軽減税率とポイント還元の組み合わせで税率3~10%に。10月からの「ややこしすぎる」消費税率

HARBOR BUSINESS Online / 2019年9月3日 8時33分

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◆屋台で飲めば10%、持ち帰れば8%、だがアルコール入りは10%

 タピオカドリンクが大人気だ。おしゃれな店でタピオカドリンクを購入して、SNSにアップするのが流行っている。原価が安く、調理のスキルがそれほどいらないということで、続々と店舗が増えている。また狭い店舗でも開業可能という点もメリットのようだ。

 そこで気になるのは、10月の消費増税に伴う軽減税率がどうなるかという点だ。店舗を運営する側にとってもタピオカドリンクを買う側にとっても、どちらも注意したい点を挙げてみたい。

 まず消費増税によって、飲食料品は軽減税率の対象となる。ただし外食は適用外。タピオカドリンクを購入すると、店内で飲むなら10%、持ち帰って食べるテイクアウトなら8%になる。ちなみにタピオカドリンクにアルコールが入っていたら、軽減税率対象外で10%だ。

◆テーブル席で飲むか椅子席で飲むかでも違ってくる

 8%か10%かだけであれば、そう複雑な話ではない。タピオカドリンクの店は屋台で運営している店が多い印象があるが、これがやっかいだ。屋台には折りたたみ椅子や、簡易テーブルを出している店がある。これらが、椅子かテーブルかによって税率が変わってくるのだ。

 かつて国税庁に勤務したことがあるU税理士は「国税庁は、軽減税率の『外食』の定義は、『飲食設備』で飲食料品を提供することを挙げています。屋台のテーブルなどでも『飲食設備』に該当してしまい、税率は10%になります」と説明する。

 その飲食設備が店の自前であるかどうかは関係がない。スーパーやデパートのフードコートの飲食設備は、スーパーやデパート側の持ち物だが、そこを使って客に提供すると外食扱いとなり、税率は10%になる。

 移動販売のタピオカ屋台が公園のベンチのそばに横づけして、購入者がそのベンチで飲食したとする。その店が公園との間でベンチの使用許可をとっていたとしたら「外食」で10%。使用許可は特になく、お客さんが勝手にベンチで飲んだ場合は「テイクアウト」になり、税率は8%が適用される。

「タピオカ屋が面倒だから『持ち帰り』ということにして全部8%にすると、飲食設備のある店舗なら、国税庁から消費税脱税を指摘される可能性もあります」(U税理士)

 国税当局は消費税の取り締まりを重点項目として掲げており、人気のある店舗などはくまなくチェックされると考えておいたほうがよさそうだ。

◆大手チェーン店ごとに異なる対応

「野球場や映画館でも、売店が管理するテーブルで食べるなら10%。座席に持って行ってジュースやポップコーンを飲食すると8%になります。国税庁は、野球場や映画館の座席は試合や映画を観るための座席であって、飲食設備ではないという見解です」(U税理士)

 そのほか、コンビニなどでも同じ商品で税率が違ってくる。コンビニ大手のローソンは、イートイン、テイクアウトの区別については従業員から客に確認はしない方針だ。つまり従業員から「店内で召し上がりますか」といった口頭の確認は行わず、消費者の自己申告に任せるという。正直に申告するかどうかは、消費者次第ということになる。

 そのほかの大手チェーンでも対応が分かれている。ミスタードーナツやスターバックスは、会計時に店員が店内で食事をするかどうかを確認して、それぞれの税率を適用するという方針を発表している。

 一方、牛丼チェーンの松屋では、券売機での対応が難しいことから、テイクアウト価格を引き上げて同一価格で販売する方向で検討している。また、ケンタッキーフライドチキンは、イートインの価格を値下げして同一価格を維持する方針だという。

◆駄菓子も、おもちゃ付き商品など一部は軽減税率外

 消費増税は子供向けの商品にも大きな影響を与えそうだ。駄菓子についても、税率が複雑になる。食品は軽減税率が適用されて持ち帰りだと税率は8%のままだが、おもちゃなどが含まれた一部の駄菓子は10%に上がる。

 この混乱を避けるため10%の商品の撤去を検討する小売店も出始めており、メーカーからは税率の一本化を求める声が出ているという。

 国税当局によると、容器に食品を詰めるなど、食べた後も利用できる商品は「一体資産」とみなされて10%となる。「税抜き価格が1万円以下、商品価格のうち食品の割合が3分の2以上」の条件を満たさなければ、軽減対象にはならない。

 さらに、食品とそうでない商品がセット販売されているケースで厳密にそれぞれの税率を適用すると、流通現場で混乱する可能性もある。

 とある老舗メーカーの駄菓子は、食後の容器が笛などとして使える商品を販売している。しかしその容器は日本製で価格が高く、全体の価格に占める食品の割合が3分の2を下回って、軽減税率の対象外となってしまうという。

 筆者は週末、子供を連れて駄菓子屋を訪れた。60代の店主は「30円ほどの商品を並べて、いろんなお菓子を売っているわけでしょ。売っている方だってこの商品がどういう税率か複雑なのに、子どもたちに説明するのは簡単ではないよ」と嘆いていた。

◆カードを何枚も持つ人ほど還元額が大きくなる

 また軽減税率に加えて、キャッシュレス決済に限って価格の2~5%をポイント還元する制度も導入される。還元分を国が負担し、その対象となるのはクレジットカード、交通系ICカード、電子マネー、QRコード決済など。消費増税後の景気の落ち込みを防ぐ特例のため、今年10月から来年6月までの期間限定となる。

 実際のポイント還元の方法としては、「支払い額の2~5%がポイントとして付与される」、「購入したその場で2~5%分が値引きされた額を支払う」という、2つの方法が想定されている。

 クレジットカード大手6社(JCB、三井住友カード、ユーシーカード、クレディセゾン、イオンフィナンシャルサービス、三菱UFJニコスのMUFGカード)は、還元分のポイント相当額を請求段階で差し引く方針だ。楽天カードなどは、政府が原則とするポイント付与で対応するという。

 またクレジットカードには、共通の「上限枠」を設けられることになるという。その上限は還元額1万5000円で、仮にすべての決済を還元率5%の中小店で行ったとしても、カード利用額としては月30万円が上限。これはカード1枚当たりの上限で、何枚もカードを持つ人は還元額が大きくなる。

 つまりカードを複数枚持っているなら「枚数×30万円」までポイント還元の恩恵を受けられる。上限枠はクレジットカード以外のキャッシュレス決済手段にも設定される。現時点では未定な部分も多いが、電子マネーについては1日のチャージ上限額が1日の還元上限額となるというのが有力だ。

◆キャッシュレス決済のポイント還元制度が、複雑さに拍車をかける

 そして消費者にとって分かりにくいのは、すべての店で行うキャッシュレス決済が対象になるわけではないということだ。

 東京都世田谷区の税理士K氏は「対象となるのは中小企業に限定され、大企業は対象外。さらに中小企業でも全事業者が対象というわけではなく、自主的に登録した事業者に限られています」と説明する。ポイント還元を受けたければ、どの店がポイント還元に参加しているのかを消費者側が見極めなければならないということになる。

 さらに、そのポイント還元率についても「5%」と「2%」という複数の還元率がある。この点もさらに実態を複雑にしている。

「フランチャイズ店舗に関しては2%、そうでない中小事業者の店舗については5%という2種類の還元率を使い分けることになります。同じコンビニチェーンであっても、本部直営店などは大企業扱いでポイント還元が適用されません。同じチェーン店舗であっても2%の還元が受けられる店と受けられない店があるという点も注意してください」(K税理士)

 これまで見てきたことを総計すると、軽減税率と2種類のポイント還元率の組み合わせによって、税率3~10%に分かれることになる。まさに10月から「ややこしすぎる」消費税率が始動することになるのだ。

<文/藤池周正(ライター)>

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