パチンコ族議員誕生ならず。尾立候補の落選が業界にもたらすものとは?

HARBOR BUSINESS Online / 2019年7月27日 8時31分

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 先の参議院選挙において、パチンコ業界の「族議員」として立候補し、筆者がずっと追ってきた(*)尾立源幸氏が落選した。

 総得票数92881票、19人が比例当選した自民党で、23位の結果であった。尾立氏を推挙した業界関係者の落胆は顕著であるが、一方でこの結果を妥当であると捉える関係者もいる。

(*参照●パチンコ業界紙に踊った「『おだち』を国政に」。その意味と背景

●パチンコ業界を利する得票数は20万票。その希望を一身に担う自民党・尾立源幸

●自民党・尾立源幸候補に向けられた「一大産業なのにマイノリティ」なパチンコ業界の期待と不安)

 投票日の前日に寄稿した拙文『自民党・尾立源幸候補に向けられた「一大産業なのにマイノリティ」なパチンコ業界の期待と不安』にも書いたが、今回の選挙は、パチンコ業界が初めて挑む国政選挙であり、当初から業界が一枚岩になれるのかということが課題であった。

 しかしその目論見は脆くも崩れ去り、得票数約9万のうち、尾立氏の本来の支持母体である大日本猟友会票を除けば、おおよそ業界票6万という結果であった。パチンコ業界関連の従業者だけでも25万人~30万人いると言われているのに、だ。

◆参院選結果がパチンコ業界に及ぼす影響

 こう言ってしまえば根も葉もないが、そもそも無理筋な話であった。他党からの「鞍替え立候補」であり、支持母体である猟友会の後押しが強いわけでもない。まして世間的に風当たりの強い、パチンコ業界の族議員になる事を公言しての立候補。パチンコ業界票をどれだけ獲得出来るのかが、そのまま尾立氏の勝敗に直結する状況で、業界側には準備をする時間が短すぎた。パチンコ業界団体が尾立氏の応援を合意したのは今年の1月。半年の準備ではすべてが追い付かなかっただろう。

 またパチンコ業界内にも積極派と消極派と無関心派がそれぞれの立場を貫き、積極派からすれば、その消極と無関心をひっくり返すことが出来なかった。猟友会側との緊密な連携が図れなかったことも敗因に数えられるだろう。

 本稿の趣旨は、しかし尾立氏の敗因分析ではない。今回の参議院選挙の結果がパチンコ業界にどのような影響を及ぼすのかについて言及したい。

 パチンコ業界は追い込まれていた。行政の行き過ぎたギャンブル等依存症対策に業界は疲弊していたし、先行きの見通しも持てなかった。だから政治の力を借り、業界の本分を取り戻そうとした。しかしそれは業界を主管する警察行政への「反逆」でもあり、だから万が一にも今回の選挙戦で負けることがあれば、業界に対するより一層の締め付けが行われることも覚悟していた。まさに背水の陣の選挙戦であった。

 そして負けた。

 尾立氏を積極的に応援した層は、「終わりの始まり」を予感したし(パチンコ業界内では「終わりの始まり」は二年前から始まっているという声もある)、今回の敗戦で政治にも見放されれば業界衰退の加速化をもう止める術はないと覚悟もした。

◆自民党との関係を築く、と業界の大ボス

 しかしである。

 自民党は、正確には尾立氏の後ろ盾でもある二階派は、今回のパチンコ業界の選挙戦を一定程度評価しているという声が漏れ聞こえている。以下は、パチンコ業界誌「GreenBelt」のweb版から引用してみよう。

“東京都遊技業協同組合(阿部恭久理事長)の7月定例理事会が7月25日、遊技会館で開かれ、先の参議院議員選挙に出馬した尾立源幸氏が姿を見せ、選挙応援に対するお礼と、落選のお詫びを述べた。(筆者中略)理事会では阿部理事長が、選挙後に後援会役員と自民党本部を訪れたことを報告し、「幹事長からは半年足らずの期間で、もう少しのところまで善戦したとの労いの言葉をいただいた。今回の結果を真摯に受け止めて、これから自民党との関係を築いていくことを進めていきたい」と述べた。”(出典:WEB GreenBelt 7月25日)

 この阿部理事長とは、パチンコ業界の最大規模の団体である全日本遊技事業協同組合連合会の理事長であり、おだち源幸氏の後援会の会長でもある。自民党幹事長がその阿部氏にかけた言葉は、単なるリップサービスなのだろうか。それとも言葉通りの意味が込められているのだろうか。

◆パチンコ業界、いまだ「政治」を諦めず

 同Webサイトの記事では、「また阿部理事長は、早期の自民党風営法議連の会合を要望し、4月に議連が出した提言書に対する対応について警察行政から回答してもらうよう求めていることを報告した」とある。これは、あくまで業界側の要望であって、記事には幹事長の返答は言及されていない。

 この「4月に議連が出した提言書」とは、自民党の「時代に適した風営法を求める議員連盟」(以下、風営法議連)が、4月25日に、国家公安委員長宛に提出した提言書であり、そこには、遊技機型式試験の適合率の向上や、遊技機のゲーム性、エンターテイメント性の向上にも配慮した開発環境の整備、更にはパチンコホール内に設置されたATM撤去に関する配慮を求める等、パチンコ業界は自民党に上程した内容が多く含まれている。その提言に対する警察行政からの返答を自民党に求めたというのだから、

 パチンコ業界は、まだ「政治」を諦めていないのだ。

 3年後の参議院選挙。パチンコ業界の再チャレンジはあるのか。

不屈の想いで政治に未来を託す人もいれば、今回の尾立氏の落選で想いの踵を返した人もいる。そもそもの反対派や無関心層もいる。先の3年間を俯瞰すれば、旧規則機の一斉撤去やホールの全面禁煙化、消費税増税と多事多難でもある。そもそも3年後のパチンコ業界に、選挙戦を構える体力があるのかも分からない。業界は、相も変わらず混沌としているのだ。

 本稿の最後に。

 自民党の風営法議連は、パチンコホール関係者を対象とした、プロジェクトチーム会議を8月にも開催するらしい。これが現時点における、自民党の回答であろうということを付記しておく。

<取材・文/安達夕>

【安達夕】

Twitter:@yuu_adachi

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