プロ野球選手が「野球以外」にやっていることとは?<西武ライオンズ・増田達至投手>

HARBOR BUSINESS Online / 2019年8月28日 15時31分

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埼玉西武ライオンズの守護神として活躍する増田達至投手

 ペナントレースが佳境を迎えているプロ野球。チームの成績に一喜一憂しているファンも多いはずだが、本稿ではプロ野球選手の“働き方”にスポットを当ててみた。子どもたちを勇気づける社会貢献活動や、“出張中”のコンディション調整、プレッシャーのかかる場面への臨み方など、彼らは普段どのような意識で取り組んでいるのか? 埼玉西武ライオンズの増田達至投手が、知られざるプロ野球選手の裏側を語ってくれた。

Contents1 歴史の長いライオンズの社会貢献活動2 「自分も勇気づけられる」NICU病棟の支援3 プレッシャーに向き合うには切り替えと準備を4 その日の自分の状態をしっかり把握する5 “出張”では移動中にしっかり休む6 サラリーマンも夏バテ対策はしっかり

◆歴史の長いライオンズの社会貢献活動

 試合で活躍することがスポーツ選手のトッププライオリティであることは間違いない。しかし、それだけではなく、フィールド外で社会に大きな影響を与えることができるのも、プロ野球選手という職業ならではの要素だ。

 ご存知でない読者の方もいるかもしれないが、実は西武ライオンズの社会貢献活動の歴史は長い。‘81〜‘83年シーズンに在籍していたテリー・ウィットフィールド氏のこどもたちへの試合招待、‘90〜‘04年シーズンに在籍していた潮崎哲也氏の知的障害児・肢体不自由児とその家族への年間席寄付など、アスリートの社会貢献活動が今のように普及する前から、さまざまな形でサポートが行われてきたのだ。

‘14年には、長年社会貢献活動を行なってきた栗山巧選手が球団史上初の「ゴールデンスピリット賞」を受賞するなど、その姿勢は球団の歴史のなかで脈々と受け継がれている。

 今シーズンは武隈祥太投手が難病の子どもとその家族を試合に招待したり、寄付を行なって支援をしている。パリーグの首位打者を争っている森友哉選手は前述の栗山巧選手とともに、知的障害児や肢体不自由児をに年間席を寄付。外崎修汰選手は子ども食堂などに代表される子どもの居場所づくりを支援している。

◆「自分も勇気づけられる」NICU病棟の支援

 そんななか、NICU(新生児集中治療室)病棟への訪問や寄付を行なっているのが、今回取材に答えてくれた増田達至投手だ。

「病院を訪問して、未熟児で生まれた子を支援するという形で行なっています。ライオンズでは秋山選手がひとり親家庭の子どもたちを球場に招待したり、ほかにも多くの選手が社会貢献活動を行なっています。僕もそういう風にいろんな形でお子さんを支援できればと思って、活動を始めました。

 僕自身も自分の子どもが未熟児として生まれてきて、家族として苦しい思いもありましたし、いろいろな気持ちがありました。そういうなかで、最終的には自分も社会貢献活動という形で支援できればと思って始めたのがキッカケですね」

 活動を始めるにあたっては、増田投手自身の強い思いがあった。

「今は普通に成長していますが、自分の子どもが未熟児として生まれて不安なところもありましたし、家族で話し合って球団のほうになんとかサポートできないかと話をしました。

 病棟を訪問させていただくと、毎回毎回思うことありますね。自分自身が勇気づけられるというのが本音です。少しでも周りの子どもたちに勇気を与えて野球に興味を持ってもらい、実際にプレーしたり、球場に足を運んでもらえれば嬉しいなと思っています。今後は自分が行なっているNICUへのサポートをもっと大きくしていきたいですね」

 憧れのプロ野球選手と身近に触れ合うことができる子どもたちはもちろん、支援を行なっている選手側も勇気をもらえる……。彼らがマウンドやフィールドで活躍する裏には、そんな理想的なサイクルがあったのだ。

◆プレッシャーに向き合うには切り替えと準備を

 プロ野球選手というとまったく違う世界で生きているようにも思えるが、その働き方には一般的なビジネスパーソンにも共通する要素やヒントがある。社会人野球出身の増田投手は、両方の世界を経験している選手の一人だ。社会人時代のワークライフバランスについては、やはり仕事と野球を両立させる難しさがあったという。

