暴力や不貞がなくとも、数年別居しなくともモラハラ夫との離婚は可能<モラ夫バスターな日々23>

HARBOR BUSINESS Online / 2019年8月6日 8時33分

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Contents1 弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々<23>2 「5年間の別居」は不要3 婚姻破綻とは、別居期間の長短ではなく、夫婦生活の回復の見込みがない状態4 モラ夫の「許してやるから戻ってこい」は「後でボコボコにしてやる」と同義5 「夫を怒らせずに離婚したい」は愚問

◆弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々<23>

 東京家裁の待合室で、当事者の女性が、自分の弁護士に対して、同居時に受けていた、夫からのモラ被害を切々と訴えていた。私は、心の中で、(おい、家裁に来る前に事情を聞いとけよ)とつぶやいた。しかし、隣に座っていたので、嫌でも聞こえてしまう。

 女性は、長時間の夫の説教を受けて辛かったことを説明した後、

「調停ダメな場合、私、離婚できますか」

と聞いた。すると、その弁護士は、

「それだけだとねぇ……暴力とか不貞とかないとね」

と答えた。

◆「5年間の別居」は不要

 10年ほど前からの傾向として、法律相談を渡り歩く方は多い。その相談の中で、別の弁護士からのアドバイスを聞くことがある。難しい法律問題などの場合、相談者が正確に理解していないこともあろう(弁護士の説明能力の問題でもあるが)。

 しかし、最近、多くの相談者が他の弁護士から聞いてくるアドバイスで最も多いのは、

「離婚するには5年間(3年間)の別居が必要」

 というものだ。結論から言おう。この法的アドバイスは、間違っている。

 離婚理由として、最も頻度の高いのは、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)である。婚姻破綻と呼ばれている。

 その次に頻度の高いのは、不貞行為(民法770条1項1号)である。2号(悪意の遺棄)、3号(3年の生死不明)及び4号(強度の精神病)は、家裁実務では、殆ど使われない。

 なお、妻に逃げられた夫側が悪意の遺棄を主張する例を時折みかけるが、みっともないだけで、原則、認められないのでやめた方がよい。

 以上、民法には「○年間の別居」との規定はない。

◆婚姻破綻とは、別居期間の長短ではなく、夫婦生活の回復の見込みがない状態

 判例はどうか。最高裁昭和62年9月2日大法廷判決の定義によると、婚姻破綻とは、

「夫婦の一方又は双方が既に(真摯な意思で共同生活を営む)意思を確定的に喪失するとともに、夫婦としての共同生活の実体を欠くようになり、その回復の見込みが全くない状態」

 のことである。定義に別居期間についての言及はない。確かに、別居期間が長い方が、婚姻破綻が認められやすいだろう。

 私の実務経験では、別居期間がゼロであっても、上記の最高裁の定義にあてはまる状況にあり、離婚請求者に不貞等がなければ、離婚が認められる。

 モラ被害を受けた妻が、別居と同時に離婚調停を申し立て、さらにその数か月後に離婚裁判を始めても、殆どの事案で離婚が認められている。冒頭の弁護士のアドバイスは間違っている。

◆モラ夫の「許してやるから戻ってこい」は「後でボコボコにしてやる」と同義

 モラハラ被害を受けていながら、例えば家庭内別居し、離婚手続きを始めても、離婚裁判においては、モラハラだけでは離婚は認められないだろう(離婚協議や調停に離婚理由は不要で、双方の同意で離婚が成立する)。

 因みに、家庭内別居は、法律上、同居とみる。同居していれば、夫婦共同生活の意思を確定的に喪失したとはいえないし、形骸化しているとはいえ、夫婦共同生活の実体もある。また、同居が可能であれば、モラハラの程度が軽いと思われても仕方ない。

 なるほど、別居期間にかかわらず離婚できることがわかった。

 被害妻の次の質問は、「夫を怒らせずに円満に離婚できませんか」である。率直に言って、これは愚問である。モラ夫を怒らせたくない気持ちは痛いほどわかるが、モラ夫は、被害妻が何をしようと何をしまいと怒る。

 しかも、モラ夫から逃げ、弁護士が、レッドカード(離婚)を突き付けるのである。モラ夫は必ず怒る。

 「許してやるから戻って来い」というモラ夫もいるが、これは、戻ったら(その直後、もしくは暫くしてから)、ボコボコにすることを暗示する、甘言の罠である。

◆「夫を怒らせずに離婚したい」は愚問

 つまり、離婚へ向けて動いても、そのまま同居していても、モラ夫は怒るのであるから、怒るかどうかを気にしても無意味である。離婚して他人になるのだから、気にするのはやめよう。しかも、弁護士が被害妻の楯になるので、別居した以降、モラ夫の怒りを直接受けることもない。

 以上、モラ離婚は難しくない。それは、被害妻の決意だけにかかっている。

 問題は、離婚後の生活設計である。別居、離婚し、働き始めて、いきいきとしている(元)被害妻は多い。

 モラを我慢していると、心身を病む。更年期障害が早めに訪れ、しかも重い。子どもたちがモラに同調すると、モラ文化を継承してしまう。逆にモラに反発すると、子への直接モラや面前モラによるトラウマを負い、子の人生に多大な悪影響を及ぼす。

 さまざまな事案があり、一概にはいえないことを承知で言う。

 モラ夫からは、逃げるのが一番である。

【大貫憲介】

弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし~モハメッド君を助けよう~』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中

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