たった1日の花見に5700万円使う安倍政権、千葉の災害に13億円。増税の前に「カネの使いみち」を厳しく監視しよう

HARBOR BUSINESS Online / 2019年9月26日 8時33分

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Cage / PIXTA(ピクスタ)

◆佐藤治彦の[エコノスコープ]令和経済透視鏡第3回

◆私が、台風通過3日後まで千葉の被害を知らなかった理由

 気象庁が事前に「接近とともに世界が変わる」と警告した台風15号は令和元年2019年、9月8日深夜に関東地方に接近、上陸した。

 当日、私は自宅のベランダから窓越しに外を見て、その凄まじさに恐怖におののいた。翌朝になると、表の大木が何本も折れ道は散乱し、閉め忘れた小窓から吹き込んだ風でバスルームは驚くほど汚れていた。それでも、260万人が住む千葉県に比べれば大したことはなかった。停電や断水が数週間にもわたって続き多くの人が被災したからだ。

 その惨状を知ったのは3日後だった。

 台風が過ぎ去った直後のテレビや新聞のメディアは、人気の小泉進次郎議員が大臣に登用されたと組閣のニュース一色で、ほとんど台風15号の被害については報道しなかった。だから、私が千葉県の被害について知ったのはメディアが報道を伝え始めた3日も経った後だったのだ。

 いや、正確にいうと、SNSでは被害直後から多くの人が大変なことになっていると情報を発信していた。それを知りつつもSNSのそれも匿名個人の流す情報は、既存メディアの情報と比べるとその信頼性に差がある。フェイクニュースも多いからだ。

 だから、ツイッターやフェイスブックの情報が真実ならば、メディアが報道しないわけがない、と思ってしまった。しかし、その認識は間違っていた。

 千葉県では最大で93万世帯が停電した。県内260万世帯だから35%の家庭から電気が消えたのだ。5日経っても18万世帯で停電。多くの世帯で停電・断水で困っているときに、安倍内閣は組閣をしたのだ。選挙で常に洗礼を受ける宿命の民主主義国家の政治家なら、組閣を延期し被害者救援に乗り出すのが当たり前だと思うのだが、それをしなかった。特に千葉県は7月の参議院選挙で、その選挙区の定数3人のうち2つを自民党に議席を与えた自民党王国である。本当に驚いた。

 東京電力が千葉県内の停電戸数がゼロになったと発表したのは9月24日だった。

◆たった1日の花見に5700万円使う安倍政権が千葉被害には13億円

 私は覚えている。たった20年前、1999年(平成11年)の10月。同じ自民党の内閣であった小渕恵三首相は、組閣を4日間延期した。それは、前日に発生した東海村JCO臨界事故への対応のためだった。

 その理由は良くわからないのだが、安倍政権はその後も東京電力など民間業者に復旧を急ぐようにと指示は出したが、自ら風水害被害に対して対策もその後の復旧の支援も消極的に見えた。

 なぜなら、台風15号で被害を受けた千葉県に対して当初つけた予算は予備費からのたった13億円だったからだ。政府主催の花見の会はたった1日だけのお楽しみの会だが、それに使われた税金は5700万円。バランスがあまりにも良くないように見える。

 その後、まるで罪滅ぼしのように新聞は連日一面トップで千葉の惨状を伝え、テレビもワイドショーから報道番組まで千葉県の被災地を連日報道した。ネットで千葉は棄民されたと揶揄する人も大勢出て来た。こうして政府や千葉県の対応に対して批判が噴出した後、台風が過ぎ去った2週間後になって、屋根が飛ばされた世帯など、本来は公的援助が出ない一部損壊の住宅にも支援の手を差し伸べると発表がされた。

◆駆け込み買いしたくても、そのカネがない

 10月1日に消費税が10パーセントになり、一世帯あたり年間3万円ほどの増税になる。増税になるのだから駆け込み需要が増えて経済は一時的にも加熱するかと思いきや、そういった気配はほとんどない。多くの人が言う。

