モラハラは脳内麻薬を伴う依存症。治療は至難の業<モラ夫バスターな日々32>

HARBOR BUSINESS Online / 2019年10月8日 8時31分

写真

<まんが/榎本まみ>

◆弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々<32>」

 先日、相談に来た30代後半の妻によると、夫は、些細なことで切れ、怒鳴り散らすという。先日、「離婚だ!出てけ!」と怒鳴られたので、子どもを連れて実家に帰った。

 その1週間後、夫が実家に訪ねてきたが、家には入れなかった。夫は、玄関の前で泣き出し、反省している、二度と怒鳴らない、心を入れ替えるので帰ってきて欲しいと土下座したという。

 妻は、私に、「夫のモラは治りますか?」と訊いた。

◆モラは脳内快楽物質を伴う、一種の依存症である

 この連載の28回で指摘したとおり、モラ夫になる原因は、人格の基礎部分に内在化されたモラ文化(男尊女卑、性別役割分担など、モラ夫を許容、助長する文化的社会的規範群)である。モラ夫本人が、「家長/支配者」になったと認識したとき、モラスイッチが入り、妻に対するモラが始まる。

 妻をディスり、怒鳴ると、妻は萎縮する。多くの妻は、自分を責め、或いは、単に怒られるのを避けるため、ごめんなさいと謝罪する。モラ夫は、モラを行うことにより、妻の謝罪という結果を得る。なお、ある熟年の妻は、結婚当初は、反論していた。しかし、「反抗」したとされ、夫から殴られ、反論はやめた。そして、ひたすら謝罪することにしたという。

 ところが、妻が謝罪しても、モラは止まらない。怒りがやや沈静化しても、説教が始まることも少なくない。多くの妻の証言では、ディスり、怒鳴り、説教しているときの夫は、疲れを知らず、瞳孔が開いているという。「爬虫類の目」との証言も多い。怒っているのに、得意気な雰囲気であったりする。説教は、夜遅くから、明け方まで数時間続くこともある。

 なぜ瞳孔が開き、これほど元気なのか。脳内麻薬が大量に分泌され、脳内の報酬系が活性化しているのだろう。

 説教の後、多くのモラ夫は、半ば強引に「仲直り」の性交渉に及ぶ。妻の意思に反しても性交渉に及ぶのは、それが、「愛の確認」などではなく、「支配/従属関係の確認、強化」のためだからであろう。

◆モラ行為で多幸感を得るモラ夫

 すなわちモラ夫は、モラにより、即効性の結果(妻の謝罪)を得、脳内麻薬の分泌により多幸感を得る。これらは、冷静な大人の話合いでは得られるとは限らない「報酬」である。しかも、「仲直り」性交渉のボーナスまでついてくる。こうして、モラ夫は、モラに依存するようになる。

 依存が成立すると、モラ夫は理由があって怒るのではなく、怒るために怒るようになる。したがって、怒る理由は何でもよい。

 味噌汁がぬるい、妻の態度が悪いなど、言い掛かりで怒る。多くの依存がそうであるように、モラ夫も、自らの依存を正当化するために様々な屁理屈を編み出す。

 その典型例が、「俺を怒らすお前が悪い」である。お前(妻)がドジで気が利かないので、俺は、怒るしかないという。このような屁理屈により、モラ夫の認知は歪み、それが累積すると、モラ夫は、モラ脳となり、妻の話が通じなくなる。

◆モラハラは治療できるのか?

 私の理解では、モラ夫の治療には、最低限、2つのことが必要である。

 第1は、幼少期の社会化の際に取り込んだモラ文化を書き換えることである。人格の基礎部分に内在化されているため、数年間を要する作業になるだろう。

 第2は、依存症治療である。モラ夫自身が、依存の仕組みを学び、自己の認知の歪みを正し、さらに、モラを繰り出そうとする自分自身をコントロールするための対処方法(コーピング)を編み出し、実践する必要がある。依存症治療も、数か月では終わらない。

 そして、以上の治療を行っても、モラが治るどうかは、何ともいえない。

◆モラ夫の言う「反省」は見せかけに過ぎない

 冒頭の相談者の夫は、妻をディスり、怒鳴り散らし、説教してきたという。間違いなく、モラに依存している。

 モラを行うためには、その対象、すなわち、被害妻の存在が欠かせない。モラ夫が反省し、土下座し、誓う姿勢は、おそらく真摯にみえる。実際、表層的には、本人も真摯な思いに満ちているだろう。しかし、その反省の姿勢も、依存症の一部である。モラ夫は、妻を取り戻すために「反省」を演じているに過ぎない。妻がモラ夫の元に戻れば、遅かれ早かれ、モラが復活する。

 したがって、相談者に対しては、「モラ夫は、反省しても、土下座しても、治らない。信用し期待して戻ると、遅かれ早かれモラが再発する」と回答することになる。

 居酒屋等で、若い男が、恋人らしき若い女に対し、俺様論を展開し、説教する場面に遭遇することがある。結婚前からモラ依存症なのである。結婚したら、確実にモラスイッチが入り、妻は、彼のモラを一身に受けることになる。敢えて言えば、結婚前のデートでモラが出たことは、幸運である。モラ男とわかり、結婚せずに逃げるチャンスを得たからである。

 モラは治らない。モラ夫/男からは、逃げるしかない。

<文/大貫憲介 漫画/榎本まみ>

【大貫憲介】

弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし~モハメッド君を助けよう~』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング