「愛してる」イコール「俺の奴隷になれ」。モラハラ夫の歪んだ言語感覚<モラ夫バスターな日々25>

HARBOR BUSINESS Online / 2019年8月20日 8時31分

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Contents1 弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々<25>」2 モラ夫の主張する「夫婦愛」は「従属関係」と同義3 モラ夫に限っておしどり夫婦を演じる4 子が心配と言いつつ、養育費を値切ろうとする

◆弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々<25>」

 妻に逃げられ、離婚を突き付けられた夫(40代)が、妻(40代)宛に手紙を書いた。そこには、

「海よりも深く、山よりも高く、お前を愛している

弁護士に邪魔されて、3ヶ月もお前や娘たちに会えていない。心配で死にそうだ。」

 と書かれていた。

 妻は、手紙を読み、暗い表情で深いため息をついた。

 モラ夫の多くは、妻に逃げられても「愛している」「戻ってきて欲しい」「今回のことは許してやる」などと言う。別居の直前まで夫婦仲はよかったなどと言い出す。同居していた頃の家族旅行の写真やビデオを家裁に提出するモラ夫も少なくない。

 他方、逃げた妻から聞くと、モラ夫は、日常的に妻をディスり、怒鳴る。機嫌が悪くなると、物に当たり、ドアをバタンと閉め、壁をパンチする。そして、妻をガン無視する。

 これらの事実をモラ夫にぶつけると、自らのモラを否定し、冤罪だ!と言い張る。そして、お前(弁護士)では話にならない、妻と直接話させろと吠える。

◆モラ夫の主張する「夫婦愛」は「従属関係」と同義

 確かに、妻が嘘を述べている(つまり「冤罪」)事案もあろう。しかし、多くの事案で、嘘をついているのはモラ夫であって妻ではない。

 モラ夫の提示するストーリーの一番の弱点は、妻が逃げた理由を合理的に説明できない点にある。別居直前まで仲が良かったのなら、なぜ逃げ出すのか。これをどうにか補強しようとして、「引き離し弁護士」が離婚を焚きつけたなどと真顔で語るモラ夫もいる。

 妻が当座の生活費を引き出した点を捉えて、俺の金を横領したので怖くて逃げ出したと言い出したり、何の根拠もなく、男と駆け落ちしたなどの「冤罪」で対抗するモラ夫もいる。

 ところで、妻への愛と妻イジメ(モラ)は、両立しないはずだ。しかし、多くのモラ夫は、妻をイジメながら、「妻への愛」を語る。モラ夫の愛はモラと両立するものとして語られるのである。

 すなわち、モラ夫の夫婦愛とは、モラ夫が支配し、妻が従属する、そのような支配従属の関係をいうのではないか。これは、もはや、通常の日本語とは異なるものである。

 よく観察すると、モラ夫の言語には、このような歪みが少なくない。例えば、モラ夫の言う「話し合い」とは、モラ夫が自分の考えを妻に押しつけることである。

 モラ夫の「謝罪」とは、「悪かったな!」と吐き捨てて、その話題を終了させることである。私は、このような、モラ夫の歪んだ言語をモラ語と呼んでいる。

 以上、モラ語の「愛している」「戻ってきて欲しい」は、支配従属関係の回復への期待を表している。これを通常の日本語の意味合いで受け取り、モラ夫の元に戻ると、従前よりも厳しい支配従属関係を押し付けられ、モラが激化する可能性が高い。

◆モラ夫に限っておしどり夫婦を演じる

 モラ夫は、世間体を気にするので、対外的には、おしどり夫婦を演じることが多い。被害妻は、モラ夫には逆らえないので、モラ夫の期待にしたがって、夫に従う良い妻を演じることになる。

 正面からモラハラを問う離婚裁判を起こされた、ロック歌手の高橋ジョージさんは、破局以前はおしどり夫婦として知られていた。しかし、実際には、妻を支配し、様々な俺様ルールを押し付けたとされている。

 その結果、妻は逃げ出した。結局、裁判は取り下げられ、協議離婚が成立した。高橋さんは、自らの「モラハラ」を否定しているらしいが、日本に「モラハラ」の言葉を広めた最大の功労者と言っても差し支えない。(参考)

 高橋さんの例に限らず、夫唱婦随のおしどり夫婦が、実は、モラ夫と被害妻であることは少なくない。被害妻たちの多くは、離婚を決断するまでは、夫に従うよい妻を演じるのである。

◆子が心配と言いつつ、養育費を値切ろうとする

 モラ夫の多くは、子が心配と言い募る。家庭では支配者として君臨していたモラ夫が、家裁の調停室では、泣き崩れて、調停委員を泣き落そうとすることも決して稀ではない。同居時は、子育てに無関心だったにもかかわらず、家裁ではイクメンだったと言い張ることもある。

 他方、多くのモラ夫は、養育費を支払おうとしない。家裁では養育費を一円でも安くしようと、あることないこと(ないことないこと)を言い立てる。子が心配なのに、養育費を値切ろうと、精魂を傾けるのである。その熱心さは、「子が心配」って何なんだよ、と言いたくなるほどである。

 冒頭の手紙に戻ろう。海よりも深く妻を愛している夫の元に戻るのは、おそらく賢明な選択ではない。戻ったら、モラハラの海に沈められ二度と浮かび上がってこれないだろう。

【大貫憲介】

弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし~モハメッド君を助けよう~』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中

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