたことについて、当該カレンダーと配布する菅原議員の運動員の画像を貼り公職選挙法が禁ずる「有権者への寄附行為」に抵触する可能性について言及したものだ。

◆「攻撃的な行為(嫌がらせ)」「プライバシー」「私的なメディアの投稿」!?

 アカウントロックの理由としてTwitter社が挙げた禁止ルールは「プライバシー」と「私的なメディアの投稿」。

 しかし、当該ツイートに掲載したカレンダーには菅原議員の顔写真と名前、そして事務所の所持地や連絡先など一般に公開されている情報しか印字されていない。これらは「プライバシー」の範疇外であり「個人情報」ではない。そもそも公人である国会議員には一般人と同レベルのプライバシー権は適用されない。

 そして「私的なメディア」についてだが、Twitter社HPでは「本人の同意を得ずに撮影された私的な画像や動画」となっている。これも菅原議員が運動員に行わせていたカード型カレンダーの配布は政治活動であるため「私的な画像」には該当しない。

 この通報は明らかに筆者が行う取材活動や報道活動に対する封殺行為であり、その意図を以って行われた形跡がある。つまり虚偽の通報だ。

◆ロック解除、通報内容が判明

 即日Twitter社に対し異議申し立てを行った結果、筆者のアカウントロックは翌日になって解除され、件のツイートも再表示された。

 Twitter社による不可解なアカウントロックや凍結は度々指摘されており、今回もその一例と言える。しかしながら、さすがにこの虚偽通報は明らかな勇み足であり、Twitter社も当該ツイートが禁止ルールに何ら抵触しないことを確認しアカウントロックを解除したのであろう。

 復旧したアカウントの通知を辿っていくと、6月16日の午前9時台に以下の通知が来ていた。

 通報者のアカウントへTwitter社が送信したものが、通報されたアカウントにも通知されたということなのか。

 この通知により、Twitter社への通報理由が「不適切または攻撃的な内容を含んでいる」「個人情報を含んでいる」であり、併せて筆者のアカウント自体への通報もなされていたことが判明した。

◆国会議員による「報道妨害」か

 これは明らかに公選法違反の証拠となりかねないカード型カレンダーの画像をネット上から消し去ろうとするものであり、もし仮に菅原議員本人または同議員が秘書に指示してTwitter社へ虚偽通報をしたとすると現職国会議員による報道妨害案件となる。

 事実確認のため翌17日、菅原議員の地元・練馬事務所に携帯端末から電話をかけ、Twitter社への通報の関与の有無を問い合わせた。応答した女性スタッフは「会議中なので折り返し電話します」と返答、しかし一向に連絡が来ることはなかった。以降、翌日にかけて何度電話しても応答がない。試しにそれまでかけていた筆者の携帯電話とは別の端末から電話をかけたところ、即「菅原一秀事務所でございます」と応答があった。一旦切り、直後に携帯電話からかけたがやはり出ない。事務所内にスタッフが常駐しているにもかかわらず居留守を使っていたのだ。

◆直当て取材に虚偽の110番通報

 そこで19日、やや日刊カルト新聞総裁でジャーナリストの藤倉善郎氏とともに直接、菅原議員の事務所を訪ねた。

 事務所前から電話をかけたが応答はない。しかし、事務所内には人の気配がある。やはり居留守を使っていた。事務所入口のガラスドアを開け取材主旨を告げると「一応秘書」と自称する女性スタッフは、居留守を使ったことについて「上からそのようなあれがありますので」と弁明。そして「おかけになって」と事務所内の応接コーナーで待つよう告げた。電話で菅原の国会事務所に連絡する女性スタッフ。「議員会館の方に連絡を取りまして、少々お待ち下さいということで、今、連絡、待ってます」との説明があった。

 ところが、ほどなくして現れたのは警察官だった。「今、警察の方がお見えになりました」と電話で“上に”報告する女性スタッフ。

 一体何が起こったのか。以下は菅原事務所内での警察官との会話だ。

警察官「こんにちは。110番入ったんだけど」

鈴木「110番?どういうことですか?」

警察官「なんかカメラマンの人たちが入ってきたということで」

鈴木「は?」

警察官「喧嘩だ!ということで入ってきたということで」

藤倉「喧嘩なんてしてませんよ。どうぞとこちらに通されて」

警察官「待っていてと言われたの?」

鈴木「はい、出ていけと言われたのに居座っているわけではなくて」

警察官「ちょっとカメラを止めてもらっていいですか」

藤倉「僕らは取材で来ているので、取材に来たら警察を呼ぶという取材対応を国会議員の事務所でされたという記録は取りますよ」

警察官「勝手に入ってきちゃったよということで」

藤倉「入口までは開けて入ってきましたけど、そのあとこちらでお待ちくださいと言われてここで待ってる」

鈴木「110番はここからですか?国会事務所じゃなくて?」

藤倉「上の人に連絡するって言うから待っていたらお巡りさんが来たという」

警察官「はははははははは!」「プレスの人からしたら心外かもしれないですけど、我々としては『事務所に入ってきた』となると」

鈴木「押し込みで喧嘩してると?」

警察官「そうそうそうそう」

藤倉「虚偽通報ですよ。もしそんなこと言っているんだったら。喧嘩もしてないし、暴れてもいないし」

鈴木「どういう通報内容だったんですか?」

警察官「何もなければそれでいいんだけど」

藤倉「嘘の通報って罪にならないんですか?」

警察官「ははは!」

警察官「菅原一秀さんに今日、取材ということでいらしたわけですよね?」

藤倉「はい。厳密に言うと事務所に取材の申し入れの連絡をしたら折り返し連絡をくれるということだったのですが、それっきり返事が無く」

警察官「来なかったんだ?」

藤倉「電話をかけても出てくれないので」

警察官「で、いらっしゃったと?」

藤倉「はい、来ました」

鈴木「直接伺ったら、いらしたのに電話を取っていただいてなくてですね」

警察官「あ、そうなんですね」

鈴木「で、どういうことなんですかと」

警察官「お互いの行き違いですね、了解です」

藤倉「出ていけと言われたら出ていきますけれどもそれはお巡りさんから言われることではなくて、事務所の方が言われるのであれば出ていきますけど、事務所の方からは出て行けという意思表示は一切ないので」