「終日勤務するときは、朝会社に行って17時半まで働き、そこからまた球場へ行って自主トレーニングを行ったり。半日勤務するときは、午前中は仕事をして、そこから午後は練習をしたり。やっぱり、両立するというのはスゴく難しかったですね。そうして練習が終わったら、次の日も朝から会社に行かなければいけないですから。プロ選手は野球が仕事なので、それひとつに集中してやらせていただけるのは、ありがたいことだと思います」

 また、増田選手は試合の終盤、もっともプレッシャーのかかる場面でプレーすることが多い。どの仕事にもプレッシャーはつきものだが、しっかりと向き合うことが成果を出すための秘訣のようだ。

「やっぱり、先発ピッチャーに投げていただき、野手の選手たちに打っていただいて、自分が締めるというなかで、しっかりプレーしなければいけないですし、それがチーム(の結果)を左右するところでもあるので。少しでも貢献できればと思っています。

 マウンドに行く前にはスイッチというか気持ちを入れて、リラックスするところはリラックスしてと切り替えるようにしています。特に登板する前のルーティンなどは持っていませんが、メンタル面を強く持つようにするところが自分のなかでは一番大きいですね。最初はどっちかというとすぐ切り替えるほうだったんですけど、最近は少し反省というか申し訳ないという気持ちが強く出てくるようになりましたね」

◆その日の自分の状態をしっかり把握する

 一般企業と同じく、野球はチームスポーツ。組織のなかにいながら、自分のパフォーマンスを最大限発揮するためには、次のようなことを意識しているそうだ。

「やっぱり、ブルペン・キャッチャーであったり、バッテリーを組むキャッチャーとはしっかり話しますね。ブルペンでの投球についても、試合が終わってから『どうでしたか?』と聞いたり。試合になったら、キャッチャーとその日の反省点やよかったところを話すようにしています」

 こうしてしっかりと準備をしたうえで仕事に臨んでいる増田投手だが、連日試合が続くなかでは、“同僚”と話し合う時間を確保するのも大変だ。

「それだけ、いいときも悪いときがありますから。そのなかでその日のいいボールを投げられるように選択していかなければいけないので。そういう面でもしっかりキャッチャーと話し合って、試合になったら、それを踏まえたうえで投球を組み立ててもらうようにしています」

 毎日ベストな仕事ができればそれにこしたことはないが、現実には好不調の波がある。コンディションやその日の状態を把握して、それに合わせたベストを尽くすことが、活躍につながるのかもしれない。

◆“出張”では移動中にしっかり休む

 また、プロ野球選手はサラリーマンで言うところの“出張”が多い職業だ。北は北海道、南は九州まで移動しなければならない埼玉西武ライオンズだが、増田投手はどのように体調管理を行なっているのだろう?

「移動中は僕はほとんど寝てますね(笑)。朝早いことも多いので、新幹線や飛行機ではゆっくりと時間を過ごしています。特に寝つけなかったりということもないので。

 家族と離れてしまう時間も多いですが、テレビ電話をして子どもの顔を見たり、コミュニケーションをとってひと息つけるようにしています。移動によってコンディションを崩したり、苦になるようなことはないですね」

◆サラリーマンも夏バテ対策はしっかり

 プロ野球選手の日々の仕事への向き合い方は、きっとビジネスパーソンにも役立つはずだ。増田投手は最後に今後の抱負とサラリーマン読者への夏バテ対策を贈ってくれた。

「一試合でも多くチームに貢献して優勝を目指して頑張ります! 普段、あまり野球を観ないという読者の方にも、社会貢献活動などを通して、少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。

 夏で暑くなってくるとあまり食事を取れなくなってくると思うので、しっかりご飯と睡眠は取るように気をつけてほしいですね」

<取材・文/林 泰人 撮影/渡辺秀之>

【増田達至(ますだ・たつし)】‘88年、兵庫県生まれ。柳学園高校、福井工業大学から、社会人時代はNTT西日本でプレー。‘12年、ドラフト一位で埼玉西武ライオンズに入団。‘15年にはパリーグ最多の72試合に登板し、リーグ最多の40ホールドを記録。最優秀中継ぎ投手賞を受賞した。‘18年にはチームの10年ぶり22度目のリーグ優勝に貢献。

【林泰人】

ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン

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