参院選で安倍首相肝入り候補を組織的支援、証拠資料流出も教団は関与を否定<政界宗教汚染〜安倍政権と問題教団の歪な共存関係・第16回>

HARBOR BUSINESS Online / 2019年9月12日 8時33分

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北村への組織的支援を示す教団内部文書

 今年7月の参院選において統一教会(世界平和統一家庭連合)が安倍晋三首相肝入りの候補者への投票を促す組織的な策動を行っていたことを示す教団内部文書を入手した。6年前と同様に“安倍首相じきじきの後援依頼”はあったのか。内部文書を検証する。

◆組織的な北村支援の証拠資料を入手

 その候補者とは、安倍首相・菅義偉官房長官と統一教会との緊密な関係を示すキーマンで、二期目を目指していた北村経夫参議院議員(自民党)。本連載の番外編『安倍首相肝入りの候補、北村経夫参議院議員の演説会に統一教会信者が大量動員』では、参院選運動期間中に大宮で開かれた北村の個人演説会に同教団信者が大量動員されていたことなどを記しだが、今回入手したのは全国規模での策動の組織性を示す新たな証拠資料だ。

 資料は2枚、それぞれ『「国家と家庭を守る政治家」北村つねお議員の紹介フレーズ例』と『ラベル宛名提出に関するQ&A』と題されており、同教団のある地区の家庭教会で信者に配布されていたものだ。

 資料の発行元は『北村つねおを応援する会』となっており、記述内容から4月に配布されたものと見られる。

 『「国家と家庭を守る政治家」北村つねお議員の紹介フレーズ例』と題された資料には「ご親族・知人に北村つねお議員を紹介頂くときの参考にして下さい」として、北村のパンフレットを送る前と送付後にかける電話の会話例が記載されている。実際にこの手の電話を受けたという証言も得ている。

◆全国規模での策動をうかがわせる教団内部文書

 資料には安倍首相との関係を強調する内容も記載されている。

「安倍首相と同郷の山口県出身で、安倍首相からの信頼が厚い方です。」

 また、『ラベル宛名提出に関するQ&A』には、後援会への入会に関する記述があり、北村の後援会組織が統一教会によるものであることを示している。また、パンフレットの送付先の例として神奈川や岐阜の住所が印字されており、この策動が全国規模で行われていたことをうかがわせる。

 北村の国会事務所に当該資料を示し質問書をFAX送信した。質問の要旨は以下の事項だ。

・当該資料及び「北村つねおを応援する会」について、北村議員・秘書は知っていたか

・「北村つねおを応援する会」=北村経夫後援会という理解でよいか

・2019参院選でも2013年の参院選と同様に統一教会・家庭連合からの組織的な支援を受けたことについての見解

 参院選での取材時、「世界平和連合からの支援については聞いたことがある」と話していた北村の政策秘書だったが、原稿執筆時点で回答は得られていない。回答があり次第、追記する。

◆教団広報に質問書送付

 教団広報(総務局広報部)にも当該資料と質問書をFAX送信した。質問要旨は以下だ。

・2枚の資料『「国家と家庭を守る政治家」北村つねお議員の紹介フレーズ集』と『ラベル宛名提出に関するQ&A』は教団が作成したものか

・「北村つねおを応援する会」は教団が結成した会か

・「ラベル宛名提出に関するQ&A」に「目標達成に向けて」とあるが「目標」とは何のことか

・全国規模で行われたものか

・「後援会への入会」とあるが、「北村経夫後援会」は教団によるものか

・2013年の参院選では、教団内部資料に安倍晋三首相からの「じきじきの後援の依頼」が教団に対してあったことが記載されていたが、今回も同様に安倍首相からの依頼があったのか、それとも北村議員サイドからの依頼か、あるいは教団が自発的に行ったものか

 教団からは即日、「当教団としてこのような資料を作成したという事実はございません」と回答があった。何かと批判的に捉えられる同教団だが、外部からの質問に対し迅速な回答を行う姿勢自体は評価できるものだ。

 教団からは詳細な調査を行うためとして資料が配布された地区と資料を筆者に渡した信徒の名を知らせるよう要請があったが、情報源を秘匿するために断った。

◆教団組織票の上乗せで連続当選

 北村といえば落選必須と見られていた2013年の参院選において、“安倍首相じきじきの後援依頼”により統一教会が組織票約8万票を投入し初当選を果たしている。

 その2013年の参院選全国比例区、北村の得票数は142,613票で当落ラインは77,173票だった。統一教会組織票約8万票を引くと当選ラインには届かない計算だ。

 そして今回、2019年の参院選全国比例区で2期目の当選を果たした北村の得票数は178,210票、前回より約3万5千票増えている。当落ラインは131,727票。この3.5万票が6年間の議員活動の成果だとしても、やはり統一教会票が前回と同じく約8万票だったとすると、やはりそれ無しには当選できなかったことになる。

 ところが周辺取材を続けると、当の北村自身は統一教会から支援を受けること自体を快く思っていない節がある。

 そのためか北村は自身の疑惑を伝える筆者の一連の報道に対して“寛容”だという。議員事務所も居留守を使うことなく電話応対も丁寧だ。その辺り、北村自身が産経新聞政治部長を務めていた経歴から“報道”の自由を尊重するという姿勢も見られる。

 結果として向こう6年間をこの教団の紐付きで国会議員活動をすることとなった北村。今後も官邸と教団の関係を示すキーマンとして注目され続けることになる。

 次稿では、内閣改造に際し初入閣への意欲を地元支援者に語っていた菅官房長官の“番頭議員”の動向を含め、菅政権への布石について検証する。

(文中敬称略)

<取材・文・撮影/鈴木エイト(やや日刊カルト新聞主筆)>

【鈴木エイト】

すずきえいと●やや日刊カルト新聞主筆・Twitter ID:@cult_and_fraud。滋賀県生まれ。日本大学卒業 2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)

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