警察官「了解です」

藤倉「待ってくださいとしか言われてないので待ってます」

警察官「了解です」

 このやり取りから判るように菅原議員サイドが行ったのは明らかな警察への虚偽通報だ。女性スタッフに確認すると、自身では110番通報をしておらず、実際に警察へ通報したのは連絡を受けた菅原議員の秘書だという。

◆菅原議員の秘書は事務所前を素通り

「菅原議員を含む菅原事務所の総意」として事務所の女性スタッフから初めて退去を促され、菅原事務所をあとにした。すると事務所前を素通りする菅原の国会事務所の秘書を発見。電話で状況を報告し何やら指示を受けている。電話の相手は菅原議員本人であろうか。声をかけたが無視されてしまった。

 これまで筆者は菅原議員が統一教会の2世組織の集会に参加したことや選挙運動員として同教団の信者を登用した疑惑を追い、本人にも何度か直当て取材を行っている。秘書たちも筆者の人となりを知っている。明らかに取材を妨害するために警察に通報したということだ。<参照:統一教会イベントで2世信者を激励した議員に「信者運動員使用」疑惑浮上。本人を直撃<政界宗教汚染~安倍政権と問題教団の歪な共存関係・第9回>

 菅原事務所の前には警察官6人(制服4人私服2人)と警察車両2台が集結。虚偽の通報によって警察の業務をも妨害したことになる。急病でもないのに救急車を呼ぶようなものであり、道義的にも問題ある行為だ。

菅原一秀議員練馬事務所内取材動画『菅原一秀衆院議員の事務所がジャーナリストを警察に虚偽通報』

 果たして一連の「報道妨害」「虚偽通報」に現職の国会議員の関与はあったのか。もし菅原議員がこの「報道妨害」や「虚偽通報」に関わっていたとすると、国会議員が自身にとって都合の悪い情報を発信したTwitterアカウントを虚偽の通報によってロックさせただけでなく、虚偽の通報によって警察まで出動させたことになる。

◆カレンダー配布を取りやめチラシに変更

 菅原陣営の変化を確認したのは6月5日。毎朝行っていると標榜する駅頭演説でカード型カレンダーの配布を取りやめ、A5サイズのチラシに変更していたことが菅原議員のSNS映像から判明した。秘書によると新チラシにカレンダーは印刷されていないという。

◆ストーカー規制法報道で意味深なツイートを繰り返す

 筆者が件のツイートを投稿した5月25日、菅原議員は昨年ツイッター上で同議員を脅迫した男が逮捕されたニュースを引用しこんなツイートをしている。

“SNSでこのように発信して逮捕される時代。次は、、。”(菅原議員のTwitterより)

 そして今回の練馬事務所虚偽通報事件の翌朝、菅原議員はこうツイートした。

“ストーカー規制法。禁止命令違反は懲役2年以下もしくは200万円の罰金。全国のつきまといに遭っている被害者や自由妨害等に遭っている方々を救う対策を強化すべく国会でも動きが始まりました。もうすぐ、、。”(菅原議員のTwitterより)

 もし仮に前日の取材妨害に関連して保身のために既存の法整備を強化しようとしているとすると、立法にかかわる国会議員としての資質が問われるところだ。

◆トップダウン体制との指摘

 菅原事務所の内情を知る人物によると、菅原事務所はトップダウン式の指揮系統下にありスタッフや秘書が独断で何かを行うとは考えにくいという。これは筆者が菅原議員本人及びその周辺を取材して感じたことと一致する。

 公選法違反疑惑やTwitter社への虚偽通報疑惑だけでなく警察への虚偽通報疑惑まで加わった。菅原議員には一連の疑惑についての真摯な説明が求められる。

 なお、筆者及び藤倉氏は連名で菅原氏の事務所に本件についての質問状を送っており、返答期日までに回答が到着したら本記事も後日アップデートする予定だ。

★7月5日19:36分追記

 回答期限の4日、菅原議員の国会事務所から公開質問状に対する回答書が届いた。

 しかしその内容は、質問事項には一切回答せず、

 筆者らの取材活動を「執拗な接触」と決めつけ「衆議院議員としての活動を妨げて」いるとして法的措置を仄めかす内容だ。(参照:やや日刊カルト新聞)

 数々の疑惑を持たれている菅原議員。新たに法的対応を示唆する今回の回答内容は、国会議員として説明責任を果たしていると言えるだろうか。

<鈴木エイト(やや日刊カルト新聞主筆)・Twitter ID:@cult_and_fraud

取材協力・写真/藤倉善郎(やや日刊カルト新聞総裁)・Twitter ID:@daily_cult3>

すずきえいと●滋賀県生まれ。日本大学卒業 2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)

<参考文献>

『選挙関係実例判例集 普及版 第十六次改訂版』選挙制度研究会/編 2009年5月発行

【鈴木エイト】

すずきえいと●やや日刊カルト新聞主筆・Twitter ID:@cult_and_fraud。滋賀県生まれ。日本大学卒業 2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)

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