日本のお笑い芸人による「差別ネタ」炎上続く。外国人はどう見たか?

HARBOR BUSINESS Online / 2019年9月29日 15時31分

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 日本のお笑いグループが人種差別的な発言で次々と炎上している。人種問題を皮肉るジョーク、タブーに挑んでいるようで単に無知な差別……。ハッキリと線引きできないケースもあるが、今回の場合は間違いなく後者だろう。

◆海外では即解雇のケースも

 差別的な発言のため、敢えて引用は控えるが、ワタナベエンターテインメント所属のAマッソがイベントで披露したネタが、大坂なおみ選手の肌の色を揶揄したネタがSNSで批判されたことをきっかけに炎上。24日には所属事務所のワタナベエンターテインメントが「配慮に欠く発言を行った」と謝罪をしている。

 続いて、Aマッソの炎上がきっかけとなって、吉本興業所属の「金属バット」のネタにも批判の目が集まった。こちらは、「人種差別」そのものをネタにしつつオチに黒人差別的なフレーズを持ってくるというものだった。

 社会的立場のある人間が公の場で人種差別を行えば、炎上するのは当たり前だ。日本ではひとしきり謝罪をして、あとは有耶無耶になることが多いが、海外ではあっという間に解雇されるケースも少なくない。先日もアメリカでは人種差別的な言葉を叫んだデザイナーの女性が身元を特定され、解雇されている。

◆「差別と言うほうが差別」という屁理屈

 今回の炎上については、ネット上などで「人種問題に触れただけで、差別だと言うほうが差別だ」と擁護する声もあがっている。たしかに特定のテーマや人々だけがタブー視、忖度され、触れることができないというのは不健全だ。

 しかし、先に紹介した炎上したネタを見てもらえばわかるとおり、これらは何か問題提議をしているわけでもなければ、社会の構造などを表しているわけでもない。単に人種や肌の色を揶揄しているだけである。これを「差別と言うほうが差別」と屁理屈で擁護するのは、無理があるだろう。というか、ヘイトが生まれる環境を押し進めることにしかならない。

 実際、海外には人種、性、宗教などをテーマにしたスタンダップコメディや映画は山ほどあるが、より際どい内容を扱っても、こういった形で炎上することはあまりない。それは、たとえばマイノリティの立場にある人が、自分たちのコミュニティについて触れたり、異なる文化と比較しているからだ。

 ネタをやっている当人たちも、観客も、圧倒的マジョリティの側にいながら、マイノリティの見た目に関することなどを直接的に“いじれば”、海外でも炎上することは間違いない。また、その余波も、謝罪コメントを出して済むようなものではないだろう。

◆謝罪の仕方にも批判が

 では、こういった日本のお笑いは外国人の目にはどう映っているのか? 在日外国人に、今回の騒動と炎上したネタについて意見を求めると、次のような答えが返ってきた。

「WTF⁉ 酷いね。まず最初に言いたいのは、まるで面白くないってこと。差別的でおまけに笑えないって最悪だよ。どこが面白くて笑えると思ったのか、説明してほしいね。彼女たち(Aマッソ)だけじゃなくて、大坂なおみさんに関して炎上するのはこれが初めてじゃないよね? 何も進歩してないよ。あと、謝罪の仕方もよくないと思う。たまたま事故が起きたような言い方だけど、ハッキリ差別的な発言をしたって謝るべきだ。自分たちも被害者であるような言い方はよくないよ」(アメリカ人・男性・38歳)

 何が問題で、どのように再発防止をして、どんなペナルティを課すのか。そういった部分を見つめなおさずに、「怒られたから謝る」だけでは、何の解決にもならないだろう。

 また、次のような意見も。

「オー、ゴッドって感じ。でも、これはこのコメディアンの人たちに限った話じゃなくて、日本全体の問題だと思う。人種だったり、セクシュアリティだったり、病気だったり、話していてギョッとすることがすごく多い。本人は笑わせようと思っていて無自覚だから、何がよくないのか伝えるのが難しい。こういう差別的なジョークで笑えるとしたら、無知だから。人種問題みたいな難しいテーマを笑いに変えるには、本当に頭がよくないとダメだと思う」(ノルウェー人・女性・33歳)

◆「肌の色で笑いものにされる」社会

 炎上したネタをつまらない冗談だと受け止めるか、危険なものだと受け止めるかは、人それぞれだろう。“笑い”や“いじり”がどれだけ力強いものかは、本来お笑い芸人である当人たちが一番知っているはずだが、今回はそこに無自覚だったのかもしれない。

 たとえば、国際結婚が増えるなか、今後日本でも異なるルーツを持った人々はさらに増えていくはずだ。こういった笑いが野放しにされたまま、彼らが「肌の色で笑いものになる」社会で育つようなことは望ましいことだろうか?

 今回のネタもアフリカ系のルーツを持ったお笑い芸人が言ったのであれば、日本社会におけるマイノリティの問題を笑い飛ばすものとして、むしろ勇気を与えることにもなったかもしれない。単に言葉狩りをするのではなく、何が問題だったのか、しっかりと理解する必要があるだろう。

 アフリカ系コメディアンがさまざまな人種が入り混じった観客を相手に、黒人社会における問題点を皮肉るのと、日本人が日本人だけで埋め尽くされた客席に向かって「漂白剤がいる」「黒人の触れたものに座れない」と言うのでは、まったく意味合いが変わってくる。

 ただ、今回の件に関しては、こういった発言を公の場でお笑いのネタとして放つ時点で、人種問題について何か伝えたいメッセージがあるとはとても思えない。安全な立ち位置から、他の人種を消費しているだけなのではないだろうか。

 今回、炎上した2組の芸人は、若手の中でも才能があると言われている注目のコンビだ。今回のことをきっかけに、際どい笑いの中で社会的な問題をえぐり出すような、そんなエッジの効いたネタをつくりあげてほしいものだ。

<取材・文/林 泰人>

【林泰人】

ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン

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