熱中症の発生は、住宅内がいちばん多い。断熱性能の低い軽量鉄骨住宅に潜む危険性

HARBOR BUSINESS Online / 2019年7月28日 8時33分

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Contents1 住宅内での熱中症発生は全体の41%2 岩山氏「量産される軽量鉄骨住宅は最も危険な住環境」3 鉄は木材より700倍熱を伝えやすい4 隙間だけの「プレハブ工法」が、断熱性能を低下させる5 木材を腐らせ、カビやダニが繁殖……やっかいな「内部結露」6 軽量鉄骨住宅は、耐震性でも木造住宅に劣る7 木材の方が軽量鉄骨より耐火性も高い

◆住宅内での熱中症発生は全体の41%

 梅雨が明け、いよいよ暑い夏がやってくる。都市部では、真夏になるとヒートアイランド現象が起こり、最高気温は沖縄より高くなる。しかも気温が高いうえに湿気も高いので、非常に厳しい環境で生活を余儀なくされる。

 特に心配されるのが熱中症だ。梅雨明けから猛暑が続く8月15日ぐらいまでの間が最も熱中症が起こりやすいとされており、注意が必要だ。熱中症は屋外の暑さによって起こりやすいと思われるかもしれないが、実は住宅内での発生も軽視できない。

 厚生労働省の資料によると、2010年度に東京都内で発生した熱中症のうち、住宅内は全体の41%に上っている。家の中で室温が高くなったり、通気性が低く湿度が高くなったりして体に熱がこもりやすくなることで、熱中症を引き起こすことになる。

「夜は涼しくなるから問題ないだろう」と、エアコンを止めたり窓を閉めたりしたまま寝るのも避けたほうがいい。夜も室内の温度や湿度は下がらず、睡眠中は体内の水分が発汗によって失われ、寝ている間に熱中症になってしまうこともあるのだ。

◆岩山氏「量産される軽量鉄骨住宅は最も危険な住環境」

 新刊『たしかな家づくり』(若葉文庫)を上梓した日本建築検査研究所の岩山健一氏(一級建築士)は、「熱中症対策という意味でも大手ハウスメーカーが量産する軽量鉄骨住宅は最も危険な住環境になっています」と断言する。

 せっかく家を建てるのなら、夏涼しく、冬暖かい、常に新鮮な空気を取り入れながら誰もが快適に暮らしたいはずだが、「大手ハウスメーカーの住宅は『快適』『エコ』とはほど遠い中身になっています」(岩山氏)というのだ。

 軽量鉄骨とはどのような建物を指すのだろうか。鉄骨造は、①鋼材の厚みが6ミリメートル以上の重量鉄骨造、②鋼材の厚みが6ミリメートル以下の軽量鉄骨造 ―― に大別される。鉄骨造の建築例と言えば、東京スカイツリーなどの超高層建築物や劇場、スタジアムなどの大型施設を思い浮かべるかもしれないが、それらは重量鉄骨造になる。

 大手ハウスメーカーが一般住宅向けに開発・採用しているのは、重量鉄骨よりも薄い軽量鉄骨造だ。これらはすべて型式適合認定制度を利用して工場で製造された各パーツを現場で組み立てるため、別名「プレハブ工法」と呼ばれている。

 岩山氏は軽量鉄骨住宅について「システムそのものに問題がある」と語る。

「軽量鉄骨住宅は、室内側に断熱材と鉄骨の素地が見える納まりになっています。断熱材が全面に覆われておらず、中途半端に途切れています。鉄が熱を奪うのに断熱材で覆われていないというのは、まったく物理的な現象を考えずに計画しているということです」

 断熱はあくまで連続していることが前提でなければ、効果は薄らいでしまう。室内側に鉄骨の素地が見える納まりになっていることで夏の灼熱を鉄が伝え、それが空調効率を著しく低下させてしまう。つまり、外気の暑さが鉄の柱を通して内部に伝わってしまうのだ。外気の温度の影響や日射や風の影響まで受け、人体にとって都合の悪い方へ温度が変化していく。

◆鉄は木材より700倍熱を伝えやすい

 岩山氏は「そもそも鉄は熱伝導率が高く、住宅で採用するような素材ではありません」と話す。それはどういうことなのか。住宅の主要構造に使われる建材(木材、コンクリート、鉄)の「熱伝導率」について比較してみよう。

 熱伝導とは、熱が物中に伝わって高温部から低温部に移動する現象のことで、熱の伝わりやすさを表す物質定数のひとつだ。これを比較すると、木(0.14~0.18)<コンクリート(1.0)<鉄(83.5)となり、鉄は木材より約700倍も熱を伝えやすい。

「どこかのメーカーが『外張り断熱』といってコマーシャルをしていました。しかし、屋根は外張り断熱ではありませんから、屋根下地の鉄骨が熱せられて壁下地の鉄骨に伝わります。それが室内に輻射熱として影響するので、空調効率は余計に悪化するのです。