「駆け込み買いしたくても、そのカネがない」――。

 確かに9月20日に厚生労働省が発表した令和元年7月の毎月勤労統計調査(確定値、従業員5人以上)によると、実質賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は前年同月比1.7%減と、速報値の0.9%減から大幅に下振れしていた。カネがなければ買いたくても買えない。当たり前だ。

 この10月に消費税が上がることで、多くの識者は経済の下振れを予測する。

 景気が悪くなれば、政府はさらなる経済へのテコ入れが求められるだろう。そのときに必ず出てくるのが、積極財政論者と健全財政論者の議論である。

 積極財政論者は、とにかくカネをばらまいてでも景気のテコ入れをしろと言う。健全財政論者はそんなことをしていたら、財政破綻して国の経済がひっくり返るから辞めておけと言う。

 最近、積極財政論者が勢いづいている。なぜならMMT理論などと言うトンデモ学説が出てきたからだ。世界中の政府が巨額の債務を抱えていて、これ以上の借金で経済のテコ入れをし続けるのには流石に無理があると考えざるおえない人たちに、こんな考えもあるよと出てきた、私に言わせれば悪魔のささやきのような考えだが、積極財政論者は飛びついた。これは簡単に言えば、自国通貨建ての債務であれば、さらに赤字財政を拡大させても経済成長が達成できる。そして、経済成長で債務を返済すればいいと言うもの。先送りを永遠に続けられそうな能天気な理論である。

 だが、健全な財政を確保するためにと、この10月に消費税を上げるのは日本経済の景気の腰を折ることも確かだ。また、景気のことを考えて消費税の増税を先送りし続けてきたこともこれまた確かなことなのだ。

 佐藤はどっちが正しいと思ってるのか? そう言われると、判断は難しい。どちらかと言うと財政健全論者なのだが、景気に深刻な打撃を与えていいわけがないとも思っている。ただ、確かなことは、国は我々から徴収した税金なのだから、予算を組むにしても、もう少し賢く使って欲しいと思うのだ。

 まずは国の出す金の規模だけでなく、頭を使って支出しているかを監視すべきだと思うのだ。

◆もっと税金の使いみちを「監視」しよう

 例えば、2011年の東日本大震災に関連するもの。もちろん被災した人に手を差し伸べるのは国の仕事だ。国民の生命と財産を守ることは国家が第一にしなくてはならない。当時、福島、宮城、岩手の3県には多くの仮設住宅が建てられた。その数は約5万2000戸。それくらい必要だったのだろう。

 当時、仮設住宅の建築費用について厚生労働省は、1戸あたり240万円程度といっていた。まあ、それくらいかかるだろうなと思った。ところが、実際は解体費用も含めて800万円かかっていると言うのだ。

 800万円もかけるのであれば、仮設でなくそこそこまともな新築住宅が建てられたはずだ。それに、せっかく建てた仮設住宅を多額の解体費用(1戸あたり100万円)もかけてなんで壊すのか? 意味が分からない。何しろ、その後も日本では多くの自然災害に見舞われている。その度に多くの人が冷暖房もプライバシーもない、体育館などで何週間も避難生活を余儀なくされる。それは、熊本地震の時も、広島の土砂災害の時も、222人もの人命が失われた2018年の西日本豪雨の時も同じだった。

 そして、熊本地震の時は亡くなった267名の犠牲者のうち、建物の崩壊などによる圧死など災害による直接死の人は50名で、残りの217名は震災関連死だった。震災の避難生活などによるストレスや、劣悪な環境もあって悪化した持病で亡くなってしまう人がそれほどいるのだ。

 今回の台風15号による千葉県での死者も台風そのものでの死者はいなかった。にも関わらず、その後の停電による熱中症などで何人ものかたが亡くなった。

 停電断水した場所に、多くの人を長期間も放置しておく理由が分からない。仮設住宅を壊さずとっておき、そこに一時的にも避難してもらえばいいのにと思うが、地元を遠く離れたくないというのもよくわかる。

 日本はこれからも地震や台風など自然災害が起こる。その度に多くの人を体育館で何週間、ときには何ヶ月も生活させ、仮設住宅を800万円もかけて建てる。そして、用済みとともに壊す。そんな馬鹿げたことを繰り返すのはもうやめたほうがいい。

 もちろん東北の仮設住宅に九州の被災者を収容しろと言うのは無理がある。それなら、仮設住宅が被害が起きたところに出向いていけばいい。

 そこで、私は米国など欧米でよく見る、トレーラーハウスを仮設住宅として使うことを提唱している。

◆トウモロコシを買うならトレーラーハウスを買えばいい

 トレーラーハウスは、家具、電化製品、キッチン、バスルーム、トイレ、もちろん冷暖房など生活に必要な設備が備わっている。そのまま移動できるので、陸上輸送できる範囲で被災地に近いところに急行できる。体育館で避難生活するという、非人間的な環境を長期間、強いる必要がなくなる。各地にあるキャンプ場などを整備しておけば災害の時にもすぐに使えるだろう。通常は国民に広くレジャーの拠点として使ってもらい災害の時には被災地として使えるように整備しておくのだ。

 トレーラーハウス自体も平時は観光用の宿泊施設として使うこともできる。季節によって需要の高いところに移動もできる。東京オリンピック、パラリンピックの時には東京周辺で、大阪万博の時は大阪周辺に、秋の観光シーズンなどには宿泊施設が足りない京都、夏の東北三大祭りやよさこい祭り、札幌雪まつりなど、シーズンや行事で宿泊施設が足りなくなるところに移動させ、貸し出せばいい。地元の観光業はもっと多くの観光客をピークシーズンに呼べると喜ぶはずだ。各地の経済も潤う。

 このように通常は観光用として大いに活躍してもらえば、トレーラーハウスに対しての支出も回収できる。また、災害時には国民の命と健康を守ることに迅速に対応できる。さらにトレーラーハウスは日本にも業者はあるのだが、何と言っても米国の得意芸だ。米国との外交上の関係を良好に保つために何か購入する必要があるのなら、トレーラーハウスを1万台くらい買えばいい。よく分からないトウモロコシや、多くの国民の理解を得たとは言い難い軍事防衛関連のものよりは容易に国民の賛同も得られるはずだ。

◆建てて壊す仮設住宅よりマシ!?

 日本は米国車の輸入が少ないとこの何十年もご立腹のワシントンの政治家たちも満面の笑みになるのではないか?トレーラーハウスは200万円くらいからあるが、400~500万円も出せば、なかなか立派なものが手に入ることも付け加えておきたい。米国や欧州ではそこを住まいとして使っている人も大勢いる。

 800万円も出して仮設住宅を建設しまた壊し、そのたびに大量の廃棄物を出すよりもよっぽどマシだと思う。

 トレーラーハウスだけでなく、東京オリンピックの時には臨時の宿泊施設に利用することが決まっている大型客船、それも国が災害用として購入すればいい。船には生活に必要な設備は全て備わっているのだから災害のあった近くの海岸に横づけし被災者にしばらく生活してもらえばいいのである。通常は民間に貸し出せる。短期間であればクルーズ船として利用してもらってもいいし、毎年増え続ける外国人観光客の宿泊施設としても利用することもできるだろう。これも使った金を回収していける。 建てては壊す仮設住宅よりもよっぽとましではないだろうか?

 増税のたびに繰り返される、積極財政論者と健全財政論者の議論の前に、まずはカネを使うのなら本当に必要なものに上手に使う。その当たり前のことをしているか、国民も行政ももっとこだわるべきだと思うのだ。

【佐藤治彦】

さとうはるひこ●経済評論家、ジャーナリスト。1961年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、東京大学社会情報研究所教育部修了。JPモルガン、チェースマンハッタン銀行ではデリバティブを担当。その後、企業コンサルタント、放送作家などを経て現職。著書に『年収300万~700万円 普通の人がケチらず貯まるお金の話』(扶桑社新書)、『年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』 (扶桑社文庫・扶桑社新書)、『しあわせとお金の距離について』(晶文社)、『お金が増える不思議なお金の話ーケチらないで暮らすと、なぜか豊かになる20のこと』(方丈社)、『日経新聞を「早読み」する技術』 (PHPビジネス新書)、『使い捨て店長』(洋泉社新書)

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