 軽量鉄骨住宅では、夏になるとエアコンをつけていても1階リビングの温度が39℃から下がらないことがよくあります。2階に行くと40℃を軽く超えていることは容易に想像できます。

 このような状態の住宅は冷暖房もほとんど効果がなく、光熱費もかさむばかりでしょう。屋内での熱中症も心配しなければなりません。おそらく冬になると暖房しているのに震えてしまうくらい寒さになっているはずです」(岩山氏)

 本来、熱伝導率の高い鉄骨を利用した構造では、室内側に面する鉄骨部分にはすべての面を覆うように断熱材を張らなければならない。さもなければ、室内に面する壁天井には、連続した断熱層と防湿層を設ける必要がある。

「鉄骨の構造躯体そのものが金属で熱伝導率が高いうえに、断熱も有効に働いていないのです。軽量鉄骨住宅は、骨組みや筋交いなどが鉄でできています。すき間なく断熱材を入れたとしても、鉄のむき出しの部分からヒートブリッジ(外壁と内壁の間にある柱などが熱を伝える現象)が起こります。

 鉄骨部分には断熱対策ができないことで、暑さをそのまま内部に伝えてしまう。断熱性能が悪く結露が発生しやすくなるという、不健康な住宅を生み出してしまいます。そのような意味からも、鉄骨の省エネ住宅は不可能です」(岩山氏)

◆隙間だけの「プレハブ工法」が、断熱性能を低下させる

 また、軽量鉄骨住宅が「プレハブ工法」であることが、さらに断熱性能を低下させているという。

「ある大手メーカーはパネルとパネル、パネルと窓の接合部分に15ミリメートルほどの隙間をあえて設けて組み立てています。その際、隙間に断熱材は充填しないため、窓の近くに行くと隙間風が入ってきます。軽量鉄骨住宅は隙間(クリアランス)を設けることで、組み立て作業をスムーズにするというシステムになっています」(岩山氏)

 壁の中には当然、空気がある。寝ている時に布団の中に気流があったらどうだろう。しかも外気が入って来ているとすれば、エアコンをつけていても効き目がなくなるのは極めて当然のことだ。

「断熱材をいくら入れても、隙間だらけの住宅では家の中に外気が入り込んで、断熱の効果がさっぱり上がりません。隙間風によって家の中の空気と外気が絶えず入れ替わるので、暖めても冷やしてもエネルギーロスが大きくなります。

 隙間があると、床下の湿気を含んだ空気が断熱材のない部分で結露を起こします。また室内の水蒸気が壁の中にも入り、断熱材の内部でも結露を起こします」(同)

 そうなると、副資材として使用されている木材を腐らせてしまうことにもなりかねない。結露は目に見えない場所で起こり、気がついた時には相当深刻な状態になっているケースが多いのだ。

◆木材を腐らせ、カビやダニが繁殖……やっかいな「内部結露」

 結露を起こさないためには、温度・湿度を一定に保つ必要がある。しかし、熱伝導率が高く、すき間風が存在する住宅ではそうはいかない。やっかいなのが壁の中で起こる「内部結露」だ。

 内部結露は、外気や室内から水蒸気が入り込むことで引き起こされる、壁体内や断熱材に水滴が溜まる、目に見えない結露のことだ。表面結露は水滴を拭くことができるが、壁の中に起こった結露は拭くこともできず、建物に使用されている鉄を錆びさせ、木材を腐らせる原因になる。

「断熱材は水を含むと性能が落ち、含水量によってはカビやダニ、腐朽菌が繁殖し、木造であれば構造材を腐らせるほどです。腐った構造材は地震の揺れに耐えられず、最悪の場合、建物の倒壊の可能性もあります。

 そして、やっかいなのがカビの存在です。断熱の施工不良、結露の発生、カビの発生というメカニズムで、見えないところも含めれば家の各所の相当な範囲に発生する可能性があります」(岩山氏)

 特に温度が18℃以上、湿度が70%以上になるとダニやカビが繁殖しやすくなるという。日本の夏は蒸し暑く、8月の月間平均湿度はどの地域でも75%以上になる。湿度が80%を超えると、腐朽菌が盛んに活動を始める。木材が腐ることで、シロアリにとって住みやすい環境ができあがる。ダニの糞や死骸が人の呼吸器に入ると、アレルギーを引き起こす物質が充満し、住人の健康を脅かしてしまうこともありうる。

 まともな住宅に引っ越しして「子どもの喘息でアトピーが治った」「手足のしびれがなくなった」など、快適な家に暮らすことで健康を取り戻すケースもある。むしろ、住宅が原因で病気を引き起こしていたと言っても、言い過ぎではないかもしれない。

「メーカーの担当者は『結露ですから瑕疵ではありません』『結露は自然現象ですから』などという常套句を発しますが、結露の発生は立派な瑕疵に該当すると考えています。改善するには、やはり熱が伝わりにくい素材を多用することです。鉄骨住宅は断熱性能にも不向きな住宅と言えます」(岩山氏)

 また、防水の観点からも軽量鉄骨住宅には問題があるという。

「木造だと家の形ができた段階で、屋根や壁に防水紙を連続的に張り巡らせて雨水の浸入を防ぎます。ですが鉄骨構造はパネルを組み立てていきますので、その継ぎ手には防水の不連続による断裂によってすき間が発生します。そこをシール材やガスケット材によって止水しているのですが、このシールが劣化したり、施工不良によって破断したりすることが、実はたいへん多いのです」(岩山氏)

◆軽量鉄骨住宅は、耐震性でも木造住宅に劣る

 軽量鉄骨住宅のデメリットはこれだけでない。耐震性でも木造に劣っていると言える。

「木造住宅は、地震が起こると柱と梁で囲まれた構面の筋交いや構造合板によって変形を抑え、地震の振動エネルギーに抵抗します。一方、鉄骨住宅は柱と梁をブレースという細い鉄の棒や鉄板のようなもので、筋交い替わりにつないでいます。

 これは引っ張り側の力にしか抵抗できないことに加えて、前記事で説明した『型式認定』によって柱はほとんど極限状態まで細くなっています。そのため、木造のように地震の揺れを抑制することはほとんどなく、揺れは木造より強く感じることになります」(岩山氏)

 ここで改めて理解してもらいたいのは、軽量鉄骨造の家は木造の家に比べて、決して重くないということだ。鉄の比重が大きいから家も重くなると考えがちだが、むしろ木造ツーバイフォー住宅の方が、はるかに重い。

 また、それぞれを「木材」と「鉄」 という建材の材質を「比強度」で比較してみると、その差は歴然。木材の比強度が鉄やコンクリートを圧倒している。比強度とは、「単位重量あたりの引っ張り強さを密度で割った数値」のこと。

 わかりやすく言えば「同じ重さの木材と鉄を無限大に伸延してぶら下げた際に、何キロメートルで破断するかを比較した数値」となる。比強度はあくまでも同条件での比較になるので、「引っ張り比強度」は数値が高い材料ほど「軽くて丈夫なもの」と言える。

 また、押す力である「圧縮比強度」は上下から圧力を加えられたときに建材が持ちこたえることのできる数値だが、これも木材が鉄、コンクリートを圧倒している。

 さらに曲げる力に対して亀裂や破壊が生じる「曲げ比強度」も、木材はほかの建材よりも優位に立っている。

◆木材の方が軽量鉄骨より耐火性も高い

 軽量鉄骨住宅は火事になっても鉄骨が燃え残って原形をとどめると思っている人が多いが、それは大きな誤解だ。鉄骨は火災の熱で「変形」する可能性が高い。データによると、火災時の温度は、700~ 950℃まで上昇する。

 それに対して、鉄は550℃を超えると柔らかくなって変形してしまう。鉄は木材に比べて熱の伝わるスピードが早いため、火災で急激に上昇した温度によって、鉄骨の原形を保つことができなくなる。鉄骨が曲がれば屋根などを支えきれなくなり、倒壊事故につながるおそれがあるのだ。

 一方の木材はというと、1986年に東京営林局東京木材サービスセンターで木造住宅の燃焼実験が行われたが、それによると、実験用の木造住宅には12&15センチメートルの角材が使用され、窓のサッシも木製だった。実験の結果、着火後55分を経過しても2階への延焼はなかった。

 また別の実験では、木材が燃える速度は1分間に0.6~0.8ミリメートル程度で、着火後30分が経過しても表面の18ミリメートルが燃えただけで、柱や梁などの構造材にいたっては強度の半分以上が残ったというデータもある。

 この実験からもわかるように、ある程度の太さがある木材は、いったん燃えて表面に炭化層ができるが、その炭化層が酸素を遮断することでさらに燃え進むのを防ぐため、簡単には燃え尽きないのだ。

「軽量鉄骨という建材は、負の特性が大きいんです。大手ハウスメーカーのコマーシャルで『鉄骨構造』であることを積極的に広告しているところがないということが、何よりの証拠です」(岩山氏)

【岩山健一(いわやま・けんいち)】

一級建築士。1956年8月27日生まれ。1999年に日本建築検査研究所を創業。これまでに3000を超える建築検査にかかわり、欠陥住宅裁判の鑑定人としても活躍している。ニュース番組や新聞、週刊誌など、メディアに多数出演。近著に『たしかな家づくり——マイホーム建築の基礎知識』(若葉文庫)

<文/藤池周正(ライター) 写真/岩山健一>

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